“NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草” (安積陽子著、講談社)の著者の安積氏はNYとワシントンDCでイメージコンサルタントとして活躍している方である。同氏の意見の基本は次のようである。
一歩、国の外に出れば、自国の文化や価値観とは異なる多様な文化が、多様な価値観が、この世界には広がっています。世界の人々は、この多様な世界で、余計な摩擦や誤解を生じさせず、穏便に望ましい方向に物事を進めるため、守るべきルールを築き上げてきました。あるべき「装い」や品格のある「仕草」というものを一つ一つ積み上げてきたのです。
そして、あるべき「装い」や品格ある「仕草」とはどういうことなのか、具体的に世界のVIPを例にとって説明しているので、その人物評をピックアップしてみる。
安倍首相:
2013年、英国の北アイルランドで開かれた世界主要国会議(サミット)で、安倍首相が各国首脳と会談していたとき、履いていた靴下が真っ白だった。ビジネスや政治の世界では白い靴下は厳禁である。
政治の世界では、ダークネービーかダークグレイのスーツを着用するのが暗黙のルールだが、2016年の伊勢志摩におけるG7サミットでは、安倍首相だけがライトネービーのスーツを着ていた。
2017年2月、米国のマティス副大統領との会談の際、ローファー(紐なし)の靴を履いていたが、ローファーはカジュアルな印象があり、公式の場では不可。
(頑固爺のコメント:要するに、安倍首相の服装センスは落第、ということらしい。確かに、ダークスーツに白いソックスは、常識的にもNGである)
麻生副首相兼財務大臣:
2013年、G20の会合に出席する麻生副首相は、中折れ帽を斜めにかぶり、毛皮えりの黒いコートを着ていた。ウォールストリート・ジャーナルは「日本の財務大臣がギャングスタイルでG20へ」と写真付きで報じた。安積氏は麻生氏の姿勢のいいこととスーツの仕立てがいいことを褒めているが、中折れ帽は行き過ぎだったと批判している。
(頑固爺のコメント:戦前から1960年代初頭までは、中折れのソフトは米国東部における紳士の定番だった。そして、麻生氏のクラシックな毛皮えりのオーバーコートにクラシックな中折れ帽の組み合わせはなかなか粋だし、服装に関するルール破りをしたわけではない。WSJのコメントは、読者受けを狙った「茶化し」だろう。その後、麻生氏は中折れ帽を着用しなくなったが、めげずにかぶり続けてもらいたい)
https://matome.naver.jp/odai/2136109533865222401
トランプ大統領:
ネクタイがベルトの下までダラリと伸びており、だらしない印象。結び目が小さいとこうなる。ブリオーニの高級スーツを着ているにもかかわらず、安っぽく見えるのはオーバーサイズだから。服装以前に、太りすぎの体型もマイナス要素。自分の体型も管理できない自己抑制力がない人は、仕事もおろそかだと思われる。
(頑固爺のコメント:批判は的を射ている)
オバマ元大統領:
2014年、オバマ大統領(当時)はイラクとウクライナ情勢に関する演説の際、ベージュのスーツを着用し、メディアから「リゾート気分で政治をしているのか」と批判された。
(頑固爺のコメント:ベージュのスーツは確かにまずかった。しかし、オバマ氏は姿勢がよく、ベストドレッサーの一人だと思う)
小泉進次郎国会議員:
小泉進次郎氏のスタイルは極めて保守的。コンサヴァティヴなスタイルは誠実で謙虚な姿勢を表し、その安定したイメージは見る側に安定感を与えてくれる。着こなしを一つ一つチェックすると、すべてがルールに忠実に従っている。
(頑固爺のコメント:あまりにも優等生すぎて、面白みがない)
岸田元外相:
クラシックなスタイルが定番で、「装い」は控え目ながら、いつも身体にぴったりフィットしたスーツをエレガントに着こなしている。合格点。
(頑固爺のコメント:同感)
稲田朋美元防衛大臣:
防衛大臣就任式で、ストライプのリボンつきジャケットを着ていた。富士における総合火力演習では、ふわふわの飾りがついたインナーにピンクのジャケット、リボン付きの麦わら帽子といういでたち。ソマリアに海上自衛隊を視察に行った際は、Tシャツにキャップ、サングラスに青いバッグを肩から掛けて、まるでハワイに行く芸能人のような恰好だった。威厳と知性、安定感や厳格さといったイメージが求められる防衛大臣の装いとしては失格。
(頑固爺の意見:私もハラハラしていた。防衛大臣を首になって、ほっとした)
河野太郎外相:
2017年8月、フィリピンで行われた日中外相会議において、河野外相が深々とお辞儀しながら王毅外相と握手している写真が「環球時報」の第一面に大きく掲載された。頭を下げるという行為は、相手国に対して頭を下げることと同じ意味であり、対等な関係ではないというメッセージを与える。
(頑固爺のコメント:日本人はやたらとぺこぺこお辞儀をするから、こういうことになる。海外ではお辞儀しないように注意しよう)
安積氏のこの著作は、日本人が気づかない欧米社会の暗黙のルールを明快に説明している点で、ユニークかつ有益な情報だと評価する。ところで、本書のタイトルの一部「クスリと笑う」は適切ではない。「嘲笑する」であるべきだ。