維新の会・橋下徹大阪市長は15日、旧日本軍の従軍慰安婦を必要だったとした自らの発言について「(慰安婦を)容認はしていない。あってはならないことだ」と釈明。安倍晋三首相が橋下氏の発言を「全く違う」と国会答弁したことに関し「日韓基本条約に基づき、法的に解決済みと言っていることの方が元慰安婦を傷つけている」と批判した。「解決済みではない」のは事実だ。だが、「解決済みではない」ということは、橋下が否定していたはずの「強制」を認めていることになるはずで、その二枚舌はおかしい。これまでの発言について「元慰安婦を傷つけているとは思わない」というが、「強制」の事実に目を瞑るなら、相手を確実に傷つけているだろう。また、「欧米諸国が自由恋愛の名の下に、現地の女性を使っていたのも事実だ。日本だけを不当に侮辱している」と強調したというが、具体的に何のことを言っているか示さなければ、じっさいに「自由恋愛」であった人たちを貶めているであろう。また、橋下市長はツイッターで「批判者は、風俗業=売春業=性行為と短絡的に考えているね。日本人は賢いから、性行為に至る前のところで、知恵をこらしたサービスの提供を法律の範囲でやっているよ。そして今の日本の現状からすれば、貧困からそこで働かざるを得ないと言う女性はほぼ皆無。皆自由意思だ。だから積極活用すれば良い。」というが、「ほぼ皆無」なる日本語の駄目さはさておき、文脈上この人は「法律の範囲内を装った実質的な売春」=「違法行為」を肯定しているわけだ。そして信じがたいことに「貧困」がこの国にじゅうぶんに存在していることについて知らない振りをしている。そしてこの場合、「日本人は賢いから」は、「日本人はずる賢いから」という意味にしかとれない。……米空軍の性的暴行防止対策班の責任担当官が性的暴行容疑で逮捕されていたことが、最近、分かった。同容疑者は解任された。彼は米国防総省近くの駐車場で女性の体を触るなどの行為におよび、抵抗した女性が警察に通報し、現場付近で逮捕されたという。警察によると二人に面識はない。この男は橋本市長が言うように「風俗を活用する」ことを「選択」すればよかったのか? 否、そうではない。こういう場合に明瞭なのは、彼は間違いなく「駐車場で見知らぬ女性の体を触る」ということを、したかったのである。「風俗」は何ごとも解決しはしない。そういう単純な理屈がわからない振りをするのは、まやかしである。……なんだか知ったかぶりで「性欲」を肯定することや考えの浅い「建て前・本音論」による「橋下市長に対する擁護派」がネット上などで増えているようだが、頭が悪すぎる。「差別」に抗する平等と民主主義の常識というものがある。「性欲の解消の道具」とされる人間が存在させられることを肯定しているという一点で、ほんらい、既にアウトなのである。ここまでの発言をすれば国によってはとうに辞任か更迭させられているはずで、これが許されているということは、この国の鈍感さの蔓延を認めなければなるまい。
報道によれば、南こうせつの、東京・日比谷野外音楽堂でのコンサート中盤、「サプライズゲスト」として「親交のある」安倍晋三首相が登場。「当初はあいさつだけの予定だった」そうだが、2人で「あの素晴しい愛をもう一度」を「熱唱」したという。こうせつが「これ以上すごい人はいない。ご紹介します。内閣総理大臣、安倍晋三!」と紹介。雨の降りしきる中、「バックコーラス代わりにSPを引き連れて」ステージに立った。「フォークソング好きなんですよね」と南に振られ「好きなんです」。夫人が大の南ファンという縁で親交が始まったそうで、カラオケにも一緒に行ったことがあるそうだ。「女房には絶対歌うな、と言われたけど、ここは度胸で」と約5分間、フルコーラスで歌い終わった安倍首相は、「サンキュー!!」と叫んで締めくくったそうだ。……感想はない。最悪の首相を「すごい」と言い、自分のコンサートを「カラオケ」に貶めたこの人は、「終わったな」と思うだけだ。南こうせつという歌手にとくに思い入れがあるわけではないが、私の十代の頃の人気歌手ではある。がっかりというのでもない。この国の感性というか、常識というか、そういうものがどんどん滅んでいるのだということを、改めて感じただけだ。たぶんほとんどの人が「別にいいんじゃない?」と思っているだろうことも、うんざりだ。今の若い人は信じないだろうが、七十年代のフォークというのは、基本「反骨」だったのだ。南こうせつはそういう意味では初めから浮いていたのだが。「四畳半フォーク」でも、なにがしか「存在」を賭けている人はいた。まあ、「アンチTV」だったロック歌手も、今やだいたいテレビCMに出ているし、と思うべきなのか?! それにしても南こうせつは、安倍首相のどこを見て、「これ以上すごい人はいない」と思っているのだろうか。……私は保坂展人世田谷区長と親しいというか、出馬時の推薦人の一人なので、その後もいろいろ親しくさせていただいている。いろいろな課題を共有している。公演のアフタートークに出ていただくことはあるし、ダムを題材にした芝居なので『帰還』でもお願いしているが(下北沢ザ・スズナリ 6月7日夜7時の回)、けっして舞台俳優として出演していただくことはないだろう。ご本人もそのつもりはないだろうけれど!
