そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

硫黄島2部作

2006-12-10 22:16:44 | Diary
クリント・イーストウッドの映画は大好きだ。
イーストウッドが、太平洋戦争の激戦地・硫黄島を舞台にして撮った2部作。
ぜひ観たいとは思いつつも、なにぶん映画館に出かける時間もない身、ほとんど諦めていたのだが、たまたまヨメが子供を連れて実家に行っている今週末が2作目「硫黄島からの手紙」の封切りと重なり、金曜の晩に「父親たちの星条旗」を、そして今日「硫黄島からの手紙」を観に行くことができた。

劇場で観て、本当に良かったと思う。
一番の見どころである硫黄島での戦場シーンの臨場感は物凄い。
わけもわからない間に見えないところから弾がとんできて、そこかしこで生きていた仲間が死体へと変わっていく。
恐怖を感じる余裕すらない阿鼻叫喚の世界が再現されている。
こうして多くの生命が散っていったのだ・・・。

上陸する米兵、迎え撃つ日本兵。
運命により殺戮し合う立場になった両者の視点を、2本の映画に振り分ける。
イーストウッドは、2作を「コインの裏表のようなもの」と表現したそうだが、まさにその通りだ。

一方で、自分の大きな期待に存分に応えてくれたかといえば、不十分な点もある。
「父親たちの星条旗」については、戦争で深い傷を負う若者、国家に費消される若者、というモチーフは、(重要ではあるが)これまでにも散々いろいろなところで描かれてきたテーマであり、イーストウッドならではの「踏み込み」に欠ける感は否めない。
「硫黄島からの手紙」については、よくここまで客観的に日本軍の在り様を描くことができたものだという点には賛辞を贈りたくなるものの、アメリカが「5日で終わる」と見ていた戦闘を36日間戦い切った、その「理由」がうまく表現されていないような気もする。

が、それでもやはり観るべき映画だと思う。
我々の、ちょっとだけ上の世代の祖先たちが、どのような体験をしたのか。
それが冷静な視線で描かれているこれら2本の映画により、「疑似体験」することから得られるものは少なくない。
コメント
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