国有の自動車会社、などと聞くと、冷戦時代の東側諸国のような趣きですが、これが米国の話だってんだから、いやはや状況は一変しました。
溜池通信、6月1日付「かんべえの不規則発言」での、オバマ政権のGM問題処理に対する分析が面白かったので、以下引用させてもらいます。
○結局、最終日になってGMは連邦破産法適用を申請しました。最大手の自動車会社が経営破たんするというのに、意外感はほとんどなしに等しい。株価も上昇している。ということは、この間の政権側のコントロールがいかに巧みだったかということで、お見事なソフトランディングといえましょう。最初に非上場で簡単なクライスラーで小手調べをして、フィアット社に売り飛ばす。GMは債権者や労組などと複雑な交渉を行い、最後は国有化で落とす。チャプターイレブンは会社を身軽にし、経営再建を助けてくれる武器というもの。どうも最初からそんな風に思い描いていたように思われます。
<中略>
○とりあえず分かったことは、オバマ政権は危機管理が上手い。途中で馬脚を現すようなことがない。その一方で、「何がしたいのか」が見えにくい。今回のケースでいえば、「アメリカに自動車産業を残したい」「雇用の喪失を避けたい」という思いが強かったのだろう。そのために敢えて国有化に踏み切った。ところが「自動車会社を経営したくはない」とも言っている。察するに、社会主義的なやり方ではダメだと知っているのだろう。かといって、レッセフェールと見放すつもりもない。イデオロギー色が薄く、現実主義的なのがオバマ大統領の特色だが、着地点をどのように考えているのかは見えにくい。
○難題にぶち当たったときのオバマ大統領は、今後もこんな風に乗り越えようとするのだろう。①周知を結集して、慎重に物事を運ぶ。②思い込みを持たず、柔軟に対応する。③ことの是非はさておいて、ダメージの最小化を目指す。――こういうやり方に対して、「大統領の主張が見えない」「そもそも彼は何がしたいのか」的な批判は付きまとうでしょう。
なるほど確かに、現実主義的器用さは、地味さや分かりづらさと裏腹。
どこかで一回躓いてしまったとき、一気にピンチに陥ってしまうのかもしれませんな。