昔から東海道の難所として名高い大井川に沿って走るSL(Steam Locomotive)。その車窓から眺める渓流と、里山や茶畑の田園風景は心が和む。
乗務員がハモニカで、「汽車ポッポ」や「茶摘みの歌」など昔の唱歌を聞かせてくれる。
中央に見えるドアに「三等車」と書いてあることに注意。建造は昭和10年代だろう。
♪夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘じゃないか
あかねだすきに菅(すげ)の笠
終点の千頭(せんず)でトロッコ列車に乗り換えると、風景は一変する。切り立った崖の中腹を走る列車の遥か下を流れる谷川や湖の景観は素晴らしい。
樹木と湖水が織りなす各種の緑色の壮大なコラボレーション
選んだ宿泊地は、千頭から峠を越える寸又峡。南アルプス登山の起点でもある。ガイドブックには「秘境寸又峡」とあるが、千頭から路線バスで僅か40分だから「秘境とは少し大袈裟ではないのか」と思っていたが、現地の道路事情を見て納得した。
道路が山裾に沿ってうねうねと曲りくねって見通しが悪い上に、道程の八割ほどは1車線しかない。曲がり角に設置されたミラーで、対向車の状況を確認しなくてはならない。対向車が来ると、数十メートルごとにある退避所でやりすごすか、時には退避所までバックする。対向車が1台ならまだしも、数台だったら渋滞が発生するだろう。寸又峡観光の団体バスツアーがないのは、交通事情に原因があるのではないかと推測する。
宿で聞いた鶯の鳴き声は、下界と違ってホーホケキョイで、それも甲高い。出発前のプランでは、タクシーで近くの大吊り橋を見物する予定だったが、、「タクシーは千頭から呼ぶことになります。それに、道路はこの先3百メートルで終わりで、その先は徒歩になります」と聞いて断念。
翠紅苑
「秘境」という形容は正しかった。