私が住むマンションの管理費は、他のマンションに較べてかなり高い。昨年の管理組合総会の席上、私は管理会社に管理費適正化を求めることを提案したが、却下された。その後、管理費を削減する具体案を理事長および他の理事に文書で提出したが、返事なし。
そこで、別のアプローチを考えた。それは管理会社に当マンションの管理費が高いことを示すデータを提供し、管理費削減策を提案してもらうというもの。そのデータが別の管理会社が管理するマンションのものでは比較分析が難しいから、当マンションの管理会社である大成有楽不動産株式会社(以下、大成)が管理するマンションを対象に選ぶことにした。
そこで選んだのが、大成グループの看板ブランド「オーベル○○」のマンション㊟。○○の中には地名が入る。オーベル・マンションなら管理システムや経費項目が当マンションと共通だろうから、比較分析が容易のはずだ。
中古マンションのネット広告から集めた23件のデータを専有面積別に整理して、当マンションと対比した管理費比較一覧表(以下、「一覧表」)にまとめた。出来上がった「一覧表」は、当マンションと「オーベルM」(同じ町内にある)だけが、他のマンションより管理費が2割から4割高いことを示している。私の区分を例にとるなら、「一覧表」の平均より6,500円(月額)高いから、削減策を検討するのに十分な額である。
格差の原因については、理事会に管理費削減の提案書を提出したこともあり、なにをすればいいのかおよその見当はついている。その半分以上は大成の懐が痛まないものだが、全部ひっくるめて大成に提案させることに意義がある。例えば、駐車場使用料値上げ案は大成側の損益には無関係だが、組合理事会が握り潰しているので、これを大成に勧告させて理事会に圧力をかける狙いがある。
総会開催の1ヶ月前に、≪来る総会で「当マンションの管理費を他のマンション並みに下げる具体策を御社に提案して頂きたい」と発言するつもりだ≫と書いた書状にこの「一覧表」を添えて大成に送付した。発言の事前通告であるが、大成が自発的に管理費削減案を総会で発表してくれるかも知れないという期待感もあった。
総会の当日、議長(組合理事長)は大成が作成した次期予算案を示し、出席者の承認を求めた。そこに示された管理費は従来と同じである。そして、大成からなんのコメントもない。そこで、私は≪予算案に賛同しかねる。理由は定額委託業務費(後編参照)に疑問があるからだ≫と発言し、用意してあった「一覧表」を出席者全員に配布した。そして、≪当マンションの管理費は「一覧表」によって明らかなように、大成が管理する他のマンションより平均3割高いが、その差は定額委託業務費(以下、委託費)が高いことに起因する可能性がある≫と発言した。
これに対する大成のマンション管理部長の反論を≪≫内に示す。
≪ほかのマンションが安すぎるのだ≫
自社を批判するのか? 「開いた口がふさがらない」という表現は、こういう時に使うのだろう。自社の批判は別としても、他のマンション(22件)の管理費が「安すぎる」のではなく、当マンションと「オーベルM」が高すぎると判断するのが常識ではないのか。
≪「オーベルX」はグレードが低い≫
大成グループが建設・販売・管理するマンションをけなすのか。そもそも、マンションのグレードと管理コストは無関係だ。
≪「オーベルY」は駐車場運営コストが安い≫
中にはそういう物件はあるだろう。それは除外して構わない。
≪管理費はマンションの戸数によって変わる≫
その通りだから、「一覧表」の対象を戸数80以下、30以上の物件に絞った(当マンションは45戸)。
≪守秘義務があるから、顧客の情報は開示できない≫
特定の顧客の情報を求めてはいない。大成に期待することは、22件の中から当マンションに近い条件のものをいくつか選び、その経費構成を当マンションと比較して適正モデルを想定し、当マンションの管理費をそれに近づけるにはどうしたらいいか、提案してもらうことである。
端的に言って、どの反論も的外れだ。十分な時間的余裕を与えた結果がこれなのか。私が事前に渡してあった「一覧表」には目もくれなかったと想像する。
さて、「マンション管理の適正化に関する法律」第2条によれば、「マンション管理士とは、専門的知識をもって、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務とする者をいう」とある。これがとりもなおさず管理会社の重要な役割であるはずだし、担当者S氏はその「マンション管理士」である。私の要請は、大成にこの条文通りの役割を果たすことを求めているのだが、大成は拒否したのである。
一方、大成建設のホームページには、大成グループが社会的責任を果たすための行動指針を掲げており、その第3章に「適切な情報開示」がある。私の要請はこれに該当するはずだが、大成は「開示」どころか隠蔽しようとしている。
そして、当該行動指針に掲げられた「法令等の遵守」とは、社内ルールも含む概念だと規定している。したがって、大成担当者はこれにも違反していることになる。。
話を総会に戻す。議長は私の説明と大成の反論を聞いてから、「では決を取ります。予算案に賛成の方は?」と発言し、私を除く全員が賛成して、予算案は原案通り可決された。私が、現行管理費が高いことを実証したにもかかわらず、そして大成のお粗末な反論を聞きながら、なぜ組合員は予算案原案に賛成したのか。これについては後編(下へスクロール)で説明する。
注 オーベル・シリーズは当マンション竣工後、間もなく始まった。