日本維新の会共同代表・橋下徹大阪市長は米軍普天間飛行場を視察し同飛行場の司令官と面会した際、「風俗業を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」「もっと日本の風俗業を活用してほしい」と促した。司令官は「米軍では禁止されている」などと取り合わなかったという。……橋本市長は同日、「村山談話」についても触れ、「「侵略」に学術上きちんとした定義がないことは安倍首相の言う通り」「日本は敗戦国。敗戦の結果として、侵略だと受け止めないといけない」とした。「実際に多大な苦痛と損害を周辺諸国に与えたことも間違いない。反省とおわびはしなければいけない」と言いつつ、「事実と違うことでわが国が不当に侮辱を受けていることに関しては主張しないといけない」と、本質的には「侵略」を否定したい意志を明らかにしている。……従軍慰安婦問題も、「意に反してそういう職業に就いたということであれば配慮しなければいけないが、なぜ日本だけが取り上げられるのか。慰安婦制度は世界各国の軍が活用した。朝鮮戦争やベトナム戦争でもあった。銃弾が飛び交う中で命をかけて走っていく時に、精神的に高ぶっている猛者集団に休息をさせてあげようと思ったら、慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる。なぜ、日本の従軍慰安婦制度だけが取り上げられるのか。当時は世界各国が持っていた。ベトナム戦争でも朝鮮戦争でも制度としてあった。韓国とかの宣伝の効果で欧米社会に「日本はレイプ国家だ」とみられている。日本は国をあげて強制的に慰安婦を拉致し、職業に就かせたと世界は非難している。だが、2007年の(第1次安倍内閣の)閣議決定では、そういう証拠がないとなっている。暴行、脅迫をして拉致した事実は裏付けられていない。事実と違うことで日本国が不当に侮辱を受けていることにはしっかり主張しなければいけない」「当時の状況で(慰安婦制度を)活用していたのは事実。自らの意思でそういう職業に就いた人もいたでしょうし。現代社会だって風俗業が職業としてある」「意に反して慰安婦になったかどうかは別にして、軍の規律維持のために、慰安婦制度は当時は必要だった」「意に反して慰安婦になったのは戦争の悲劇の結果。戦争の責任は日本国にもある。慰安婦の方には優しい言葉をしっかりかけなければいけないし、優しい気持ちで接しなければいけない」「今は認められないが、慰安婦制度じゃなくても、風俗業は必要。普天間飛行場に行った時、「合法的に性的なエネルギーを解消できる場所が日本にはある。もっと風俗業を活用してほしい」と言ったら、米海兵隊司令官は凍り付いたように苦笑いして「米軍では禁止の通達を出している。これ以上、この話はやめよう」と打ち切った。「そういう建前みたいなことを言っているからおかしくなる」と伝えた。そういうものを真正面から活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーはきちんとコントロールできない」「米軍も活用した。沖縄の占領時代も、日本人女性がそういう商売に携わっていたのは事実。いいか悪いかは別として、あったのは間違いない。なぜ世界で日本が非難されているか国民はもっと知っておかないといけない。軍や政府が国を挙げて慰安婦を暴行脅迫拉致したという証拠が出れば、日本国として反省しないといけないが、今のところはそういう証拠はないと政府が閣議決定している」「(米兵による)事件が収まる因果関係があるようなものではないが、活用を真っ正面から認めないとダメ。兵士は命を落としかねない極限状況に追い込まれており、そのエネルギーを発散させることを考えないといけない」などと述べた。……このブログは日々の覚え書きも兼ねているのでニュースの引用をすることは多々あるわけだが、橋本市長のツイッターも記そうかと考えたものの、やめた。ちょっとうんざりだ。彼はツイッター上で「インドネシアでは日本の軍人がオランダ人女性に売春を強制した事件がある。これはもちろんダメだ」と認めている。ならばなぜ他の国のことも認めないのだろう。