そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「市場の変相」 モハメド・エラリアン

2009-06-13 23:39:28 | Books
市場の変相
モハメド・エラリアン
プレジデント社

このアイテムの詳細を見る


正直、今の時点で読むと然程新鮮なことが書かれているわけではないのですが、確かにこれがサブプライム問題序盤の2007年末に書かれたことを考えると、その慧眼には感心させられるし、冷静で客観的な語り口で大局的に展開されるパラダイムシフトへの考察は説得力に満ちており、各方面で高く評価されたことにも納得させられます。

著者は、今の経済社会に起こっている事象を、「昨日の市場」と「明日の市場」との衝突として捉えています。
米国を中心とした先進国のみが実質的なプレーヤーであった世界は、新興国の存在感が重みを増すことで急速に様変わりする一方で、金融商品の高度化により投資の常識が覆される。
「昨日の市場」で通用していたセオリーは、「明日の市場」では機能しない。
仮に「明日の市場」の姿を見通すことができたとしても、そこに至る通り道では経験則に頼り過ぎ「ブラックスワン」の罠に陥るリスクが頻発する。

著者の現職は債券運用会社ピムコのCEOですが、IMFでアナリストの経験もあるということで、本の中では投資家・政策担当者・国際機関といった各プレーヤー向けの指針も示されます。
自分はこのへんには直接携わるものではないので、そんなもんかと思いつつ読むだけでしたが、例えば、「ノイズの中からシグナルを見つける」ことの重要性(「緊急ではないが重要なこと」「緊急ではないが重要なこと」を見極める)や、テールリスクを如何に切り捨てる判断をできるか、など一般的に参考にできるような話も多々盛り込まれています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする