熱海のホテル・ニューアカオの送迎バスの運行数は、宿泊施設中で最多である。それは、熱海の宿泊施設でもっとも客が多いことでもある。朝9時から夕方5時まで(12時台は除く)30分おきに出発する。しかも、ラッシュアワーにはバスが2台~3台になる。火曜日の夜、5時半の第1回目の夕食時に350人ほどの客がいたから、7時半の第2回の客も含めると一晩の宿泊客数は平均500人を超えるだろう。ちなみに、外国人(特に白人)は非常に少なく、1割もいない。
●ニューアカオ人気の理由
人気の理由はまずローケーション。建物が海に突き出た岬に位置し、建物の後ろには奇岩が入り組んだ錦ヶ浦。外側が総ガラス張りの1階大広間(ダイニングルーム)の目の前にライトアップされた奇岩があり、食事する客の目を楽しませる。

最上階のロビー(17階)から熱海市街全景を見渡せ、その夜景はまさに圧巻。熱海の市街全体が斜面にあるから、夜景が立体的である。香港の夜景も見事だが、熱海の夜景には及ばない。

次に、客を楽しませる仕掛けがいろいろ工夫されていること。ディナーショウが毎晩2回催される。この数カ月は、3人のメキシコ人が歌と踊りを披露している。華やかで躍動的なステージは、ラスベガスのディナーショウを連想させるが、ラスベガスでは客が盛装しているのに対し、ここでは客は浴衣に半天、スリッパだから、雰囲気は大違いだが・・・(笑い)。ショウに出演した芸人が、9時過ぎから小さなバーに出演する。


食後に、夜の街ツアーがある(無料)。来宮神社に参拝したのち、丹那トンネル、寛一お宮の銅像などを見物し、最後に高台にある熱海城から夜景を眺める。
すぐそばにアカオ・ハーブ&ローズガーデンがあり、玄関前からシャトルバスが運行されている。相模湾を眼下に見る壮大な景色がウリである。
ニューアカオの呼び物はもう一つある。それは崖の上に最近オープンした別棟の大浴場。日の出や月光に照らされた大海原を眺めながらの湯あみは格別である。

ニューアカオの泣き所は、トイレが恐ろしく狭いこと。便器に座ると、鼻の先数センチのところにドアがある。建物が古いからだろう。(ただし、この問題は私の部屋(洋室)だけのことだった可能性もある)
●割安価格
実は、ニューアカオに行ってみることになった動機は、ロケーションでもなければ、ディナーショウでもなく、低価格である。“夢やど”の宣伝チラシでは、一泊2食つきで税前9,800円。これでエンタテインメントつきとはメチャクチャ安い。ただし、“夕食はライトミール”となっているから、量が少ないということだろう。“ライト”でなく、“フル”だと税前で12,500円だから2,700円高い。
そこでワイフとも相談の上、初日は“ライト”、二日目は“フル”で予約した。ところが、初日の“ライト”でも満腹になったので、“フル”はとても食べきれないと思ったが、結果的には“ライト”も“フル”も量的にはほとんど差がなかった(料理の献立が違うから正確には比較できない)。
では、“ライト”と“フル”の差はなにか。第一に席の位置が違う。初日は入り口のすぐそばで、舞台を横から見るテーブルだったが、二日目は舞台の真正面で、岩に砕ける白波が目の前に見える窓際のテーブルだった。第二に、“ライト”ではチェックアウトが10時、“フル”では11時。要するに、“ライト”と“フル”の差は料理の量ではなく、待遇だったのである。
帰宅してから、改めてニューアカオの料金を調べたら、14,000円とか16,000円などいろいろある。料金体系はかなり混乱している。それはともかく、超安値は確かに存在し、それが客数増加のひとつの理由に違いない。
●熱海の復活
ニューアカオの立地条件は昔から変わっていないし、かなり前からディナーショウもあった。だから、最近のニューアカオの繁盛ぶりは熱海自体の復活にも影響されていることは間違いない。
半世紀前、熱海は社員旅行のメッカだったが、いつしかダサい温泉街に成り下がっていた。熱海復活の理由は長くなるので省略するが、熱海が注目されるようになったお蔭で、ニューアカオの薄利多売方式が可能になったと考えられる。