この論考は7月11日にアップした≪「法令遵守」無視のマンション管理会社≫の続編である。まず、前回の論考の要点をおさらいしておこう。
●私が住むマンションの管理費は、管理会社である大成有楽不動産(以下、大成)が管理している他のマンションの水準よりも約3割(私の場合で年額78,000円)高い。
●大成に「管理費を他のマンション並みに下げるにはどうしたらいいか、提案して頂きたい」と管理組合総会の席上で要請したところ、「よそが安すぎるのだ」「守秘義務がある」等々の理由で拒否された。一方、組合は現行管理費の維持を可決した。
●「マンション管理適正化法」によれば、マンション管理士とは、「管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務とする者をいう」と定義されており、大成の担当者N氏はマンション管理士である。私の要請は組合のサポートを得られなかったものの、下線部分によって、N氏は私の要請を拒否することはできない。
●「大成建設グループの行動指針」第3章には「適切なる情報開示」という項目があり、私の要請はこれに該当する。そして、特定の管理組合の情報開示を求めたものではないので、「守秘義務」とは無関係。なお、大成グループは社内ルールも含めた「法令等遵守」を掲げており、「法令遵守」より幅広い概念を従業員の行動指針としている。
●大成が管理するマンションの中で、管理費が突出して高いのは、当マンションと同じ町内(担当者も同じ)にある「オーベルM」だけであり、他のマンションの管理費はほぼ平準化している。したがって、当マンションの高い管理費は、大成担当者の独走・暴走によるものと判断する。
ここからが今回の話である。
私は赤字部分の判断が正しいか否かを確認するために、大成有楽不動産の横浜支店長に配達証明付きの書面を送付して、これまでの経緯を説明しつつ「御社担当者の言動をどう評価しますか」と質問した。
しかし、残念ながら回答はなかった。無回答は、≪大成は当該マンションの異常に高い管理費を見直す意思はなく、「法令遵守」無視は会社ぐるみである≫ことの表明と受け取っていいだろう。すなわち、「担当者の独走・暴走」という私の判断は間違っていた。
一般論として、マンションの管理費はその販売広告に記載されているから、条件が同じようなマンションの販売広告を調べれば、その標準的金額を知ることができる。しかし、自分のマンションの管理費が高いと思っても、なぜ高いのかを知ることはできない。その情報を持っているのは管理会社である。
食品・家電製品などの一般商品なら、値段が高いと思えば、他店にいけばすむことだ。しかし、マンションの管理サービスには継続性・一貫性が求められるから、組合は簡単に管理会社を替えるわけにはいかない。取引関係は固定的であり、管理会社は節度ある料金設定をすることで、組合との信頼関係を構築しなくてはならない。
どうしても妥協点に至ることができないなら、組合は管理会社を変えることになるが、それには臨時総会を開催して組合員に事情を説明する必要があり、時間がかかる。
私が作成したデータによって、当マンションの管理費は大成が管理する他のマンションより3割高いことが実証されている。したがって、大成の経営戦略という観点では、私が作成したデータは無視し、現行管理費をできるだけ長く維持する策を選択するのがベストである。ましてや当組合は私の主張を退け、現行管理費の維持を可決したのだから、大成にとっては誠に都合がいい状況にある。
≪法令遵守≫もなんのその、恥も外聞もなく、ひたすら利益確保を優先するかぎり、担当者も上司もダンマリを決め込むのは当然である。
「大成グループの行動指針」には≪お客様満足の追求≫という項目もあるが、これは単なる建前に過ぎないらしい。
さて、このブログを見ている人は結構いる。7月11日付の≪「法令遵守」無視のマンション管理会社≫後編の最後の右下にある「コメント」欄に数件の投稿があり、なかには大成の名誉にかかわるものもある。大成の関係者は目先の僅かな利益にとらわれ、企業のそして大成グループの、信用を損なっていることに気付かないのだろうか。