ともあれ、橋本市長の場合は、繰り返し引用したものを見ていくと、一貫した論調はわかる。コメントを付け加える必要もない。だが、日本での慰安婦問題に関する保守派の論調にある「(表だって国を挙げての)狭義の強制連行はなかった」という主張は、言い換えれば、「当時の法制や慣行に則した広義の強要はあった」ということであり、要するに、やっていたと堂々と認めているという意味になる。「交戦地帯における兵士相手の管理売春の強要」を「狭義の強要よりは反道徳的ではない」と主張していることじたいの恥ずかしさは、多くの人が指摘しているとおりだ。そして、橋本市長がこうした発言を沖縄に関連してすること自体の差別性に気づいていないということは、指摘しておきたい。また、「敗戦したのだから侵略だったと受け入れるしかない」とか、戦争に関連して恣意的に事項を取り出して「仕方なかった」と言えるような立場では、「二度と侵略戦争をしない」という決意や覚悟が、まったくうかがえない。これでは国際社会の信用を得られるわけがない。橋本市長がツイッター上で持論を正当化するために持ち出したらしい「特殊慰安施設協会(RAA)」設置の事実については、これはなぜ日本がそうしたのか考えると、間接的に、日本が他国でしてきたことを読み取ることができる。……自民党沖縄県連は7月の参院選の県連公約に、普天間飛行場の県外移設を掲げる方針という。もうここまで来たら「ねじれ」ではない。離党すべきだ。
劇作家協会の理事会・運営委員会・総会。午後から夜まで一日じゅう。会議ばかりしていた日だった。忙しい中、みんな集まり、いろいろと真剣に話す。ともあれ無事に終了。……自民党・高市政務調査会長は、「村山談話」について、戦後70年の再来年に新たな総理大臣談話が出される場合、村山談話の「侵略」などの文言の変更を検討すべきだという考えを示したという。しかし彼女の言うように「アジアの国々に対して、多大な損害と苦痛を与えた」ということしか認めず、「過去の植民地支配と侵略に対する痛切な反省」であるはずの村山談話から「侵略」を取ってしまったら、何に対して「反省」したか、わからなくなってしまうではないか。そして再来年に「村山談話の侵略などの文言の変更をした新たな総理大臣談話が出す」と予告した以上、菅義偉官房長官が言った「過去の侵略と植民地支配を謝罪した『村山談話』を、歴代内閣と同じように引き継ぐ」とする発言が、またまた覆されたことになる。諸外国からの非難をとりあえずかわすが「本音はこちらです」ということか。反省するなら「侵略」の事実を認めて謙虚にあらためるしかない。安倍総理は「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と言うが、1974年12月の国連総会で採択された総会決議3314で「侵略の定義」は明確にされている。日本が受諾した「ポツダム宣言」にある「日本国国民を欺瞞し之をして世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は永久に除去せられざるべからず」(第6項)を、今から「やっぱりやめます」とでも言うのだろうか。「戦争に負けたから仕方なく認めたのであって、じっさいは本意ではない」というのでは、話にならない。「戦後」も嘘で塗り固めた、国際的な信用などできない国家だ、ということになる。そんなことではなく、民主主義と平和を守ることに誇りを持てるような国であるために努力する、ということ以外に、周囲の信頼を取り戻す方法はない。
