代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

鬼怒川河川整備計画は放置されたまま霞ヶ浦導水建設を急ぐ国交省

2015年11月02日 | 治水と緑のダム
鬼怒川水害の真相究明も十分になされず、鬼怒川・小貝川の河川整備計画もいまだ策定されない中にあって、国交省にとっては鬼怒川よりも、霞ヶ浦導水事業を継続することの方が重要課題らしい。 国土交通省の関東地方整備局は「利根川・江戸川河川整備計画」の変更をするというので、鬼怒川水害への対策を盛り込むのかと思いきや、新しく計画に盛り込まれたのは総額1900億円の霞ヶ浦導水事業の継続に関する記載についてだった。鬼怒川対策を後回しにして、霞ヶ浦導水の継続に執着するのも、来年度予算に霞ヶ浦導水を盛り込みたいがためであろう。 . . . 本文を読む

鬼怒川でのソーラーパネル建設による溢水問題のその後

2015年11月01日 | 治水と緑のダム
地元の方々に砂丘の自然堤防がなぜ削られたのか、なぜ削られたまま放置されたのかなど質問させていただいた。   「これは人災でね」  「この砂丘は民有地だったから、削られても文句が言えなかった」  「砂丘が削られたせいで、本当に残念だ・・・」  「何回も要望し、堤防をつくることになっていたんだが、結局間に合わなくて・・・・」  といったご意見であった。実際、ここが危ないということは地元の方々がいちばんよく理解し、国交省に重ねて要望していたのだ。その要望に真剣に応えようとしなかったのは国交省である。  今回の水害から得られる教訓は、地元の川の危険性についていちばん詳しいのは地元の方々であること、地元の声をないがしろにしたまま、治水を国交省任せ、ダム任せにすることがいかに危険であるかということだろう。 . . . 本文を読む

ダム決壊が被害拡大の原因 ―18ダム決壊のサウスカロライナ水害

2015年10月15日 | 治水と緑のダム
 「1000年に1度」といわれる記録的豪雨で10月8日までに19人の死者を出した米国のサウスカロライナ水害。10月8日までに18のダムが決壊ないし機能不全に陥ったという。ダムの決壊が、水害を拡大させた原因である。  地球温暖化時代の水害は「想定外」は禁句である。「ダム決壊」という「想定外」を想定しなければならない。ダムこそが災害を増幅させる原因になるという認識で行動せねばならない。治水をダムに任 . . . 本文を読む

ダムを優先し堤防強化を後回ししたツケ ―東京新聞の記事紹介

2015年10月02日 | 治水と緑のダム
 本日(2015年10月2日)の東京新聞の特報面で、「河川行政の偏り 鬼怒川決壊招く? ダム優先 堤防強化後回し」という特集記事が組まれています。  国交省がダムやスーパー堤防にばかり偏った予算配分をしていたため、喫緊の課題であるはずの堤防強化がおろそかにされていたとする記事です。「スーパー堤防予算を削ったことが鬼怒川決壊の原因」などという荒唐無稽なウソがまかり通るネット世論の誤りを正す記事です。 . . . 本文を読む

元建設省官僚の提言紹介「ダムよりも堤防強化」

2015年09月23日 | 治水と緑のダム
 昨日(2015年9月22日)の東京新聞の読者投稿欄に、元建設省の技術官僚だった方が「治水 ダムより堤防強化」として以下のような投稿をされていました。  専門家の方が、従来のダム治水の限界を指摘し、ダムよりも堤防強化が最重要と訴えておられます。すばらしい投稿でしたので、引用させていただきます。 ***『東京新聞』(2015年9月22日)読者投稿欄より引用****  「治水 ダムより堤防強化」  . . . 本文を読む

堤防強化を怠ってきたのは民主党ではなく河川官僚

2015年09月13日 | 治水と緑のダム
鬼怒川水害の際、テレビに連続出演して、頼りないコメントをしていらっしゃった布村明彦氏(日本災害情報学会会長)。彼はかって国交省河川局の河川計画課長でした。国交省を退職されてからも天下りと渡りを繰り返し、現在は学会の会長に天下っておられるようです。 その布村氏につぶされてしまった改革派の河川官僚だった宮本博司さんはこの動画の中で以下の点を強調されています。「堤防の決壊対策は、住民の命を守るために最優先であるべきなのに、実施しない。なぜか…ダム建設の理由がなくなるから」。ダムに執着し、本来やるべき堤防の決壊対策を怠ってきたのは、宮本さんを干して辞職に追い込んだ布村氏ら保守派河川官僚たちです。蓮舫議員ではありません。 . . . 本文を読む

スーパー堤防事業への固執は災害リスクをさらに高める

2015年09月13日 | 治水と緑のダム
今回の台風災害における鬼怒川などでの堤防決壊を受けてスーパー堤防を仕分けた民主党政権のせい(とくに蓮舫仕分け人の責任)というごうごうたるネット世論が巻き起こっています。 私は声を大にして主張します。このままスーパー堤防事業を推進することは、日本列島における災害リスクをさらに高めるだけです。その根拠を簡潔に書きます。(1)点としてのスーパー堤防整備は線としての堤防全体の強化を遅らせる。(2)他の堤防強化策ならば100倍の長さの区間の堤防を整備可能。(3)盛り土の上に住むのは危険。効率的に水害対策をする賢明な予算の使い方はスーパー堤防ではなく、耐越水堤防の整備です。 . . . 本文を読む

治水のためにはダムよりも堤防強化

2015年09月10日 | 治水と緑のダム
  本日(2015年9月10日)の常総市内での鬼怒川の堤防決壊、痛ましいことでした。被災者の皆さまにお見舞い申し上げます。また、自衛隊の皆さまのご活躍に敬意を表します。  前の記事のコメント欄で以下のような質問をいただきました。「ダム建設には治水、砂防といった防災目的があると思いますが、経済だけではなく防災安全という面での合理性について関先生は分析されていますでしょうか」。    本日の鬼怒川 . . . 本文を読む

