そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「俘虜記」 大岡昇平

2006-12-25 23:34:50 | Books
俘虜記

新潮社

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これまでにも、戦争に関する小説や、映画や、ドラマはたくさん読んだり観たりしてきた。
どれもそれぞれに心に迫るものはあったが、やはりどこか遠い昔のこと、自分自身を投影できない他人事のように感じられたのは否定できない。
が、この「俘虜記」は違った。
こんなにも「自分のこと」として捉えられる戦争小説は初めてだった。

中年に近い年齢にして、熱帯の激戦地に送られる運命となった主人公は、敵の攻撃と疫病に苦しめられ、やがて戦友とはぐれ、力尽きたところで敵の捕虜となる。
そのときに彼が何を感じたか、考えたか。
兵隊となり、やがて「捕虜」という「兵隊ではないもの」となった知識人たる彼の主観、そして彼を通して描かれる日本兵たちの姿は、現代を生きる我々のそれとなんら変わるところがない。

事後から彼らを眺めている我々は、米軍の捕虜となることを恥辱とし恐怖する彼らの愚を知っている。
しかし、彼らは知らなかっただけなのだ。
得体の知れない米軍兵士に捕まったら、死ぬよりも酷い目に遭わされるのではないか。
生きて日本に還ったとしたら、どんな辱めを受けることになるのか。
誰ひとりそんな経験を持ち合わせていない。
彼らは想像し、恐怖に慄くしかなかった。
我々とまったく同じである。

そして、一旦捕虜として収容されるや、十分な食事と安全を与えられ、堕落していく彼ら。
作者は、彼らの姿を通じて占領下の社会を風刺する意図であったそうだが、占領下どころではない。
彼らこそ、現在に至るまで続く戦後日本の姿を象徴しているのではないか。
そう感じた。
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2006 2つのグランプリ(2)

2006-12-25 00:10:06 | Entertainment
ここ数年、有馬記念と同日セットになっているのがこれ。

チュートリアルが優勝 漫才のM-1グランプリ(共同通信) - goo ニュース

チュートリアルは完璧に面白かった。
去年も最終3組には残れなかったものの、かなり印象的だったし。
1本目の冷蔵庫のネタは、去年のバーベキュー(?)のネタと同じパターンだったけどスケールアップは感じられた。
優勝を決めた自転車の「チリンチリン」のネタは、よくまあこんなしょーもない話題をここまで面白く膨らませるなあというくらいよく練られてたし、掛け合いのテンポや徳井(ボケ)の演技力(?)も抜群だった。

麒麟や笑い飯は去年のほうが良かったなあ。
チュートリアルを除けば、全体に去年よりややレベルダウンかもしれない。
コメント (2)
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2006 2つのグランプリ(1)

2006-12-25 00:06:28 | Sports
ディープ有終V、3馬身差で快勝…有馬記念(読売新聞) - goo ニュース

「スーパー競馬」で、岡部幸雄や福原アナも言ってたけど、最後にして本当に会心のレースができた感じ。
3コーナーで一つ気合いを入れただけでギアがチェンジし、あとは惰性で走っているだけで他馬をぐんぐん引き離すレースぶりは、ディープインパクト以外に見たことがない。
久々に(ダービー以来?)馬券買ったら当たったし(馬単)、気持ちよく見させてもらいました。

前にも書いたけど、これだけ走る馬で、故障らしい故障もなく現役を終えるのは珍しい。
430kgの軽量ゆえに脚部に過大な負担がかからなかった、という面もあるんだろうか。
そうは言っても何が起こるかわからないのが競走馬の宿命。
早すぎる引退を惜しむ声もあるけど、もはや国内に勝つべきタイトルも無いし、ここで終止符を打つのが賢明な選択なんだろう。
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