シム・ジャチャン氏講演会『韓国における芸術家の現在』。早稲田大学6号館3階レクチャールーム。四十名の教室だが、びっしり満員。既に日本語訳も付けられたパワーポイント映写で図表も示しつつ、実にわかりやすい。……まず、キムデジュン大統領時代に文化予算が1パーセントを越えたこと、ノムヒョンへの高い評価、イミョンバク期の逆風など、政権ごとの文化政策の変遷を語る。……「庶民の文化享受権」という言葉は、前政権時に強く出てきたという。ただ、一般の人たちがなぜ舞台芸術を見ないかというと、過去は、機会がない、値段が高いという理由が主だったが、今は「見たいプログラムがない」という答が上回っているという話が印象的だった。舞台芸術に触れる機会そのものを増やさなければ解決されない問題だろう。というのは、日本も同様の課題。……さて、メインの「芸術人福祉法」について。2011年11月制定、2012年11月から施行されたという。できたてのほやほやだ。シム先生が副理事長の「福祉財団」の方は先にできていた。たんに表現活動に助成する、ということではなく、創作活動環境の劣悪さをどうするか、ということが主眼。七割近くのアーティストの、アーティストとしての本業収入が、日本円にして十万円以下である現状。芸術家の生活苦、勤労者としての評価の獲得が重要であり、しかし保護を受けることが「芸術の自由」との関連においてはどうか、など、さまざまな議論があったという。結局、「創作準備期間」までをも支援することになり、アーティストが芸術活動を行える環境を整えることが「福祉」であるという方針を打ち出した。パクグネ政府は「文化の隆盛」を謳い、芸術家の創作と表現の自由を保証するという。韓国の文化状況はめまぐるしく好転している。……後半は「事後助成」について語ってもらう。「事後助成」の仕組みは、優れた成果をあげている表現者に「事前助成」の倍くらいの手厚さで行い、しかも自己申告だけでなく推薦されるケースもあるという。もちろん助成対象は該当作品の「再演」に対してである。優れた成果をあげ続けていれば、周りが放っておかないということだ。「事前助成」のみで、地域振興、教育、国際交流というトピック中心はともあれ、若手対象に偏りつつある日本の文化助成の現状とは、違う。持続的な活動を行ってきた者に対して冷淡ではなく、その価値を認めているのだ。「福祉」という言葉がアーティストの活動に結びつく視点は、極めて現実的なもので、日本でも広く知られるべきだろう。他にも詳しく記したいが、きりがない。シム先生講座の全体の詳細は、いずれ日本でも読めるようにするので、しばらくお待ちいただきたい。今回は福祉財団の人たちも同行していたが、彼らは日本のこともよく調べていて、「芸団協」の仕組みもわかっていたし、日本に於ける「芸能人年金・保険」の破綻の過去から学んで、長い時間を掛けてファンドを積み上げてからの運用を考えているという。……終えて、早稲田大学内を見学。写真は、早稲田演劇博物館・大学路展での、シム先生と、今回もタフな通訳をこなした木村典子さん。今回の企画は、私たち日韓演劇交流センターと、早稲田大学演劇博物館の合同によるものである。……その後、懇親会。シム先生はソウルで私に「バクダン酒」を教えた張本人でもある。「私の本業は演出家なのだが、どうやらみんなに忘れられている」とぼやくシム先生であった。……夏八木勲さん亡くなる。何度か出演のお話をさせていただいたが、いつもタイミングが悪かった。一度はご一緒したかったのだが……。ご冥福をお祈りする。俳優座養成所の「花の15期」には、夏八木さんの他に、原田芳雄さん、地井武男さん、太地喜和子さん、そして、斎藤憐さんがいる。皆さん向こうでわいわいやっているのだろうか。
午前中からすることが多い上に正午前から連絡がいっぱい入ってくる。慌ただしく出かける。……午後からの稽古は、夕方まで、とする。ローソクのシーンはじっさいにローソクの灯だけで稽古。……夜、新国立劇場『アジア温泉』初日に駆けつける。鄭義信最新戯曲を韓国演劇界のリーダーというべきソン・ジンチェク氏の演出で。美術は池田ともゆき、中劇場を大きく張りだし、円く広い「広場」を作っている。演出助手は『カウラの班長会議』に続いてこの現場に入った城田美樹。通訳のミョンファ、字幕のミヘンちゃん、知っている人が多い。『焼肉ドラゴン』に続く日韓合作の大作である。それにしても観客も韓国から多くの人が来ている。翌日に早稲田での講演(写真)を控えるシム先生。いつもお世話になっている木村典子さん。ソウル・アルコ劇場の芸術監督時代に〈坂手洋二フェスティバル〉を開催してくれたチェ・ヨンフン。彼は演出家だが、今は韓国国立劇団の事務局長を勤めている。再会を喜ぶ。サポートに入っているはずの日本滞在研修中のキム・カンボは、結局あまり現場に現れなかったようだ。