韓国の反日的言動は以前よりも激しくなった。ことによると、学校教育にその原因があるのではないか。この仮説を確認するために、「韓国で行われている反日教育の実態」(崔碩栄著 平成26年 彩図社刊 以下、本書)を読んでみた。著者の崔碩栄(チェソギョン)氏は1972年韓国ソウル生まれで、韓国の大学で日本学を専攻し、1999年に渡日した人物である。
本書によって、韓国の歴史教科書は記述内容が徐々に変化していることが確認できた。あまり詳しく内容を引用すると著作権侵害となるので、二つだけ例をあげる。
わが民族は戦争に必要な食料や様々な物資を収奪され、私たちの若者は志願兵という名目で、あるいは徴兵制や徴用令によって、日本、中国、サハリン、東南アジアなどに強制動員され、命を失い、女性まで挺身隊という名前で連れて行かれ、日本軍の慰安婦として犠牲になった。(高等学校 国史(下)1998 国史編纂委員会)
それまでは「女性まで侵略戦争の犠牲にした」というような曖昧だった記述が、この時から「慰安婦」と表現されるようになった。
その後の慰安婦に関する記述には、かなりの事実誤認または歪曲がある。例えば、
1938年9月、真鍮の器を供出することを拒否し、姓名を日本式に変えなかった、という理由で家族が捕まった。里長(行政区域「里」の首長)が愛国奉仕隊に志願すれば父は釈放されるといったので志願したら、そのままジャカルタに慰安婦として連れていかれた。-韓国挺身隊問題対策協議会―(「高等学校 韓国近現代史」2002年 大韓教科書株式会社)
この記述は間違いだらけである。まず、1938年において、ジャカルタ(インドネシア)はオランダが支配していた。次に、「姓名を日本式に変えなかったという理由で、捕まった」とあるが、これは嘘っぱち。後年、「姓名を日本式にしても構わない」ことになったが、日本式姓名が強制された事実はない。「・・・そのままジャカルタに慰安婦として連れていかれた」となると、もうファンタジーである。
事実誤認または歪曲は歴史教科書だけではない。国語の教科書に次の記述がある。
「おじいさんの初恋」 -学生作品―
日本に国を奪われていた時代のことだそうだ。私たちの国の人々が、日本の巡査を虎よりも恐れながら暮らしていた時代があったんだよ。その時は本当にいろいろな噂が多かった。例えば、夜になると日本の巡査たちが村を歩き回る子どもを捕まえて、虎のオリに閉じ込めてしまうなんて噂もあったしさ。その時、日本の巡査たちが朝鮮女なら年齢に関係なく捕らえられていくという噂が流れた・・・」(『中学校国語2-2』飛翔教育社2012)
学生が書いた作文だから、内容自体の信ぴょう性は重要ではないと言えばそれまでだが、この文章を読めば学生は日本性悪説を脳裡に刻むことになる。「日本の巡査」という表現にも問題がある。日本統治時代の巡査は韓国人だったはずだが・・・。
道徳の教科書も例外ではない。『小学校道徳6-2』(1981)に、池錫永(じそぎょん)という学者が1900年頃に種痘法を朝鮮に導入し、天然痘を撲滅した逸話を載せている。その中で、「外国人が書いた『種痘亀鑑』という本を手に入れ・・・」とあるが、同書は久我克明という日本人が書いたものである。しかし、著者の名前を伏せて「外国人」と表現しているのは、日本にいいイメージを与えたくないからだろう。
音楽でも反日思想が植え付けられる。「鴨緑江行進曲」という長らく忘れられていた独立軍の軍歌が2004年になって、突然音楽の教科書に掲載されるようになった。歌詞にはかなり過激な表現があり、相手国は明記されていないが、日本であることは明らかである。
反日教育は学校だけが場ではない。公務員試験や「韓国史能力検定試験」でも日韓問題から多く出題される。なお、「韓国史能力検定試験」とは政府機関が実施する検定試験で、その試験で得た点数が、公務員・教員の採用試験や民間企業の採用試験にも適用される。
【頑固爺の所感】
私は韓国の反日的言動がエスカレートしているわけは、学校教育に原因があるのではないかと推測したが、その推測は当たりだった。
教科書の出版社としては、できるだけ多くの学校に採用してもらいたい。その目的を満たす方法は、反日に関する記述を増やすことである。その結果、中国よりも日本に関する記述が多いという実際の歴史とはかけ離れた教科書になった。
実は、私は韓国の反日教育がこれほど多角的に、かつ深く浸透しているとは知らなかった。一般国民はもとより大統領や裁判官も、こうした教育を受けているであろうことを思うと暗澹たる気分になる。
問題点は、本書の著者もその前書きで述べているように、韓国人は反日思想を植え付けられているとは考えていないことである。どいうことかと言うと、「反日思想」という言葉には、言外に事実を歪曲しているという含みがあるが、韓国人は学校教育等で受け入れた情報はすべて正しいと考えているのだ。したがって、韓国人が反日になるのは当然で、むしろ反日にならない方が不自然である。
韓国の歴史教科書は間違いだらけだが、その誤りを一つひとつ指摘しても、解決にはならない。なぜなら、日本悪玉説は韓国人のイデオロギーまたは宗教のようなものだから、ひとつの誤りを正しても、それは枝葉末節のことに過ぎないのだ。
だからといって、明らかな間違い(例えば、解決済の徴用工問題の蒸し返し)を看過するわけにはいかない。根気よく一つひとつその都度、潰していくしかないであろう。