調査捕鯨を実施している日本鯨類研究所がシーシェパード(SS)に和解金を支払うことで、SSが今後日本の調査捕鯨を妨害しないことに合意した(読売新聞 2016年8月24日)。そしてその和解金は、2012年に米国裁判所がSSに対し南極海での日本の調査船に対する妨害行為をやめるよう命令したのにもかかわらず、SSが従わなかったことで法廷侮辱罪として課した3億円の賠償金の一部の払い戻しだという。
要するに、SSはカネに目が眩んで主義主張を撤回したのである。SSの主張はその程度のものだったのか。
それはともかくとして、日本は南極海における調査捕鯨をやめるべきだ。日本の農林水産省は調査捕鯨を正当化する理屈をいろいろ並べているが、この問題は理屈では推し量れない情緒的なものである。鯨を食べるのは日本の伝統的食文化だと言い張っても、南極海まで出かけていくこととは相容れない。
19世紀までは欧米諸国や豪州は盛んに鯨を獲っていたが、20世紀以降、価値観の大転換があって、捕鯨反対が国際的価値観になった。その大転換は、ホエールウォッチングが観光化し、鯨に親しみを感じるようになって、鯨を食べるのは野蛮であるという感情が生まれたことによる。犬を食べるのは野蛮だという主張と同じことだ。いくら理屈を言いたてたところで、情緒的主張には勝てない。
日本が調査捕鯨をやめれば、SSは消え去るのみ。そうなれば、和解金など必要なくなる。「日本人は鯨を捕るから野蛮だ」と言う理不尽な言い掛かりもなくなる。