前回に続き、「地球温暖化の不都合な真実」(以下、本書)からの引用を続ける。以下、「脅威派」とは“今進行中の地球温暖化は人類に災厄をもたらす”と主張する人々、「懐疑派」とはその主張に懐疑的な人々を意味する。なお、赤字は本書の文章そのままの引用であり、青字は本書を簡潔に言い換えたもの、黒字は頑固爺のコメントである。P-○○とは本書に掲載されたページを示す。
【IPCCの理念】
国連の下部機構であるIPCC(International Panel on Climate Change)の第5次報告書(2014年)は次のように述べる。(下線は頑固爺)
・“気候システムの温暖化には疑う余地はない” 気温、海水温、海水面水位、雪氷 減少などの観測事実が強化され温暖化していることが再確認された。
• 今世紀末までの世界平均気温の変化はRCPシナリオによれば0.3~4.8℃の範囲に、 海面水位の上昇は0.26~0.82mの範囲に入る可能性が高い。
• 気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の抜本的かつ持続的な削減が必要 である。
一方、本書はIPCCを次のように認識している。
IPCCはCO2が気候に及ぼす影響を検討する。母体の国連は「対策」を考える組織だから、IPCCは「危機を訴える」のが使命になる。もしCO2に問題ないとわかれば、国連は世界経済を管理下に置き、世界エネルギー需給を差配するという名目を失い、IPCCは存在価値がなくなる。(P.34)
CO2に問題なければ、IPCCは存在する意義がなくなるから、その報告書は毎回表現が過激になる傾向がある。(2014年の第5次報告書が最後で、2022年に第6次が発表される予定)
【CO2温暖化説の国際政治との関連】
地球温暖化CO2主犯説は単なる科学ではなく、国際政治に関する問題であるとして、本書は次のように述べる。
IPCCは人為的CO2温暖化説を広めるために国連が作ったロビー集団だと言える。IPCCの幹部が公式の席でこう発言している。「実のところ温暖化政策は口実に過ぎません。私どもは富裕国のお金を貧困国に渡し、富を再分配したいんです。」
IPCCの前議長ラジェンドラ・パチャウリ氏も地球温暖化を「私にとっての宗教ですよ」と公言しており、IPCC報告書の目的は「世界の理性ある人々に、温暖化対策が必要だと思われることです」と語る。(P.44)
2010年11月、IPCC第四次報告書(2007年)の責任執筆者で、第三作業部会(温暖化対策)の共同議長でもあったオトマー・エーデンホーファーが本音を吐いた。「我々は温暖化政策で世界の富を再分配し、富裕国から貧困国にお金を流したい。」(P.214)
インド政府は国連のCO2削減指令に反発して、2009年国連にこう申し入れた。「国民の40%が電気を使えない現在、CO2排出に努めよとは無慈悲というものだろう。」(P.281)
デンマークの統計学者ビョルン・ロンボルグは「温暖化対策に省エネに1兆円の税金を使っても、7000万人*の貧困層は貧困と闇から抜け出せない」と主張する。(P.284)
*(注)この7000万人の根拠は不明。
CO2削減を義務づけられると、日本のように、基準年以前にすでにCO2をかなり削減済の場合は、それ以上の削減はつらい。また、インドのように、これから発展しようという国々にとっては、CO2排出を制限されることは経済成長を遅らせることを意味する。
一方、国連としてはCO2排出を国家間で調整することにより、富裕国と貧困国の格差を是正する役割を果たしたいという思惑がある。
【CO2濃度】
大気中の微量ガスCO2は動物の呼気に含まれ、地球上の全植物が利用する。2013年に大気中のCO2濃度が400ppmを超え、温暖化脅威派を心配させた。どんどん上がるCO2濃度の悪影響を和らげるという触れ込みで、排出量取引やEPA(環境保護庁)規制、国連の気候関係条約などができた。
だが温暖化パニックをよそに、高名な科学者たち、とりわけ地質のプロは、400ppmのCO2など「ゴミ」とみる。地球の気候や気温は何百もの要因で変わる。CO2はその要因のひとつにすぎない。名だたる気象学者たちも、CO2濃度が今の2倍や3倍になったところで、気候や気温にほとんど影響ないとみる。(P.56)
プリンストン大学の名誉教授で、物理学者のウィリアム・ハパーは2009年の公聴会でこう証言した。「地球史上、CO2濃度が280ppmまで下がった時期はほとんどありません。1000ppm以上が平常。ずっと濃い時代もありました。当時の地球は楽園でした。植物も動物もすくすく育つ。ですから、当時よりだいぶ低いCO2濃度に近づくのが恐ろしいなどというのは、たわけた脅しにすぎません。」
デンマークの統計学者ビョルン・ロンボルグはこう主張する。「2100年までに世界が1京円(1兆円の1万倍)を使っても、地球は0.3度しか冷えない。時間に直すと、気温上昇をたった4年だけ先延ばしするだけ。IPCCの気候モデルをもとに計算すればそうなる。私の空想ではない」(P.270)