作品は、ソン・ジンチェク氏が毎年ソウルで十万人を集めているという「マダンノリ」の手法も入っている。生演奏の音楽や「人間力」を中心とした動きの賑やかさは、確かにそうだ。鄭義信作品としては「寓話」シリーズの系譜に入る作品。『青き美しきアジア』を思い出すが、寓話の抽象性は、合作に適しているようで、意外と異文化どうしをリアルに噛み合わせることが難しいはずで、現場の苦労が偲ばれる。しかし舞台はサトウキビがとれる南の島……、いったいどこなんだ?! ともあれソン・ジンチェク・イズムを満喫。……安倍首相の昭恵夫人が韓国ミュージカルを鑑賞したことで、ネトウヨ的な勢力にネット上で非難されていたらしい。批判者たちは国立の劇場がきちんと日韓合作を作っていることも批判するのか? そんなはずはない。「首相夫人として軽はずみな行動は謹むべきだ」といった批判はもちろんくだらないが、じつは首相夫人がFB上で批判に抗して「全ての人や国と仲良くしたいというのが私の思いです」と発言するのを持ち上げるための伏線というか、出来レースとしての批判だったのではないかという疑惑もある。何ごとも自民党に都合の良い流れを作るマスコミ昨今の風潮は、どうにもおかしい。……菅義偉官房長官は、過去の侵略と植民地支配を謝罪した「村山談話」を、「歴代内閣と同じように引き継ぐ」と明言。諸外国から批判された安倍首相の「村山談話をそのまま継承しているわけではない」という発言の火消しのつもりだろうが、安倍首相本人がきちんと訂正しなければ意味がない。うやむやに終わらせようというつもりだろう。……世界文化遺産になりそうな富士山だが、活火山ではあるから、一部の専門家の間で「噴火間近」という情報が出回っている。富士五湖の一つ・河口湖は今年に入り水位が3メートル以上低下、岩盤に亀裂ができているとか、富士山頂から北東5キロの滝沢林道で長さ300メートルにわたる地割れが発見されているとか。それらが噴火の前兆だとすると、おそろしい被害が予想される。きちんと予知と対策をしなければなるまい。……「地震大国」日本は地下にエネルギーを蓄えた「温泉大国」でもあるわけで、温泉を掘り当てようとする人たちが登場する『アジア温泉』も、最後には温泉が噴出して終わっていいような気がするのだが、震災後二年余、まさか「自然災害を連想させるため自粛した」ということではあるまいな。
衆院本会議は、国民に番号を割り当て、年金や納税情報を一元的管理するマイナンバー法案を可決したという。国民総背番号制は駄目だ。管理されるのは嫌であるということ以上に、誰が、なんのために管理するのかということ自体を考えてみれば、その危険さがわかる。アメリカのソーシャル・セキュリティー・ナンバーというものは、もはやかの国では必須だが、日本という国がなぜそれを必要とするのか、きちんとした答えはないはずだ。……石原慎太郎が名古屋市内での講演で「日本国憲法はマッカーサーが数日で作った醜い憲法だ。これは歴史的に間違っている。戦勝国が負けた国を統治するために作った法律が、相手の国が独立しても通用する事例っていうのは世界のどこにもない」という。間違いだらけだ。憲法を作ったのはマッカーサーではない。「戦勝国」だけでなく日本人も一緒に作っている。日本国民自身が大切にしてきた。こんな表面的な発言ばかりして、憲法のどこに問題点があるのか指摘できていない。この人は「そんなまどろこしいことをやっていたら憲法なんか良くなるわけがない」と言って、国民投票まで否定している。
憲法を、政治家だけで勝手にどうこうしていいものではないという常識さえないのだ。……しかしあらゆる意味で、管理されることに慣れ、甘えてきた国民自身の責任も重い。だが、その責任をとるにはどうするかといえば、国民自身が変わることでしか、果たせないのだ。
憲法を、政治家だけで勝手にどうこうしていいものではないという常識さえないのだ。……しかしあらゆる意味で、管理されることに慣れ、甘えてきた国民自身の責任も重い。だが、その責任をとるにはどうするかといえば、国民自身が変わることでしか、果たせないのだ。