貯水の実り田んぼダム(東京新聞の記事紹介)

2014年08月04日 | 治水と緑のダム
 本日(2014年8月4日)の「東京新聞」の特報面で、篠ケ瀬記者が、流域治水の一つ「田んぼダム」の取り組みを紹介しています。記事では、田んぼダムの推進に国交省は及び腰で、本気で取り組もうとしていない点も指摘されています。国交省はダムを造りたいがため、田んぼダムの機能を真剣に評価しようとしないのだ、という趣旨の私のコメントも紹介されています。ご参照ください . . . 本文を読む

【新刊書紹介】岡本芳美著『河川管理のための流出計算法』(築地書館)

2014年05月18日 | 治水と緑のダム
 岡本芳美先生の『河川管理のための流出計算法』(築地書館、2014年)。まず表紙の写真が本当にすばらしく(画像参照)、この美しい日本の河川を守らねばならないという著者の決意がひしひしと伝わってきて、身が引き締まる思いがした。  国交省がダム建設を含む河川計画を策定する際の基本モデルとしている貯留関数法に代わって、著者が40年かけて開発してきた誤差の少ない流出解析が可能なマルチ・タンク・モデル法を解説書したものが本書である。どれだけ精密かと言えば、国交省が八ッ場ダム建設の根拠とする貯留関数法モデルは利根川上流域を39分割しているのに対し、岡本先生のマルチ・タンク・モデルは利根川上流域をじつに8400分割して計算している。これまで国交省は、貯留関数法の欠陥が明らかになると自分たちが困るため、研究に予算を付けず、オルタナティブな計算手法の開発そのものを迫害し、焚書坑儒を行ってきたと。日本では、その欠陥ゆえにダム建設のための数値をねつ造するのに最適な手法であるためか、官・業・学癒着体制のもとで、その欠陥を徹底的に隠蔽し、それこそシャーマンが御宣託でも出すような大真面目な顔をして、その計算結果のみを国民に押し付けてきた。 . . . 本文を読む

八ッ場ダム建設予定地の遺跡保存を求める緊急アピール

2013年03月01日 | 治水と緑のダム
 昨日(2013年2月28日)、「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が八ッ場ダム建設予定地の遺跡保存を求める緊急アピールを文化庁長官あてに出しました。  アピール文は八ッ場あしたの会の下記サイトに掲載されています。 http://yamba-net.org/modules/news/index.php?page=article&storyid=1864  さらに、作家の森まゆみさん、詩人のアー . . . 本文を読む

国土交通省「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」への公開質問状

2012年03月01日 | 治水と緑のダム
 有識者会議は大臣に対してのみ報告の義務を負うのであって、地元住民や外部の専門家に対しては説明責任を負っていないし、その意見を聞く必要もない、ということです。  はじめから官僚にコントロールされていて結論が見え見えの会議などです。こんな無責任な、官僚に迎合した結論ありきのゴム印を付くだけの「有識者」とやらに私たちの血税が使われているかと思うと慄然とします。いったい民主主義国において、税金で運営されている組織が、納税者に対して、いわんや事業によって水没する地域の犠牲者に対して、説明責任を負わないなどということがあり得るでしょうか? どこぞの全体主義国家の理屈そのものです。  彼らが雲の上にいて下界に降りてこないのは、私たちと討論すればボロが出るからに他ありません。住民たちの傍聴を拒否するのも、住民たちに面と向かって会わせる顔がないからでしょう。本当に彼らが「科学的な検証」とやらをしていれば、堂々と会議を公開して、何ら恥じることはないはずです。傍聴を認めないのは、恥ずべきしていることをしているからに他ありません。 . . . 本文を読む

科学的とはどういうことか(国交省の治水計画を事例に考える)

2012年02月22日 | 治水と緑のダム
 前回の記事で紹介した利根川の基本高水が国交省の計算値よりも20%低いという東京高裁に提出した意見書に関して、ブログ「どうする、利根川? どうなる、利根川? どうする、私たち!? 」がすばらしい解説記事を書いて下さいました。ブログの著者のKAJIWARA氏は今回提出した意見書の作成にも携わって下さった方々の中の一人で、同氏は利根川水系を中心としたダム開発の国側の論理構造の問題点を指摘した研究で博士 . . . 本文を読む

利根川の基本高水は国交省の計算値よりも実際には20%低い

2012年01月28日 | 治水と緑のダム
 本年はじめての投稿になります。  多忙でブログを放置してしまい、まことに申し訳ございませんでした。  この間、八ッ場ダム住民訴訟に関連して、東京高裁に提出する意見書を執筆しておりました。先日、東京高裁に提出されましたので紹介させていただきます。  朝日新聞の群馬版が、この意見書を大きな記事にしてくださいました。群馬版の記事で、他県の方々は読むことができないため引用させていただきます。 ** . . . 本文を読む

国交省タスクフォースの情報操作と震災評価の隠蔽事例(その1)

2011年12月26日 | 治水と緑のダム
 浅間山の火山岩層など八ッ場ダム周辺の地質に詳しい地質学者の竹本弘幸氏が拙ブログに書き込んで下さったコメントを紹介します。多くの方々に読んでいただきたいので新エントリーとしてアップいたします。  1931年のM6.9の地震の際に八ッ場ダム建設予定地周辺で多くの山崩れが起きているという被害の事実が、国交省タスクフォースの検討では一切触れられていないそうです。ダム建設に都合の悪い情報は黙殺するという . . . 本文を読む