「クール・ジャパン」は私が見る数少ないTV番組の一つである。たまたま図書館で「クール・ジャパン!?」(講談社現代新書2015年3月刊 鴻上尚史著)という本を見つけて、「えっ、こんな本があるとは知らなかった」とさっそく借りてきた。
寡聞にして鴻上尚史氏がいかなる人物か知らなかったが、この本を読んで彼が演劇活動からスタートし、映画監督や著述分野など幅広い分野で活動している方だということを知った。そして、英国に留学経験があることから、英会話に堪能である理由も分かった。
さて、外国人が「クール・ジャパン」と評価しているものは何か。放送100回記念番組(2009年)の時に、外国人100人を対象に実施したアンケート調査によるベスト20は次のようであった。
1.洗浄装置付き便座
2.お花見
3.百円ショップ
4.花火
5.食品サンプル…海外のレストランではメニューや写真を展示するだけであり、本物そっくりに作られた食品サンプルが珍しく、お土産としても人気がある。
6.おにぎり…コンビニで簡単に買えることから人気がでた。
7.カプセルホテル…これがクールとは驚きだが、ハイテク・ジャパンの象徴のような存在らしい。
8.盆踊り
9.紅葉狩り…外国では木の葉を愛でる習慣はない。しかし、日本の秋の葉は、赤・黄色・黄緑とバリエーションが豊かであり、その美しさを理解するらしい。
10. 新幹線
11. 居酒屋…欧米では食事はレストラン、飲むのはバーとはっきり分かれているが、居酒屋はその中間。そしてメニューが多彩で、しかも安い。
12. 富士登山…山を神秘的なものとして崇めることは欧米では考えられない。
13. 大阪人の気質…内気で思ったことを口に出さないという一般的日本人の気質と大阪人の気質は違う。
14. スーパー銭湯…外国人は湯船につかる快適性を日本で初めて知る。
15. 自動販売機…種類が多いことと、どこにでもあることに驚く。日本の治安のよさを示すことでもある。
16. 立体駐車場
17. ICカード乗車券
18. ニッカボッカ…土木作業員や鳶職が穿くダボッとしたズボン。特殊な形がかっこいいらしい。
19. 神前挙式
20. マンガ(喫茶)…外国人は日本文化をマンガで学ぶ。そのマンガを好きなだけ読めるのはクール。
だいたい「そうだろうね」と思うことが多いが、「大阪人気質」は意外である。これがどういうことなのか、東京人はもとより、大阪人さえもわからないと思うので、番組スタッフが大阪で行った実験の結果を本文から引用する。
やることは簡単。外国人が、町を歩く大阪人に突然、葵の印籠を見せて「コノインロウガメニハイラヌカ!?」と、たどたどしい日本語で言うだけです。日本に住んでいる人ならみんな知っている水戸黄門のパロディーです。呆れたことに、いえ、驚いたことに、印籠を突き付けられた大阪人は、9割近い人が、「ははぁー」とひれ伏す真似をしました。・・・東京では、誰一人やってくれませんでした。
私も知らなかった大阪人と東京人の差である。
さて、鴻上氏は、著作「クール・ジャパン!?」の中で、ベスト20以外にも「おもてなし」、「食べ放題・飲み放題」、「宅配便」、「コンビニ」、「駅弁」、「調理パン」、「ラーメン」、その他数多くのテーマを論じている。私は「クール・ジャパン」はもうタネ切れで、終わりにするか、タイトルを変えるしかないと思っていたが、まだまだ続きそうだ。
ともあれ、著作「クール・ジャパン!?」はTV番組の総括であり、裏話でもあるが、それにとどまらず日本文化論になっている。だから面白い。
ところで、「クール・ジャパン」含め、日本人または日本文化を礼賛するTV番組がずいぶん増えた。日本を礼賛するのはいいが、外国人から見ればネガティヴな文化もあり、後者をもっと取り上げるべきである。
例えば、「ゆるキャラ」。多少ならいいが、増え過ぎた。各都道府県や市がそれぞれ「ゆるキャラ」を持っているが、あれは日本人を幼稚だと思わせる。それから、風邪をひいたときに着用する白いマスク。あれは外国人には異様に映り、「えっ、また原発に不具合が発生したの?」とか「なにかの伝染病が蔓延してるの?」(笑)なんてことになる。
「かっこいいジャパン」と「(日本では当たり前でも、外国人から見れば)みっともないジャパン」をバランスよくミックスして、日本の実態を理解させるべきではないのか。