六畳間のピアノマン

2021年02月22日 | 暮らし

ビリー・ジョエル ピアノマン和訳付き


土曜ドラマ「六畳間のピアノマン」(NHK総合 土曜午後9時~)を観ています。
8年前、夏野誠(古舘佑太郎)は上司の上河内秀人(原田泰造)にパワハラを受けていた。
夏野は楽しく歌う動画「六畳間のピアノマン」を残し事故で亡くなってしまう。
私はこのドラマを観ていて27歳のときの私を思い出した。
夏野誠は求人広告を扱う広告代理店で仕事をしていた。
上司の上河内からノルマを達成しろと毎日怒鳴られていた。

私は27歳の9月、小さな広告代理店に就職した。
その会社は求人広告をとることが仕事の会社だった。
読売新聞西部本社版(九州地方の新聞)に毎週日曜日の紙面に全2段を買い取っていて、
そこに首都圏にある会社の求人広告を載せるという企画を持っていた。
入社した私は、新聞に載っている求人広告の会社に電話して、その企画を勧めるのが仕事だった。
「御社は最近、求人広告を出しましたが反響はいかがでしたでしょうか?」
といって、会社の企画を勧めるのだが、その前にほとんど断られた。
採用担当者が電話に出て、話を聞いてくれそうなときにはこういう。
「うちは九州地方から優秀な人材を募集しています。お宅には寮はありますか?」
しかし、たいがい寮などもってない会社が多かった。
その広告代理店の企画は、九州で東京に行って働きたいという若者は多いはずで、
その人たちを東京で働かせよう、というものだった。
私は入社面接のときにその説明をされて、いい企画だと思った。
私は茨城に生まれた人間で、東京の求人広告は新聞に載っていた。
九州に住む人は、東京に来るとなるとなかなかむずかしいだろうと思った。
東京に行きたいと思う九州に住む若者は、多いのではないかと私は考えた。
その広告代理店に採用されて家に帰って女房に話すと、
「その仕事はむずかしいと思うな。あんたには無理だよ」といわれた。
私と同期にもう1人入社した男がいた。
その男と私は毎日、新聞の求人広告に載ってる会社に、1日中電話営業をした。
「私、**社と申しますが、採用担当者様はいらっしゃいますでしょうか?」
だいたい最初に出た女性が話を聞かないうちに電話をガチャンと切った。
そういう電話が来たときは電話を切るようにいわれているのだろう。
1時間電話しても採用担当者につないでもらうことはほとんどなかった。
そのうち私は電話をすることが厭になった。
しかし、同期の男は休みなく電話し続けた。
そしてそれなりの営業成績を上げた。
私は、まったく仕事がとれず落ち込むばかりだった。
私たちの部屋の隣に社長がいた。
私が電話をしないでいると社長は電話機を見ていれば分かる。
隣から飛んできて「**(私の名前)電話しろ!!」と叫んだ。
そして終礼のときに、私のことを毎日罵倒し怒鳴った。
そんな毎日に私は、かなりまいりました。
10月に女房が妊娠したことが分かった。
年が明けたころ双子だと医師にいわれた。
私は、求人広告がとれず毎日社長に怒鳴られていた。
女房のお腹は日に日に大きくなっていった。
私は何度か山手線に飛び込んでしまおうか、と思ったことがあった。
その頃は、西武池袋線の東長崎駅から山手線の御徒町駅まで通勤していた。
その頃私は、なんか生きていることが、どうでもよくなっていた。
あのときが、私の人生で最低のときだった。
でも心のすみっこで、双子の赤ちゃんには会いたいと思っていた。

コメント
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