円安が進行して、輸入品が高くなった。では米国産のコメを今の為替レートで輸入したらどうなるか。ロサンゼルス在住の友人にコメの小売価格を調べてもらって、1ドル120円で換算したら下の表のごとくになった。
本論に入る前に、表の説明をしておきたい。
「田牧」はわれわれが日常食べている短粒種の銘柄の一つで(ほかに「玉錦」という銘柄がある)、超特選米(Super premium rice)と呼ばれている。値段が高いので需要は限定的であり、超高級寿司店や日本企業の駐在員の家庭が主なユーザー。
「国宝」と「錦」は中粒種の人気銘柄で、特選米(Premium rice)と呼ばれ、一般の日本食レストランや日本人・日系人家庭で使用される。米国在住時、私の家庭でもこの品種を食べていた。よくよく見較べれば短粒種より多少長いことはわかるが、食味での差は感じられない。
「白菊」はCalrose riceという品種で、標準米と呼ばれる。炊いてから時間が経つと水分がなくなりパサつく欠点があり、これを改良したのが特選米。日系人や一部の日本食ファーストフード店が主なユーザーで、そのほかビールの原料にかなり使用される。
米国のスーパーで販売されるコメは通常15ポンド入り(6.8キロ)で売られており、表のドル表示も15ポンド入りの袋の価格である。2013年3月にも同じ調査を実施しており、左側はその当時の価格で、右側が現在の価格。銘柄によってかなりバラつきがあるが、2-3割上がっていることがわかる。その右の≪円換算キロ当たり≫とは、現在のドル価格を1ドル120円で換算したキロ当たり価格であり、その右の≪円換算5キロ当たり≫とは日本では通常5キロ入りの袋に入って販売されているので、キロ当たり価格を5倍したもの。その右の≪1.1倍≫とは、米国産を輸入すると運賃などの経費がかかるので、それを10%として加算したもの。
以上の諸点を理解していただいて、本論に入る。
日本で販売されているコメの小売価格はほとんどが、5キロ当たり1,500円から3,300円の価格帯に収まる。高いものは新潟県魚沼産で、安いものは国内ブレンド米と称されるもの。≪コメ小売価格≫で検索すると、いろいろなサイトが出てくるが、たまたま目についた西友の価格(いずれも5キロ入り)は次のようになっている。
秋田こまち 1,390円
新潟県産こしひかり 1,750円
新潟県魚沼産こしひかり 2,850円
国内ブレンド米 1,190円
この価格を表に記載された価格と比較すると、総じて日本産の方が安いことがわかる。かりに錦ブランドが1,577円で、秋田こまちが1,390円で売り場に並んでいれば、ほとんどの人が秋田こまちを選ぶのではないか。
そして、上記の日米のコメ価格に関する考察には、キロ341円(玄米ベース)の輸入関税を考慮していない。つまり、関税がゼロでも国産米の方が安い!
どうしてこんなことになったのか。一つには円安であり、もう一つの要素は米国での値上りである。去年の日本の作柄は平年並みだったから、日本の小売価格が下がったということではない。
結論として言えることは、コメはTPP交渉における争点ではないということである。