劇作家協会の言論表現委員会。それぞれ忙しい中に十名近くが集まって、TPPの話、憲法の話、アーカイブスの話、等々、三時間。みんな真剣である。ある意味、言論表現委員会の存在が当協会のアイデンティティの一つである。芸術・文化法、著作権法の第一人者・福井健策さんら、多くの人たちに支えられている。……午後からは稽古、今日も夜まで。……東電は福島第1原発の放射能汚染水対策として、敷地内でくみ上げた地下水を海に放出する方針を固めたという。「汚染前の水で安全性に問題はない」とし、地元市町村や漁業関係者の了承を得て5月中にも踏み切る予定らしい。構内では大量の地下水が1~4号機の原子炉建屋に流れ込み、原子炉冷却水と混ざって1日約400トンの放射能汚染水がたまり続けている。放水対象は建屋に流入する前にポンプでくみ上げた地下水で、「放射性セシウム137の濃度は1リットル当たり1ベクレル以下で通常の地下水と変わらない」(東電)としている。県漁連は承認する考えだという。恒常的に流し続けるつもりなのか。「風評以外」と言う人は言うが、太平洋側で捕れた魚を食べる人は、極端に減るのではないか。
午前中は劇作家協会のリーディング部と劇場部・企画事業部の合同会議、といっても、ある作品のリーディングという絞った問題について、二時間。その他にも話すべきことが山積。……午後からは稽古。今日からは夜までの稽古となる。早めに終わりたかったが、そうもいかない。いろいろ打ち合わせることもあり、稽古場を出たのは十一時半過ぎ。……いろいろ読まなければならないもの、考えなければならないことがあるが、なかなか難しい。自分も焦るし、申し訳ないのだが。……そんな最中なのに、ツイッターをやらない私が橋下徹のツイッターのことを教えられ、読んで唖然。ちらっと見ただけでも憲法関係など相当におかしいのだが、沖縄について触れた幾つかがとくにひどい。「沖縄の米軍基地は必要不可欠だ。普天間基地も辺野古移設しかない。日本のために、沖縄県民の皆さんにお願いせざるを得ない。しかしその際、国家を前面に出すと、産経的主張になる。違う。抽象的な国家を出さず、個別具体的の私、僕、子ども、孫を出せば良い。」「私、僕、子ども、孫、隣人の安全のために、沖縄県民の皆さんにお願いする。国家を前面に出すと、国民一人一人の沖縄への感謝の念が薄れる。それで産経のような主張になる。国民一人一人が、自分の安全のために、沖縄が負担を被ってくるていると言うことを意識する。それがひいては日本の安全保障になる」「また沖縄問題を考える上でも、無責任な平和論者は、アメリカに日本の安全保障を全て委ねながら、アメリカに対して沖縄問題を主張しろと言う。仕送りを受けている大学生が親に不満を言うようなもんだ。沖縄問題を真に解決するなら、日本の安全保障について日本自らが責任を負わなければならない。」。ついに狂ったか。「私、僕、子ども、孫、隣人の安全」のために、「沖縄の皆さん」は犠牲になっていただくしかない、と、何のためらいもなく、本気で言っているのだ。「日本の安全保障」のために「沖縄が負担を被ってくるている」(誤字は原本のママ)、それは彼にとっては自明で、覆す可能性は微塵もあり得ないことのようなのだ。そして、「沖縄の米軍基地は必要不可欠だ」という一文には主語がない。その主語を「日本(抽象的な国家)」ではなく「私、僕、子ども、孫(個別具体的?)」とすれば、なぜか正当なものになるそうだ。それにしても、「感謝」というコトバがここまで薄っぺらく響くとは。三つめに関しては、米軍基地問題を真摯に語る者の多くがアメリカにではなく主に日本政府に対して批判を重ねているという事実が、わかっていないようだ。で、論旨はずれるが、「仕送りを受けている大学生」であっても、「親」が誤った行いをするのであれば、不満を言うのではなく、きちんと批判すべきである。筋というものは、相手と境遇によって「通す」ことが難しくなるのでは、おかしいのだ。「筋」は「筋」だろう。それにしても、「私、僕、子ども、孫、隣人の安全」のために「沖縄の皆さん」を犠牲にすることの「正当性」など、どこにもあるわけはない。これこそ「差別」であり、「沖縄の皆さん」に対する侮辱である。私の感覚では、十五年以上前なら、公人はここまでひどい発言をしたら辞任するしかないはずだ。こんな暴言が許されている社会は、異常である。
