戦後間もないころ、「真相箱」というNHKの連続ラジオ番組があった。私はまだ小学生だったが、この番組を毎回寝床の中で聞いた記憶がある。
終戦まで軍国少年だった私は、日本の航空隊が米国の軍艦を何隻も沈めたというような新聞記事を読んで、胸を躍らせていた。しかし、それにしては米軍がどんどん北上し沖縄まで来ているし、B29が毎日のように各地を爆撃するので、「なんだか変だな」とは感じていた。
「真相箱」を聞いて、「そーか、大本営発表は大嘘だったのか」と納得した気になっていたが、ケント・ギルバート氏の著書「マスコミはなぜここまで反日なのか」(宝島社)を読んで驚いた。あの「真相箱」は占領軍が日本人に戦争に対する贖罪意識を植え付けるためのプロパガンダの一環だった、という。ギルバート氏によれば、「真相箱」にはかなり誇張があり、それを批判した知識人もいたらしいが、小学生だった私は「真相箱」が真相だとばかり思っていた。
その占領軍(GHQ)によるプロパガンダとは、WGIP (War Guilt Information Program )すなわち「日本人に戦争責任の罪悪感を刷り込む計画」であり、日本人の民族性と伝統を徹底的に否定することで、日本人から愛国心を奪うことを意図していた。そのために、GHQは新聞社、出版社、映画会社などすべてのメディアに30項目からなる日本国民に伝えてはならない「べからず集」を強要した。
その30項目には
● GHQが日本国憲法を起草したことに対する批判
● 戦勝国(米国、英国、ソ連、中国)および朝鮮人に対する批判
● 戦争犯罪人への正当化および擁護
● 占領軍軍隊に対する批判
などが含まれる。
マスコミに唯一許された批判は日本政府に対するものだった。「今の日本のマスコミが、政府や自民党に対する批判となると、まるで鬼の首を取ったように躍起になるのは、ここに原点があります」(主題著作10ページ)。
こうして毒された日本のマスコミは信じられないミステークを重ねてきた。
教科書誤報事件
1982年、文部省が歴史教科書の検定において、元の原稿の日本の中国「侵略」を「進出」と書き換えたというニュースを各新聞社とテレビ局が流したが、これは勘違いによる誤報だった。この誤報は修正されず、教科書検定に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされること」という規定が設けられる原因となった。
これは「日本は内政干渉を歓迎します」ということを意味する。これが、朝日新聞の本多勝一記者が書いた「中国の旅」とともに、中国に南京大虐殺というフェイクニュースを流させる原因となった。(同書124ページ)
靖国神社参拝
1985年、時の総理大臣、中曽根康弘氏が靖国神社に参拝した際、朝日新聞が「総理大臣が、A級戦犯が祀られている靖国神社に公式参拝するのはいかがなものか」と批判し、それ以来、中国が「靖国」を外交問題にするようになった。
慰安婦問題
朝日新聞の大誤報であり、謝罪はしたものの、誤報だけは生き残って、韓国に日本叩きのツールを与える結果になった。
毎日新聞英語版の反日記事
2008年、毎日新聞の英語版MAINICHI Daily News は日本を貶める誇張・捏造記事をネットに流した。執筆者も編集者もアメリカ人。(同書135ページ)
さて、ギルバート氏は日本のマスコミが反日である原点はWGIPにありと喝破し、それによって引き起こされた数々のミステークの実例を述べているわけだが、私にはギルバート説を素直に受け入れることはできない。
なぜなら、私は冒頭に述べたように、小学生の頃にWGIPに洗脳されたはずだが、現実には産経新聞の主張に共感することが多い保守派だから、である。
私が「真相箱」のファンだったのは善悪の分別がない年ごろだったから、番組を聞いても洗脳されなかったとも考えられる。しかし、それならば現在のマスコミの第一線で活躍している方々は、私以上にWGIPに洗脳される機会がなかったはずである。それとも、職場の先輩諸氏がWGIPに洗脳され、その思想を脈々と後輩に伝えてきたのだろうか。それならば現在のマスコミ諸氏は先輩から受け継いだ思想を自分の思想よりも優先しているのか。
それとも、産経・読売を除くマスコミの人々は、反安倍政権である方が販売部数増または視聴者増に寄与すると考えているのだろうか。
この話はここまでにして、別の機会に再度論じることにする。