今月4日から放送が始まったNHK大河ドラマ『天地人』の“泣き虫与六”役・加藤清史郎くんの名演技ぶりが早くも話題ですね。翌週からのフジテレビ系新月9『ヴォイス』にも顔を見せたそうで、ウチの高齢組と高齢お友達集団はさすがにそちらは未チェックなようですが、「(与六=兼続が)2話でもう大人になってしまって残念」「回想でもいいから、この先も出てほしい」と惜しむ声多数。
朝ドラなど長尺多話数、長年月にわたるドラマではよくありますね。序盤の主人公子供時代役を演じる子役さんが視聴者のハートをがっちり掴みドラマ全体が大成功というケースもある反面、「大人役にバトンタッチしてガッカリ」のリスクも大。大人兼続・妻夫木聡さんもハードルが上がりましたな。
大河は当面公式サイト等でフォローするとして、月河の現在、子役さんと言えば断然『非婚同盟』の震度5ボーイ・震五郎役、林遼威(ろい)くんです。文句なくかわいい、可愛いんだけど、何かの拍子に、昔の兄弟漫才コンビ若井はんじ・けんじの兄貴のほうを思い出させる表情になる。
で、なんとなくマシンガンズの向かって右の長身なほう(「売れてないときの同窓会って地獄だな!」「携帯電話の説明書ってアレ、バッカだな!」って最初に怒るほう)も思い出す。
でもって、さらに延長線を引くと、芦屋小雁師匠の若い頃もほのかに思い出す。
……なんだ、全然可愛くない、おっさん臭い子なんじゃないの、と誤解召さるな。本当に可愛いんだから。それも直球で小動物みたいにベタベタに可愛いんじゃなく、大人目線で子供として見て“おもしろ可愛い”“見てて飽きない”“何か(善意の)チョッカイ出してリアクションさせてみたくなる”感じ。「ハラへったぁーー!」って椅子の背に両腕伸ばしてのけぞって脚バタバタする子供って、昭和時代もいそうでなかなかいなかった(でもいることはいた)。
16日放送の10話で、母屋の異母兄俊彦くん(こちらは元フォーリーブスおりも政夫さんにも、三ツ木清隆さんの若い頃にもちょい似、やはり昭和風味の本間春男さん)に「プラモ好きならやってみないか」と誘われて「イヤぁ、できないよ、まだボクには」と胸の辺りの高さで手を振りながら及び腰になる表情と仕草は、監督さんに演技つけられてのものとはとても思えない。
劇中の震五郎くんほど極端な境遇でなくても、お祖母ちゃん子やお母さん子、うんと年長のお姉さんばかりの末っ子の男の子なんかでも、日頃年上女性の喋り方に耳目がなじんでいるせいか、ときどき、女の子のおませさんとは違う、オバちゃんみたいな所作をすることがあって、見ていると思わず噴き出します。
「お兄ちゃんおネエちゃんと一緒に、コーシテ食べタリするの、シアワセだよねー!」なんて、いかにもドラマなくっさい台詞も、遼威くんの震五郎が言うと、なんか説得力があるんだな。同じ年代のやんちゃガキ同士で遊ぶより、個性の強い大人たちがかしましくやり合う中でひとりで遊ぶほうが多い子って、ほとんどの部分は年相応に幼いのに、ある瞬間ある場面で突然大人っぽい、ドコでそんなの覚えてきたんだぁ?と思う言葉遣いをしたりする。設定昭和50年もじゅうぶんTV時代ではありましたが、TVで聞き知るのと、身近の生身の大人の挙措を見て覚えたそれとでは、体温とか質感が根本的に異なるんですな。
遼威くんの震五郎には、そういう“微笑ましいイビツさ”が随所に垣間見える。まるっとバランスとれて無垢にあどけないより、何倍も可愛いし、なんたっておもしろい。
リアルに圭子さん(三原じゅん子さん)のような激烈母さんや福江さん(福井裕子さん)のような鉄火場バアちゃんに育てられてああなったとも思えないので、遼威くんのパーソナリティ、小さくても演技者としての持ち味でしょうね。
『非婚』第1部が終了すると、長尺もののつねで人物が全員10何歳年をとり、遼威くんの登場場面はなくなりますが、もう10年ぐらい後にはものすごい美少年になって全然別キャラで活躍しておられるかもしれない(できれば戦隊か仮面ラ……いや自重)。それはそれで楽しみなような、微量残念なような。