頑固爺の言いたい放題

森羅万象なんでもござれ、面白い話題を拾ってレポートします。

日本年金機構のお粗末なミスとマイナンバー制度

2015-06-05 15:03:16 | メモ帳

日本年金機構のお粗末なミスが明るみにでて、マイナンバー制度反対派は「それ、みたことか」と勢いづくだろう。しかし、マイナンバー制度はマクロ的にはプラス面の方がマイナス面よりはるかに大きく、日本社会の持続的運営に欠かせないものであることは論を俟たない。問題点は、国民個人にはメリットを実感されないことであり、そのために政府は国民の反発を恐れ、これまで議論を先送りしてきたと思われる。

私は米国に30余年在住し、その内の半分弱は日本企業の米国駐在員の立場で社会保険料を支払い、半分強は自分で起業した個人企業の立場で支払ってきた。その両者が支障なく合算されたので、米国の社会保険庁から年金が日本の銀行口座に毎月キチンキチンと送金されてくる。

米国の社会保険制度が適正に運営されているのは、Social Security Number(SSN 社会保障番号)制度が確立されているからである。SSNを取得しないと銀行口座を開設できず、したがってクレディットカードを申請できないし、車の運転免許も取得できない。住宅ローンにも、所得申告にもSSNが必要。つまり、米国では社会生活の基軸がSSNなのである。

そして、個人のSSN情報の一部である債務返済履歴は公開されており(「情報流失」というようなネガティヴな概念とは逆)、そこに汚点がないことは個人の無形資産である。そのおかげで、私は永住権を取得でき、ビジネスを起業でき、銀行から融資を受けられたと認識している。

マイナンバー制度の目的はいろいろあるが、その一つは不正の防止。「文芸春秋」誌6月号に掲載された某税理士の論文「マイナンバーで日本は大不況になる」に、不況になる理由の一つとして、「社会保険料を適正に支払っていない企業が困る」とあるが、それなら企業の不正を容認するのか。そして、その従業員は将来もらえるはずの年金をもらえなくなるではないか。これは本末転倒の議論と言わざるをえない。社会保険料は社会を円滑に持続させる不可欠のコストと考え、景気のいい時にでも社会保険料を製品・サービスの価格に転嫁してもらうしかない。

マイナンバー制度の懸念は個人情報の漏えいである。米国でも情報漏えいは起きているらしいが、社会問題として大きく取り上げられたことはないし、少なくとも私に関する限り、不都合はまったく発生しなかった。だからといって、日本で情報漏えいは起きないだろうとは言わない。起きる可能性はあるのだから、国民を安心させるためにも、日本政府は万一情報の流失によって国民に金銭的損失が生じたら、政府は責任をもって弁償すると確約すべきである。

米国でSSN制度が機能している以上、日本でもマイナンバー制度は機能すると信じる。今回の日本年金機構の失態は、今後は何をすればいいかがわかったと、前向きに考えようではないか。