星野道夫
小学館文庫
(文庫本)
たった一枚の写真がきっかけとなり、アラスカに住むことになった。そこに生きる人たちと大自然を著した写文集。感動的な写真がいっぱい載っています。インディアンの祖先が北方アジア人~うなずけました。
これを読むと単純な私は「若者よ、パソコンを捨て旅に出よ」と言いたくなります。
印象的な文を羅列していきます。
・人生はからくりに満ちている。日々のくらしの中で、無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根源的な悲しみは、言いかえれば、人と人が出会う限りない不思議さに通じている。
・私たちは一人一人がその人生において果たす大切な役割があり、この世界をほんの少しずつ良い方向へ変えることができるかもしれぬという祈り。
・人生とは、何かを計画している時に起きてしまう別の出来事のこと。
・ぼくは、ふと、゛思い出°ということを考えていた。人の一生には、思い出をつくらなければならない時があるような気がした。
・人はいつも、それぞれの光を探し求める長い旅の途上なのだ。
・ただ゛昔はよかった°という過去に立ち戻ることは出来ない。ノスタルジアからは何も新しいものは生まれてこない。自然も人の暮らしも、決して同じ場所にとどまることなく、すべてのものが未来へ向かって動いている。
・°木も、岩も、風さえも、魂を持って、じっと人間を見据えている°
・°寒さが人の気持ちを暖かくする。遠く離れていることが、人と人の心を近づけるんだ°
・夜のない暮らしは素晴らしかったけれど、夏の終わりには、人々はもう長い一日に疲れている。夜の暗さが無性に恋しいのだ。季節が秋から冬に移ってゆくにつれ、自然は人々の暮らしにブレーキをかけてゆく。まるで私たちの気持ちをわかってくれたように。
・この土地の自然は、歳月の中で、いつしか人間を選んでゆく。問われているのは、屈強な精神でも、肉体でも、そして高い理想でもなく、ある種の素朴さのような気がする。
・(父親になって)たとえば、木々や草花そして風やオーロラのなかにさえ、自分の子どもの生命を感じているということだろうか。同じ場所に立っていても、さまざまな人間が、それぞれの人生を通して別の風景を見ているのかもしれない。
筆者は96年、カムチャツカ半島で取材中、ヒグマに襲われて死去。