安倍内閣が6月に発表する『骨太の方針』重点政策の一つとして、女性を対象に10代から身体のメカニズムや将来設計について啓発する「女性手帳」(仮称)の導入を検討しているという。妊娠判明時点で女性に配布される「母子健康手帳」よりも、早い段階から渡される。「子宮頸がん予防ワクチンを接種する10代前半時点や、20歳の子宮がん検診受診時点での一斉配布」を想定しており、「医学的に30代前半までの妊娠・出産が望ましいこと」などを周知し、「晩婚・晩産に歯止めをかける狙い」だそうだ。子宮頸がん予防ワクチンに危険性が指摘されていることは記載しないのだろうか? 15歳未満の子どもの数は、去年に比べ15万人少ない1,649万人で、32年連続で減少。総人口に占める子どもの割合も、去年を0.1ポイント下回って12.9%、39年連続して低下している。そうした現状に対して森雅子少子化担当相が議長を勤める内閣府「少子化危機突破タスクフォース」が「晩婚・晩産化対策に乗り出した」という。「医学的に妊娠・出産には適齢期(25~35歳前後)があり、加齢に伴って卵子が老化し、30代後半からは妊娠しにくくなったり、不妊治療の効果が得られにくくなることも明らかになっているが、学校教育で取り上げられていない」「30歳半ばまでの妊娠・出産を推奨し、結婚や出産を人生設計の中に組み込む重要性を指摘する。また、経済事情などを理由になかなか結婚に踏み切れない状況の改善にも取り組む方針で、新婚夫婦への大胆な財政支援に乗り出す」そうだ。……なぜ女性だけに「指導」するのだ。そんなに重要なら、男性にもそうした「問題」を伝え、認識させないのか。30歳半ばを過ぎた夫婦は立場がないのか。女性に対してだけではなく、極めて重大な差別性を持っている。……「格差」や「待機児童」の問題など、日本が子供を育てにくい社会であることは棚上げして、「晩婚、晩産が増えたのは女性のせいだ」というのか。いろいろな事情があって子供を持たない家族も多い。「自覚を促す」のだとしたら、あまりにも傲慢だ。……そもそも、「妊娠・出産」が「国のため」「少子化対策のため」と露骨に言うことに、違和感がないのだろうか。透けて見えるのは、戦時中同様の「お国のために」「産めよ増やせよ」の発想である。そして、国民を監視・管理しようとする全体主義である。……その意味で、「女性手帳」に対応するのが、自民党憲法改正推進本部が打ち出したという「徴兵制」の導入であろう。男性は「男性手帳」をもらえないが、代わりに「召集令状」を受け取ることになるとでもいうのか。
ロバート・レッドフォード監督による2010年の歴史映画。DVDで観る。リンカーン大統領暗殺事件に関与したことでアメリカ合衆国連邦政府史上初めて死刑となった女性であるメアリー・サラットが描かれる。軍事裁判と一般裁判の違いなど時代と国の状況の違いこそあれ、「憲法を守るか否か」が焦点なので、いろいろ思わされる。リンカーン自身は自分を殺した暗殺関係者が相手でさえ、自身が大切にした憲法が守られないことを望んだかどうか。「憲法が国民の基本的人権を守るために存在する」という基本はわかりやすく扱われているとも思う。2010年の映画だが、日本公開が一年二年も遅れることは昨今珍しく(昨年公開)、レッドフォードが作っていてもこういう地味な映画だと日本ではどんどん日の目を見なくなっていくのがわかる。デジタル化の波でミニシアターも生きにくくなっている。シネコンはある時コンビニに見えてしまう。なんだか残念な状況になっているんだな。
