1958年
入団は米田と同じ三十一年、だから三年生だ。米田の騒がれたのに反し、秋本はノンプロからいい投手が入った程度であまり注目されなかった。力のある使える投手とチーム内では認められていたけれども、一年目は上からの投球フォームに変えてみたりして思わしくなく、南海、大映に二度ずつ計五回投げて自責点四、防御率7.20の不成績に終り、二年目からいまのフォームに戻して二十二試合出場、五十七回投げて自責点二十五、防御率が3.95と本来の良さを見せだした。今シーズンは二十八日までに近鉄にシャット・アウト、何回に二度完投の勝利を含んで十四試合に出場、投球回数七十一回三分二、自責点八、防御率1.00の五勝一敗としだいに腕をふるい出した。特徴は横手からのシュートとカーブにある。西田と同様技巧派だが、スピードがあり、しかも踏み出しがクロスしているので右打者にとってはぶつけられそうな危なさを感じるいやな型の投手だ。加えてプレート度胸があるので調子を崩さない限りぐんぐん星をかせぎ、西田とともに阿部、柴田に代わる存在になる日も近いだろう。伊勢川捕手は「素質のある好投手で出てくるのが遅いぐらいだ」とも話しているが、五月十三日の対西鉄戦でバントした時右の母指に当ててしまって二針縫い、約一ヶ月休場する痛い目にあっている。常時出場できるように調子を整えるのが秋本の課題であり、これが自分を生かす道であるわけだ。野球選手で顔の色が黒くなるのはあたりまえなのに、日焼けどめのクリームを塗って練習するなど、ちょっと考えられない突飛なところもあるらしく、何事にも気取ってやる性格の持ち主でもあるようだ。こんな性格が過ぎると悪い結果を招くばかりとなって、持てる力を十分発揮するのに相当の日時がかかるのではないかと見る人もある。気はなかなか強いらしい。 秋本投手の話 母指を痛めてから球の切れが悪くなったようだ。一日も早く切れがよくなるようにと考えている。去年西鉄にめった打ちにされたことはあるが、まだどのチームも怖いと感じたことはない。この打者はいま当たっているが自分とはあまり対していないのだから・・・と思ってどんどん投げる。そのうちに打たれるだろうが、打たれているうちに良くなるだろうと思う。 伊達コーチの話 西田と同じ型だが、スピードを持っている。コントロールさえつけばそう打たれる投手ではない。際どいコースを十分衝けるようになれば一本立ちできるが、もう少しというところだ。ランニングをうんとやっているから下半身が固まってさらに安定感を増すだろう。