CO2の適正濃度は誰にもわかっていない。そして、過去にもCO2濃度が今の2倍以上の時代があったとなると、脅威派(IPCC)の主張は色褪せる。
【温暖化騒ぎの本質】
フランスの高名な物理学者で政治家でもあるクロード・アレーグルは1992年に温暖化の危機を訴えていた。しかし、温暖化の証拠を調べた結果、意見を真逆に変えた。いまや彼はフランスで一番声が大きい懐疑派だ。アレーグルは語る。「エコの掛け声が一部の人間を大儲けさせる。・・・アル・ゴアのノーベル賞受賞は政治的喜劇だ。・・・彼の映画は嘘だらけ。要するに政治の話だ」(P.124)
懐疑派で名高い環境主義者パトリック・ムーアは温暖化騒ぎの本質をこう見抜く。「環境保護のポーズを有権者に見せたい政治家や、寄付金を集めて世界のエネルギー政策を仕切りたい環境団体、警告好きのメディア、研究費が欲しい大学と研究者―そんなエリート集団の波長が合って、大きな流れをつくったんです。」(P.134)
米国の環境保護庁(EPA)は、温暖化対策をしても世界のCO2排出はほとんど減らず、気温もほとんど変わらないと認めた。2016年のパリ協定をかりに万国が守っても、地球の気温は変わらない。要するに温暖化対策は、グローバル統治を願うエリート集団の黒い本音を隠す煙幕だった。(P.224)
ミシガン州選出の共和党下院議員、エネルギー・商業委員会のフレッド・アプトン委員長は、コネを悪用して税金をかすめとるアル・ゴアを批判してきた。・・・省エネ活性化予算と、排出量取引の立法化をにらんで、ゴアは仲間に声をかけ、さまざまな関連組織を作り、あるいは既存の組織にもぐりこんだ。排出量取引法案が議会を通れば、ゴア自身も大金をさらに稼げる。(以下省略)
【脅威派と懐疑派の勢力比較】
脅威派の総本山であるIPCCには130カ国から2000名もの科学者が集まっている。一方、懐疑派は最近脅威派からの転向者が増えたこともあり、2010年の段階で1000人(P.20)。脅威派の方がはるかに人数が多い理由は、脅威派には国の補助金が出るし、企業からの寄付金も多く集まるからだ。さらに、学閥の関係で異端者は昇進が難しいこともある。
人数では脅威派の方が多く、量的には勝っているが、脅威派から懐疑派への転向組が多いこと、脅威派の主張には綻びが見えていることから、質的には懐疑派の方に分があると思う。
【白けるアメリカ人】
2007年にアカデミー平和章を授章したゴアは、「公共の乗り物を利用しよう」と呼び掛けているが、その私生活は真逆の日常であるようだ。
「彼のテネシー州にある豪邸は年に220万円(一般家庭の20倍)も電気代を払う。庭の温水プールだけでも、一般家庭6軒分の電気を使う。以前は2億円未満だった純資産が2008年には8億円に増えた。2006年に彼が作った映画「不都合な真実」が大当たりしたためである。」(P.244)
2007年3月21日の上院公聴会でジェームズ・インホフ議員*がゴアの莫大なCO2排出を咎め、「家庭省エネ宣言書」に署名するよう迫ったが、ゴアは署名を拒否した。その宣言書の文面は次のようである。
家庭省エネ宣言書
私は、地球温暖化が人類の生存に影響する道徳的・倫理的・精神的問題と考え、
家庭のエネルギー消費が世界の総エネルギー消費を左右すると考え、
家庭の省エネが温室効果ガスの排出削減につながると考え、
指導的立場の人間が模範を示すべきだと考えて、
2008年3月21日以降、自宅のエネルギー消費を一般家庭の平均値以下にすることをここに宣言します。
大親友のレオナルド・ディカプリオも言行不一致のお手本だ。・・・ニューヨーク市で環境関係の賞をもらうために自家用ジェットで飛んだが、そのジェット機が排出したCO2は1万台の車が一日に排出する量だ。(P.246)
*注)インホフ上院議員は温暖化懐疑派の筆頭的人物で、本書に賛辞を寄せている。
これでは一般国民は白けるばかりだ。だから、CO2排出抑制は国民の関心を呼ばない。アル・ゴアとか一部のハリウッド・スターたちは、神輿を担がずに、周りで大うちわで扇いでいるだけなのだ(笑)。
【頑固爺所感】
2006年にアル・ゴアが作った映画「不都合の真実」には、キリマンジャロの雪は10年後にはなくなるだろう、というナレーションがあったという。しかし、その雪は今でも健在である。北極熊の頭数が減っているという話もホラだった。太平洋の小島の海面が上昇して、住民が移住しなければならないという話は、地面が沈んだだけだった。米国東海岸では、このところ毎年豪雪に見舞われているが、脅威派はそれも温暖化の一環であると主張する(笑)。
CO2が今の400ppmの水準から、かりに1000ppmになったとして、気温が何度上昇するかという命題に答えられる学者はいないーというより計算する理論がない。
ということで、地球温暖化説は壮大な与太話だった。だからといって、CO2排出を抑制する必要がない、とは言わない。なぜなら、CO2排出抑制は局地的な大気汚染を防止することだから、である。
問題点続出で、IPCCの第6次報告書がどのような内容になるか楽しみである。