以下は最近私が読売新聞の投書欄に投稿した原文である。読売新聞には採用されなかったので、数日置いて同じものを朝日新聞にも送ったが、やはり掲載されなかった。
国際競争力がある日本のコメ
米国産の新米価格をロサンゼルスの日系スーパーで調べたところ、日本食レストランが使用している中粒米は、15ポンド入りで$15.98 (国宝ブランド)~$17.88 (錦ブランド)であった(昨年も同じ水準だったから、本年度産が例外的に安いということではない)。これを1ドル120円で換算して、日本の標準的包装単位の5キロ入りに直すと1,409円~1,577円。さらに、われわれが日常食べている品種の短粒米はこの3割ぐらい高い。
一方、国産の新米の小売価格(5キロ入り)はコシヒカリで1,450円前後であり、銘柄によっては1,300円以下も見受ける。つまり、日本のコメの価格は高いどころか、品質差を考慮すればむしろ割安。生産者はTPPによる輸入量増加に脅えることなく、むしろ輸出拡大に努力すべきである。
TPP合意により、日本は米国産と豪州産のコメに対し、無税での輸入枠を78,400トンに設定した。その前提は、日本の主食用のコメを生産しているTPP参加国は米国と豪州であり、両国の生産コストは日本を大幅に下回るから、国内のコメ農業を保護するために輸入量を制限しなくてはならない、ということだろう。
確かに2012年までは国産米の価格は外国産に太刀打ちできなかった。しかし、その後、米国と豪州における価格上昇、円安、国産米の値下がりによって状況は大きく変化して、上掲の投書にあるように、今や国産米は無税でも他国産に十分対抗できるようになっている。だから、せっかく輸入枠を設定しても、その枠が消化されない可能性が高い。
それどころか、日本のコメは香港・上海・シンガポールなどの国際市場において、価格的に十分競争力があるはずだ。さらに、品質差と日本産というブランド価値を考慮すれば、マーケティングにおいて格段に有利な立場にある。
こんなことは農林水産省も十分承知しているはずで、勘繰れば危機感を煽ることで、コメ農業保護に多額の税金を投入することを正当化しているのではないか。
一方、メディアには、国産米は価格競争力がないという先入観があって、外国の実情を調べようとしていないのではないのか。私の投書は大手新聞にとってメンツ丸つぶれになるので、無視しているのではないか。私の投書の内容は投書欄に掲載するには適切なテーマではないかも知れないが、それならそれで担当部門に私からの情報を連絡して実情を調べさせ、記事にすべきであるが、そんな形跡もない。
いろいろと合点がいかぬ話である。
蛇足だが、輸入枠設定それ自体は適切である。その理由は、円安は恒久的なのものではないし、コメの作柄は日本でも外国でも毎年変化するから。万一に備えて防波堤を作っておくことは必要である。