麻生財務相が「新型コロナへの日本の対応がうまくいっているのはなぜか」という質問に対し、「民度が違う」と答えた件で、国内ではかなりの批判があった。その論議が一段落したこともあり、海外はこの問題にどう反応したか調べてみた。
まず、中国から。
中国のネット民は肯定的に受けとめたようだ。下の動画を見ると
https://www.youtube.com/watch?v=t_wHWoJ5i90
「日本国民の民度は世界最高」
「日本人はほとんどがきちんとした教育を受けているから、民度は高い」
「日本人は他人に迷惑をかけたがらないし、清潔だから」
などのコメントがある。日本人が発信している動画であることで、内容を割引いて考えなくてはならないものの、中国人は民度に関しては、日本人とは勝負にならないと認識していると見ていいだろう。それどころか、中国人は日本人に対し、民度コンプレックス(劣等感)を抱いているという意見もある。
https://news.yahoo.co.jp/byline/miyazakinorihide/20180911-00096500/
Wikipedia は「民度」を次のように説明している。(赤字)
中国でも「民度」の言葉が日本から輸入され、同様の意味を持つ。ある国家の国民や民族に対して、「○○は民度が低い」「××だから民度が低い」「民度を高めよう」と語られる。2018年9月に習近平国家首席も教育が重要だとして、「国民の総合的な民度を高める」と演説している。
「民度」は漠然とした概念であり、他の言語にどのように翻訳するかが問題だが、中国では翻訳する必要がなく、中国人は「民度」を日本人とまったく同じ概念として認識していると考えられる。
そもそも、「民度」という熟語が頻繁に使われたのは東北大震災の時である。当時、日本人が示した行動様式、すなわち自律的に形成される規律、忍耐力、思いやり、マナーなどを綜合したもの、が世界中に報道され、賞賛された。だから、麻生発言における「民度」も中国人は違和感なく受け入れられたのだろう。
では、韓国はどうか。
韓国では漢字を使用していないが、漢語をハングルで読み、そのままハングルで表記するから、漢字熟語はそのままの意味で理解される。しかし、「民度」という熟語の使用頻度は高くないだろうから、韓国人が中国人と同じように理解したかどうかは疑問である。
ともあれ、韓国のメディアが麻生発言を非難した形跡は見つからなかった。その理由として、麻生発言は言外に、韓国がITテクノロジ―を駆使してコロナウィルス克服に成功したことを賞賛しているわけだから、韓国人は麻生発言の副次的テーマである「民度」に反応しなかったという観方も成り立つ。
では、英語圏ではどうか。日本と比較的に利害関係が薄いので、忌憚ない意見を述べるだろうと期待し、英語圏の代表として、シンガポールのThe Straits Times を調べた。すると、日本発の報道として、次の記事があった。見出しは “日本がいかにしてコロナウィルスを克服したかに関する麻生発言が(国内で)激しい非難 (flak) を浴びた”である。
The Straits Times より
Aso draws flak for remark on how Japan beat coronavirus
TOKYO • Japan's success against the coronavirus without having to enforce a strict lockdown is due to its citizens' "cultural standard" which is different from that in other nations, Finance Minister Taro Aso said, drawing criticism from the public that the comments were inappropriate.
"Other countries have called me up and asked me if we're the only ones with some drug against the virus or something," Mr Aso said on Thursday in response to a question from a lawmaker on Japan's success in containing the outbreak.
"When I tell them 'our country's cultural standard levels are different to yours', they're left speechless. That's the simplest way to put an end to the questions."
記事の逐語訳は省略するが、麻生発言を淡々と報じているだけで、否定的表現はない。
では、「民度」をどう訳したか?「民度」に相当する英語(及びすべての欧州系言語)の単語はないから、The Straits Times はcultural standard (cultural standard levels) を訳語に選んだ。ただし、これはメディア界の統一用語ではなく、social manners を当てたメディアもある。
いずれにせよ、two またはthree words で「民度」を説明しており、それで読者は理解したのである。爺の推測では、日本の「民度」の水準は東北大震災の時に、十分世界中に報道されており、さらにその後、増加した旅行者によって実地検証されているから、それ以上の説明は必要なかった。換言すれば、日本の「民度」が卓越していることは世界の常識になっているのだ。
諸外国が麻生発言をどのように報じたか、詳しく知りたい方は下のURLを開けてきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=vaGyNHAKA24
では、世界中が異論を挟まなかった麻生発言を、なぜ日本の野党や一部の新聞だけが非難したのか?
ネットで<自虐的な日本人>で検索すると、いろいろ出てくるが、その中に<「自国に対して過剰なほどに自虐的な日本人」に世界の知識層たちは驚いているのだ>というコメントがある。日本に厳しい意見を吐くのは日本人の習性ということならば、麻生発言に対する非難の説明がつくが、日本人全員が麻生発言を非難したわけではない。むしろ、野党と一部の新聞だけが非難したと爺は認識している。
しかし、この日本人の特殊な習癖は今回のテーマとはかけ離れており、話が長くなるので、その議論は別の機会に譲ることにしたい。
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