契約日前日。
旦那 「ハンコはにーさんが押す」
私 「どうぞ」
旦那 「で、ハンコ押す直前に、“ガソリンは満タンだよね?”って言う」
私 「それはやめて。ってか、やめてあげて」
旦那 「なんで?」
私 「頑張って安くしてくれたんだから、それ以上、イジメないのー」
旦那 「ばか、イジメじゃないって。これは、常套手段だって」
私 「うそだって、そんな…」
旦那 「ホント、マジ、みんな言ってるって。そう言った時の相手の顔を見るのが、また楽しいんだって」
私 「それくらいなら、ガソリン入れたばっかりだし、スタコちゃんのガソリンを抜いて入れ替えるつもりで…
とか言ったら?」
旦那 「いや、満タンにしてって言う」
これもまた、頑なに譲りません。
──ってか、何て楽しそうなんだ、あんたは…。
そんなこんなで契約当日。
まずは、契約する前に試乗しました。
試乗から帰ってきた旦那。
旦那 「あのしっとり感って、ああいうもの?」
店員 「ハンドルは皮が張ってあるので…」
旦那 「ううん、足回りのこと。しっとりっていうか…悪く言えば重い…?」
店員 「あぁ~。そうなんですよね。CVTだと、どうしてもああいう感じで…。私も前はスターレットを乗っていた
ので、ヴィッツを乗った時は、かなりイライラしましたよ。でもまぁ、慣れてきましたし…アレに変わった
ことで、間違いなく燃費は向上しましたからねぇ…」
旦那 「そうか…」
そんな出だしでしたが、次に話し始めたのは、iQ。
旦那 「あれは、どうなの?」
私 「かなり、予想を超えて予約が入ってるってらしいじゃないですか?」
店員 「いやぁ~…でも、だんだんと減っていきますよ」
私 「そう?」
店員 「やっぱりね、この不況ですから…」
私 「あぁ~…セカンドカーくらいなら持とうと思うけど、今はセカンドカーを買おうと思うほどお金がないもん
ねぇ」
店員 「そうなんですよね…」
私 「それに、値段の割りに使い勝手が…ねぇ…?」
店員 「その通りなんです。ただ、私たちみたいに理論的な事を分かっている人間からすると、この車はあり
得ないんですよね。それくらい、すごい技術なんですよ」
縦の長さと横の長さの差が、30数センチくらいしかなく、それで真っ直ぐ走るということ事がすごいらしい。それに、タイヤを正面から見た時、向こうのタイヤまで見えるというのも、今までにはなかったそうです。
私 「私みたいに凄さが分からない人には、値段の価値を理解してもらいないから悲しいですねぇ…(笑)」
店員 「ははは…まぁ、見る人が見たら、この値段も高くないんですけどね…」
そんな、買わないiQの情報や、ぶっちゃけ…から始まる情報なんかも得まして、ようやく契約書類に話が及びました。
店員 「じゃぁ、契約者の名前はご主人でよろしいですね?」
旦那 「え? オレでいいの? 保険は大丈夫?」
私 「大丈夫、ちゃんと聞いたよ~。同居者なら、いいんだって」
今のスタコちゃんは結婚前に私が買ったので、車の契約者も任意保険の契約者も私でした。
でも、今回は結婚後、旦那の給料で貯めて買うものですから、一応、旦那の名前にする事にしたんです。ただその時に、任意保険まで旦那の名前にしたら、今までの割引率がフラットになってしまいますから、どうしても保険は私の名前でしたかったんですね。
私 「なんてたって、おにーさんが任意保険の契約者になったら、いつゴールド割引がもらえるか分
からんしねぇ」
──そう言ったら、前にいた店員(担当者)が、何やらすごく笑っていました。
すると…。
店員 「ホントそうなんですよ~。私も、未だにゴールド免許が取れなくて…。あと数ヶ月でゴールド免
許ってところで、当てたり、当てられたり…。他の従業員はゴールド免許を取ってて、私だけなんです
