(3)営利事業としての「駐車場」
組合員全員が駐車場を利用するなら「駐車場」運営の利益はゼロでいいが、駐車場を利用しない組合員もいるから、適当な利益が必要である。では、どの程度の利益を見込んだら妥当か。その意見は分かれるだろうが、比較的リスクがない事業なのでここでは投資額に対し年間3%とすると、1台当たり 1,580,000円×3% =47,400円/年(3,950円/月)。
ここまでの計算をまとめると、
駐車場収入=「保守費」(1,000~2,500)+「積立金」(5,267)+利益 (3,950)
=10,217~11,717円
すなわち、高めの「保守費」の場合、駐車場収入が円い数字にして12,000円以上ならば、「駐車場」はビジネスとして成り立つ。
利益は組合員にキャッシュで還元されるわけではないが、修繕積立金(または管理費)に組み込まれるから、組合員の支出を減らす効果がある。したがって、税金がかからぬ営利事業と認識していい。
(4)資金を借り入れるケース
ここまでは「積立金」が100%ある場合を想定したが、現実には駐車場収入は大規模修繕に流用され(もしくは管理費削減に使われ)、いざとなった時に資金がないか、不足するケースが殆どであり、その時は銀行借り入れに頼らざるをえない。その場合の採算を考えてみよう。おおまかには自己資金の場合に較べて、銀行に支払う利息だけ多くなるだけで、くどくなるが細部がやや異なるので一応列記する。
●取り替え費用を125万円として、25年間資金を借りると、毎月の元金返済額は
1,250,000 ÷ 25 ÷ 12 = 4,167円……….①
●金利を3%とすると、125万円に対する25年間の利息総額は約47万円。これを毎月均等に返済するとして
470,000÷25÷12= 1,567円……….②
●修繕費(自己資金でまかなう)を総額330,000円として毎月に割り振ると、
330,000÷25÷12=1,100円………..③
●利益は前述のように3,950 円…………④
必要となる駐車場使用料 =「保守費」(1,000~2,500) +(①+②+③+④)
= 11,784~13,284円
すなわち、自己資金(「積立金」)がまったくゼロの場合は、円い数字にして 12,000~13,500円の駐車場収入が必要である(「更新可能分岐点」)。
換言すると、月12,000~13,500円以上の駐車場使用料が得られる地域なら、パレット取り替え資金を銀行から借りても「駐車場」は存続させることが可能。しかし、そうでない地域では断念せざるを得ない。
もそも、都会でも田舎でも機械式駐車装置のコストは同じである。一方、大都会の中心部では有料駐車場の料金が月3万円とかそれ以上の場所もあり、「駐車場」は妙味あるビジネスだ。しかし、地価が下がりつつある地域ではそうではない。事実、私が住む湯河原ではマンションの「駐車場」が閉鎖された例がある。すぐそばに月5,000円の無舗装の駐車場があることから、理由は容易に推測できる。
「更新可能分岐点」を上回る駐車場使用料が期待できない場合は、「駐車場」存続を断念するしかないが、そうなっても心配はご無用。なぜなら、付近にそれまでの「駐車場」使用料と同じかもっと安い有料駐車場があるはずだから、である。
寿命が尽きた機械式駐車装置をさらに存続させるか否かの判断は、次の25年先の地域経済をどう見通すかに関わってくる。将来も地価の低下が発生する懸念がない一等地なら、簡単に「存続」という結論になるだろうが、そうでない地域では「駐車場」存続の可否は多元方程式を解くような難しさがある。最初から見れば50年間という超長期のプロジェクトであり、組合員の高齢化による「駐車場」利用者の減少も考慮しなくてはならず、慎重な検討が必要である。
終