本日(1月31日)、WHO (World Health Organization)はコロナウィルス案件を緊急事態とすると発表した。22-23日に緊急事態宣言を保留したことを撤回した措置である。「保留」とした時点でのテドロス事務局長の説明は「いまだ人から人への感染は、中国以外では、確認されていない」だったが、それは理屈に合わない。
なぜなら、「中国では人から人への感染が確認されていたのだから(12月中旬)、中国以外にコロナウィルスが拡散した現在、その国でも人から人への感染が発生するはずだ」と考えて当然だからである。そんなことは専門家でなくても(頑固爺でさえも)、わかることだ。「WHOは中国に配慮しているな」と感じた人は多かっただろう。
遅きに失した緊急事態宣言だが、テドロス事務局長は次のように発言している(赤字)。
新型の病気が過去にないほどの大流行につながっている。だが、中国の対応も過去にないほど素晴らしい。中国の尽力がなければ中国国外の死者はさらに増えていただろう。中国の対応は感染症対策の新しい基準をつくったともいえる。
私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020013100172&g=int
まったく“よく言うよ”である。武漢が封鎖されたのは1月23日であるが、春節ということもあり、封鎖前に数百万人(500万人という説もある)が市外に移動していたはずで、それらの人々がすでに各地でウィルスをまき散らしていたと思われる。さらに、初期段階で新型ウィルスの出現を中国当局が隠蔽した形跡もある。誰が考えても、中国の対応は賛辞に値するものではなく、テドロス事務局長のコメントは的外れである。
さらに、「我々は国際的な貿易と渡航の制限を勧めない」というコメントも笑止千万。すでに中国への渡航を禁止した国がいくつかあるし、航空会社は客が少ないと判断すれば、便を減らすから、国による制限と同じことである。関係各国・企業はWHOのコメントに先立って、WHOの意向と真逆の行動を起こしているのだ。
WHOのコメントが“中国の意向を反映したもの”であるのは明らかだが、その背景には中国が“一帯一路”戦略の一環として、テドロス氏の出身国エチオピアに鉄道敷設にかかわる巨額の投資をしている事情がある。
こんなWHO なら、存在すること自体が国際社会に害を及ぼす。今後、国連加盟国でその存在価値が議論されるのではないか。