
さて、札幌へ行ったついでに寄った道立近代美術館。
東山魁夷展(9月9日まで)
まだ10時なのに土曜のせいか既に結構な人数。
カレンダーなどでお馴染みの、本物が何枚も目前に。
展示数の多さは製作年数の長さをも物語る。
嬉しかったのは付けられている解説がご本人の文(出版されているいくつかの本からの抜粋)だったこと。
がっかりしたのは絵画を守るために施されているアクリルカバーに、観ている人達の顔・身体が写り込んで興ざめしたこと。屈んで角度を変えて観たり、ギリギリ近づいて観たり…

一通り回った後で、好きな絵や印象的だったものをもう一度観たくて戻ると、人混みで凄いことになっていたので諦め、ポケットサイズの本を買って、ウチでゆっくり振り返ることに(冒頭画像)。
前書きの一部です。
私が常に作品のモティーフにしているのは、清澄な自然と素朴な人間性に触れての感動が主である。戦後の時代の激しいそして急速な進みの中で、私自身、時代遅れのした道を歩んでいると思う時が多かった。しかし、今では、それで良かったと思っているし、また、それをこれからも貫き通したいと念じている。
なぜなら、現代は文明の急速な進展が自然と人間、人間と人間との間のバランスを崩し、地上の全存在の生存の意義と尊さを見失う危険性が、ますます高まってきたことを感じるからである。平衡感覚を取り戻すことが必要であるのは言うまでもない。
清澄な自然と、素朴な人間性を大切にすることは、人間のデモーニッシュな暴走を制御する力の一つではないだろうか。人はもっと謙虚に自然を、風景を見つめるべきである。それには旅に出て大自然に接することも必要であり、異なった風土での人々の生活を興味深く眺めるのもよいが、私達の住んでいる近くに、たとえば、庭の一本の木、一枚の葉でも心を篭めてよく眺めれば、根源的な生の意義を、そこに感じ取る場合があると思われる。
初版は1991年。
1999年逝去、90歳。
静かな感動、いつかまた出会いたい。
蛇足。時間が無くて2Fのレストランにて昼食を済ます。