よね、持ってないの。だから、お前らそれはウソだろーって、よく言うんですよ」
ここにもいました、ゴールド免許の取れない人が…(笑)
そして話は、事故後のことに。
『保険を使うなら、たいしてこっちが悪くなくても頭を下げて、「全部やらせてもらいますわ」って言った方が、あとあとの事を考えたらいいですよ。10-0で自分が“0”ならまだしも、1割でも自分に非があるなら、その方が無難です。だってね、100万円の損害で10割の100万円払おうが、1割の10万円払おうが、保険が3等級下がる事には変わりなんですもん。だったら、ごちゃごちゃ言いあって長引くよりは、「はいはい、もう全部やらせてもらいます」って言って、保険屋さんに任せた方が、すぐに終わりますから』
そう言われて、なるほどと思いました。
ゆくゆくは、自分の為だ、って事ですね。
まぁ、基本は車両保険も入って、相手への保障も、自分への保障も全額保険料が下りるという契約をしている人に限りますが。
悪くないのに謝るのが嫌な私には、かなり苦痛ですが…ある意味、大人にならなきゃいかんなぁ…と思ったり。
でも、だからといって、自己中な人間が増えるのは困り物ですけどね…。
──で、契約の続き。
店員 「じゃぁ、こちらの書類の、こことここに──」
旦那 「え~、こんなにも? はい、ねーさん」
──と、その書類を渡されてしまいました。
私 「なにぃ? ハンコ押すんでしょ?」
旦那 「うん。ハンコだけ押す」
私 「はぁ!?」
旦那 「ハンコだけ押したい」
私 「あんたはガキかっ!」
そんなツッコミを入れつつ、仕方がないので書類は私が記入しました。
まぁ、本音は字がうまくないので書きたくない、というのでしょうが…。
そして、念願のハンコ押し。
旦那 「で、ガソリンは満タン?」
い、言いやがった…。
店員さんは困ったように俯かれましたが、なんとか“分かりました…”と、無事に1個目のハンコを押しました。
店員 「あと、ここと、ここと…」
ハンコの場所を指差しし、言われるがまま、2個目、3個目…とハンコを押す旦那。
旦那 「ねーさん、押す?」
私 「押さない。ってか、ハンコ押したいって言ってたじゃん」
旦那 「飽きた…」
おいおい…。
どうやら、ハンコを押す前に“ガソリン満タン?”のシチュエーションができたので、大満足のようです。
ホントに、ガキだ…。
──とはいえ、最後まで押させましたが。
そうして、その日にできる契約書類を済ませ、帰る事に…。
駐車場に出て、わざとらしく、しかも他人事のように旦那が驚きます。
旦那 「おぉ けっこうやられましたねぇ~」
私 「失敬な…。ってか、ちょっとへこんだだけじゃん」
そう返すと、旦那が店員さんに向けて言います。
旦那 「コレですよ…。“ぶつけられた”って言われて、“どれくらいへこんだ?”って聞いたら、“ちょっとへ
こんだくらい”って…。見てみたらかなりへこんでて…どこが、ちょこっとやって、な?」
店員、また笑ってます。──と思ったら。
店員 「うちも以前にね、奥さんから電話が掛かってきてね、“こすった…”って。“どの程度?”って聞いた
ら、“う~ん、横をちょっと擦ったかなー”って。帰って見てみたら、ちょっとどころか、前から後ろま
でダーって傷が付いてて…」
──だそうです。
私 「だから、女の“ちょっと”と、男の“ちょっと”は違うんだって。女の人にとって、“かなり”って言わ
れる度合いは、もう“グワシャッ”ってなってる状態なの」
まぁ、結果的に車がちょっとバウンドするとタイヤが擦れるので、「ほら、それだけ“かなり”ってことなんだって」と言われましたが。
タイヤがバーストするのが怖いので、少し叩いて出してもらいましたが、コレって、ちょこっとへこんだ…程度ですよね?