イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

モータリゼーション恐るべし

2013-04-10 01:11:53 | 朝ドラマ

「イエローフローライトの時代は来る!必ずクル!!」

……大吉さん(杉本哲太さん)のマネしてプッシュしてみました。

寡黙な結晶ハンター・勉(ベン)さん(塩見三省さん)の推す北三陸名産=琥珀のように摩擦帯電性があるでなし、燃やすと樹脂由来の香ばしい香りが立ちのぼるでもなく、ひたすら硬度が低く衝撃に弱く砕けやすいだけの我が黄色蛍石。ハチミツ入りレモンジュース色で外観は琥珀と従姉妹のようでもありますが、こちらは日本国内には産出がないようで、月河が昔展示会で見て忘れられない多面体の結晶は“英国産”でした。なんとアバウトな。マーガレット・サッチャーさんが亡くなりましたが関係ないな。とちおとめくらいのサイズの、色むらのない、吸い込まれそうな結晶でした。

ものの本によれば北アフリカ、かのモロッコのエル・なんたら山脈で特に見事な、ととのった形状の結晶が大量に産出されるそうですが一度は拝みたいものですイエローフローライト。体循環を上げて気分も上がるパワー。八千五百万年プラス23年は待てないけど。

それやこれやで快調ですよ『あまちゃん』2週突入。平日朝7時~8時台という、日中最忙の時間帯ですが、日曜の同じ時間帯の『獣電戦隊キョウリュウジャー』と同じトーンの“音”が聞こえて来る。快調音。迷いがないのが両作に共通するツボですね。“やりたいことがわかっている”ドラマからしか発せられない音です。台所作業中片手間で聞いていても、早く録画リプレイ、細部チェックしたくてしたくてたまらない気持ちにさせる。

何より登場人物が全員、前へ前への牽引力を持っているのがいいですね。「出ただけ」「設定嵌め込まれただけ」で棒立ち休んでいるキャラがひとりもいない。1週は杉本さんの熱血バカ駅長が先頭で引っ張りましたが、副駅長吉田くん(荒川良々さん)にしても観光協会長菅原(吹越満さん)にしても、ベテラン海女軍団(渡辺えりさん木野花さん片桐はいりさん美保純さん、順不同)にしても、出てくれば出てきただけ、映ってれば映ってる間、何かしら喋れば喋ったぶんだけ、確実にお話や解釈を前へ進める。

今日(9日)放送の第8話での漁協組合長長内(おさない)(でんでんさん)の“憎たら可笑しい”しゃあしゃあ飄々光線も、アキちゃんパパで春子旦那の黒川(尾身としのりさん)とのハーモニーで相当なもんでした。アップになったら運転席にいるんだものなあ(運転手の黒川が助手席に)。

突然家出?した女房を商売用の個タク転がして岩手県最北部まで追いかけてくる運ちゃんもいないもんだけど、「この辺の道わからないからお客さん、連れてって」とプロの運転手に頼まれて、あいよってんで速攻運転交代しちゃう客もそうはいないと思う。この、あらゆる人物に“いねぇよこんなヤツ!”と毎度いちいち思わせては“でも、いるかもな”とちょっと戻す繰り返しが、気がつけば強固なフィクション世界を構築している。

「新人海女は乳さ出しで潜らねばなんねぇ、水の抵抗が少ねぇから」「服着るまでは23年かかるな」と入門中のアキちゃん(能年玲奈さん)をベタにドン引きさせるベタなかつぎにも、「女性にセクハラ許せない」てな無粋正論ふりかざす輩が誰もいない、実に鷹揚で風通しのいい世界。

そしてもうひとつこのドラマの気持ちいいのは“毒気”がたっぷりあることです。“田舎=寂れていくもの”“若者=都会に憧れ田舎を嫌うもの”という、高度成長時代以降の日本に作りつけのように存在する逃げ場のない現実を、いたずらに嘆かず目を背けもせず、ドンと足下に“既定の土台”として踏みしめて走る跳ぶ泳ぐ潜る。寂れようが若いもんに逃げられようが、田舎の人たちがみんな嘆きっぱなし落ち込みっぱなし、不平不満っきりでどんより暮らしているわけじゃないのです。田舎だから、地元だからこその楽しみもあれば笑いもある。笑えるけれど、でも田舎なのです。寂びれていく一方なのです。でも笑えるのです。この堂々巡りにじわじわ毒気が滲みて行く。

何と言うか、毒気がムダ毒でなく、いちいちスイートスポットで毒炸裂して、完全燃焼して燃えカス残さないで次へ行く感じ。この調子なら、どんなにカリカチュアライズしても、「田舎をバカにしている」「不快だ」という声が上がることはないでしょう。

ドラマの時制は20087月からスタートで28ヶ月後の3.11には三陸は…”という未来も視聴者は神の目で知っているわけです。ここに最大の“埋蔵毒”が仕掛けられていると言ってもいいかもしれない。繰り広げられているすべての喜怒哀楽、これから半年間続く物語が、実はまるごと邯鄲一炊の夢にすぎないという儚(はかな)可笑しさ

儚いから、可笑しいから目が離せない。前へ進む、引っ張って行く力があるドラマ、これはもう「朝ドラとしては」異色、「朝ドラとしては」ユニーク、なんて修辞で評しては失礼でしょう。昼のドラマも夜のドラマもまとめて、笑いながらなぎ倒す強靭なドラマです。

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