二階博自民党幹事長は27日、TV番組で「円満な外交を展開できるよう韓国にも努力は必要だが、まず日本が手をさしのべて、譲るところは譲るということだ。我々はもっと大人になって、韓国の言い分もよく聞いて、対応していく度量がないとダメだ」と述べた(読売新聞)。
この報道に接しての頑固爺の所感は「この発言はまずいぞ。日本に譲歩する余地があるとは思えない。韓国は図に乗ってさらにボイコットを強化するのではないか」である。
実際に、この件に関して韓国の中央日報は「彼(※二階氏)が積極的な両国関係の改善を主張したことは、“韓国内の日本製品不買運動、日本旅行を避ける動きに起因する交流断絶、これによる日本経済への直接的な打撃が理由だ”という観測が出ている。・・・観光客の減少と関連して、日本政府は、表面上は「他の国の観光客が増えて大丈夫」と平気なふりをしているが、内部的には戦々恐々としている」(シンシアリー氏のブログより引用)。
要するに、この記事は、韓国の日本ボイコットが効いてきて、日本に軟化に兆しが見える、という解釈である。
では、日本が二階幹事長の言うように「まず手をさしのべてやる」として、それは“徴用工”案件か、それとも“輸出管理”案件か。前者では日本が歩み寄る余地はないが、頑固爺は後者について日本は論理的に不利な状況にあると案じている。
日本はこの事案を「輸出管理優遇措置の終了」と主張しており、その根拠は“不適切な事例があった”である。しかし、その事例を具体的に指摘していない。
一方、韓国は“輸出規制に関する国際的な取り決めを忠実に履行してきたが、日本側が政治的な目的で韓国に対し、一方的かつ恣意(しい)的な規制措置を取った。…多国間協力に基づいた輸出管理の発展のため、日本の措置は撤回されなければならず、2国間の問題を超え、国際的な枠組みでの議論が必要だ”と主張している(オーストリア・ウィーンで23~27日に開かれたワッセナー協約*の専門家会合―9月30日付朝鮮日報)
この応酬を見るかぎりでは、日本は不利な状況にあることは間違いない。その理由は、“不適切な事例”を具体的に指摘していないこと。“不適切な事例”を具体的に説明することは、横流しを期待する国に手の内を見せることになるので、あえて言わなかったのであれば筋は通る。しかし、それならそう言うべきだ。
一方、輸出管理の書類審査が軌道に乗れば、サムスンやSKハイニックスなどの実需筋には商品が円滑に行きわたるようになるので、日本ボイコットの大義名分が消滅するはずである。つまり、妥協するのではなく、実際の事務処理で韓国に文句を言わせないようにする・・・これが日本にとって最善の策だと考える。「まず日本が手を差しのべる」必要はないのである。
ところが、財務省が発表した8月の貿易統計によれば、同月における韓国向けフッ化水素の輸出はゼロだった。
輸出管理の厳格化は7月上旬に始まっており、書類審査には最長3ヵ月を要するという触れ込みだったから、輸出管理の円滑化は9月にずれ込んでいるのかも知れない。それならいいが、9月の輸出統計の結果いかんでは、日本は苦境に陥ると懸念する。
*(注)ワッセナー協約とは、1996年に設立された通常兵器や関連技術の輸出管理を目的にする国際枠組み。