頑固爺の言いたい放題

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国際競争力がある日本のコメ

2015-11-21 15:22:44 | メモ帳

以下は最近私が読売新聞の投書欄に投稿した原文である。読売新聞には採用されなかったので、数日置いて同じものを朝日新聞にも送ったが、やはり掲載されなかった。

国際競争力がある日本のコメ

米国産の新米価格をロサンゼルスの日系スーパーで調べたところ、日本食レストランが使用している中粒米は、15ポンド入りで$15.98 (国宝ブランド)~$17.88 (錦ブランド)であった(昨年も同じ水準だったから、本年度産が例外的に安いということではない)。これを1ドル120円で換算して、日本の標準的包装単位の5キロ入りに直すと1,409円~1,577円。さらに、われわれが日常食べている品種の短粒米はこの3割ぐらい高い。

一方、国産の新米の小売価格(5キロ入り)はコシヒカリで1,450円前後であり、銘柄によっては1,300円以下も見受ける。つまり、日本のコメの価格は高いどころか、品質差を考慮すればむしろ割安。生産者はTPPによる輸入量増加に脅えることなく、むしろ輸出拡大に努力すべきである。

TPP合意により、日本は米国産と豪州産のコメに対し、無税での輸入枠を78,400トンに設定した。その前提は、日本の主食用のコメを生産しているTPP参加国は米国と豪州であり、両国の生産コストは日本を大幅に下回るから、国内のコメ農業を保護するために輸入量を制限しなくてはならない、ということだろう。

確かに2012年までは国産米の価格は外国産に太刀打ちできなかった。しかし、その後、米国と豪州における価格上昇、円安、国産米の値下がりによって状況は大きく変化して、上掲の投書にあるように、今や国産米は無税でも他国産に十分対抗できるようになっている。だから、せっかく輸入枠を設定しても、その枠が消化されない可能性が高い。

それどころか、日本のコメは香港・上海・シンガポールなどの国際市場において、価格的に十分競争力があるはずだ。さらに、品質差と日本産というブランド価値を考慮すれば、マーケティングにおいて格段に有利な立場にある。

こんなことは農林水産省も十分承知しているはずで、勘繰れば危機感を煽ることで、コメ農業保護に多額の税金を投入することを正当化しているのではないか。

一方、メディアには、国産米は価格競争力がないという先入観があって、外国の実情を調べようとしていないのではないのか。私の投書は大手新聞にとってメンツ丸つぶれになるので、無視しているのではないか。私の投書の内容は投書欄に掲載するには適切なテーマではないかも知れないが、それならそれで担当部門に私からの情報を連絡して実情を調べさせ、記事にすべきであるが、そんな形跡もない。

いろいろと合点がいかぬ話である。

蛇足だが、輸入枠設定それ自体は適切である。その理由は、円安は恒久的なのものではないし、コメの作柄は日本でも外国でも毎年変化するから。万一に備えて防波堤を作っておくことは必要である。


ラーメン・ブームの背景を考える

2015-11-02 08:39:39 | メモ帳

欧米でラーメンがブームらしい。日本文化が世界で認められることは嬉しいことだが、ラーメンがなぜ人気を呼ぶのか。

もちろん美味しいからに相違ないが、寿司がブームになって何十年も経ってから、ラーメンがブームになったのはなぜなのか。私は某商社を早期退職後2006年までの10数年、ロサンゼルスで日本食レストラン業界向けの情報誌を発行していたので、当時の資料から最近のラーメン・ブームの背景を振り返ってみたい。

1975年ごろ、ニューヨークに「札幌ラーメン・どさんこ」が華々しく登場し一時9店舗になったが、90年代半ばに撤退した。ロサンゼルスでも日本のモスバーガーが「ミコシ」というネーミングでラーメン店チェーンを始めたが、数年で消えた。

それ以前にもラーメンがアメリカになかったわけではない。それは、おなじみのインスタント・ラーメン。日清食品が1970年にアメリカで現地生産を開始、その数年後マルチャンが追従して、熾烈な戦いを繰り広げていた。だから、ラーメンそのものは既に認知されてはいたのだが、ラーメン専門店の追い風にはならなかったのである。

レストランで提供されるラーメンに類似の料理としては、チキン・ヌードル・スープがあったが、ラーメンとはまったくコンセプトが異なる。中国料理店には柳麺または拉麺というスープ麺があったが、スープにコクがないし具も貧弱で、グルメ界の注目を引く存在ではなかった。

後年、ベトナム料理のフォーという野菜がたくさん入ったスープ麺が多少評判になったが、健康志向に凝り固まったごく一部の人々だけのものだった。

一方、1976年ごろにはじまった寿司ブームは、2000年ごろにはアメリカ全土隅々まで広まった。しかし、アジア系人の参入によって質の低下が懸念され、次のスターの開発が日本食業界の課題となっていた。

それでも、ラーメンについては否定的な意見が支配的だった。

「値段がインスタント・ラーメンの30倍から40倍では、味オンチで値段ばかり気にするアメリカ人には受けるはずがないよ」

「スープ麺はしょせん前座の料理。ディナーのメインにならないからね」

「アメリカ人はズルズルと音を立てて吸い込む作業ができないんだ」

「日本食ファーストフードなら、寿司やチキン・テリヤキ丼があるし、経営者はなにもラーメンで冒険する必要はないだろう」

それでもラーメンに挑戦した専門店があった。熊本に本拠がある「味千」である。2001年にニューヨークのチャイナタウンにアメリカ第一店をオープンした。しかし、数年間はパッとせず、苦労したらしい。

風向きが変わったのは2004年に「ミンカ」がオープンしたとき。当初は客の半分以上が日本人を含むアジア系だったが、ニューヨークタイムスに紹介されて白人客が増え、たちまち6割ほどが白人になった。
 
「ギョウザを肴にビールを飲み、つぎにラーメン。それでは足りずにシソ振りかけご飯を注文する人もいます。アメリカ人に人気があるのは豚骨ラーメン($8.0 現在の為替レートで1,020円)です」(オーナーシェフの鎌田成人氏談)。

「ミンカ(Minca)」の成功の鍵は豚骨スープを採用したこと。コッテリしたスープがアメリカ人に受けたのである。そして、ラーメン・ブームの土台が出来上がったところで、2008年に出店したのが「博多一風堂」。「味千」も勢いづき、カフォルニアに出店を開始した。今では両者ともアメリカでの成功を足掛かりとして、欧州・アジア諸国に出店の輪を広げ、堂々たるグローバルチェーンにのし上がった。

寿司の次のスターはラーメンだったのである。この二品目が中心となって、日本食全体の人気をさらに拡大することだろう。