『帰還』はダムの話なのだが、一部の俳優にダムを見たことがない人もいるというので、猪熊恒和発案で、メンバー有志でダム取材というか見学に行くことになった。といっても、舞台のモデルになっているのは熊本なので、さすがに日帰りでは無理だし、飛行機代がかかる。八ッ場ダムもいいのだが、ちょっと遠いという事情もあり、多摩川を堰き止めて造られた小河内ダム(おごうちダム)にゆくことになった。つまり奥多摩湖である。完成は1957年、建設から50年以上が経過している。湖の周囲の森がしっかり整備されているからか、半世紀で土砂の流入が30パーセントというのは優秀であろう。標高530m、面積は約263km2。貯えられた水は、ダム直下の多摩川第1発電所で発電に使用後、多摩川に放流され、小作取水堰・羽村取水堰で水道原水として取水されている。ダムに沈むため、あるいは造成のため、945世帯が移転した。19年余りの歳月を費やした工事では87名が犠牲になったという。関東地方では大きいダムであるわけだが、全国にはもっと大きなダムがある。しかしやはり関東地方の水瓶だけあって、大量の水を堰き止める偉容は、上から見下ろすと凄まじいスケールではある。……ダムにはいろいろな目的があり、それぞれのダムによってケースがまるで違う。そのことも改めて認識する。……行きは新宿駅の人身事故で青梅特快が運休、何度も乗り継いで行くことになった。関東地方はやはり広い。知らないところだらけだ。奥多摩は行ったことはあるが、記憶は曖昧である。習性として固有名詞を覚えられないということもあるが、当てずっぽうに行動することが多かったからだろう。途中、自分が上京して三十四年目であるという事実に、改めていろいろなことを思ったりもした。
「改憲論議」がこれほど語られた「憲法記念日」があっただろうか。諸外国から「安倍総理大臣は歴史を直視せず、誤った認識で国家主義を煽っている」と批判されているその人が、過去の憲法制定の経緯を云々することも呆れた話だ。「憲法違反の選挙で選ばれた議員たちに憲法を変えられたくない」と言っていた人がいたが、まったく同感。「政権交代のたびに憲法を変えることになるのはおかしい」は、小澤一郎の言。改憲派の人間でも、現行憲法の何が悪いのか、明瞭に語れている者は一人もいない。……これらの論議は無意味と思うのでなるべく加担しないできている。話題に挙げるだけで加担しているようないやな気になるからだ。ふつうは、社会の民度が向上し、世の中がよくなっているなら、それにつれて、「国民への締め付け」は、緩くなっていいはずである。現政権が行おうとしていることは、「逆行」以外の何者でもない。……高江N4地区に2月に完成した一つのヘリパッドが、琉球朝日放送によって空撮された。じっさい写真で見ると悔しい。……京都・同志社大学の烏丸キャンパスの一角に、京都府警上京署の交番が完成。大学敷地内に交番が設置されるのは、全国初。憲法で保障されている「学問の自由」、「大学の自治」は反古にされた。……インドネシアの首都ジャカルタで建設が計画されている最初の地下鉄工事の入札結果は、見込まれていたとおり、日本と地元の建設会社で作る共同企業体が落札。ここ十年来の経済成長により、マイカーブームのジャカルタの交通渋滞は半端ではなく、それを解消するために地下鉄をつくるのはわかる。第1期分の総工費は、日本円で1400億円程度、円借款とインドネシア政府の資金で賄われる。トルコに原発を売りつけるよりははるかに良いことだ。……ベトナムの将校が日本のPKOを学びに来て結局は「憲法」の存在に気づいたという。「日本は平和憲法をこそ輸出しよう」という意見は、たいへん正しく意義がある。
稽古の後、野田学さんが、ルーマニア国立演劇映画大学の若き准教授オクタヴィアン・サイウ氏を、稽古後の空気が残り香のように漂う梅ヶ丘BOXに、連れてきてくださる。添付したのは、5/8に行われるサイウ氏の明治大学リバティタワーにおける講演チラシ。彼は世界一狭い劇場・梅ヶ丘BOXを気に入ってくれたようである。なんだか意気投合する。ベケット学者の彼が私の作品を理解してくれるのは自然なことで、腑に落ちる。一緒に居酒屋にも行く。食べ物へのこだわりも頑固なやつ! なんだか面白い男である。楽しい一夜であった。……沖縄を中心とする政党そうぞうの下地幹郎代表と、「県外移設なんて実現不可能だ」と嘯く橋下徹大阪市長(日本維新の会)が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設推進を明記した政策協定を締結。維新が7月の参院沖縄選挙区にそうぞうと合同で候補者擁立を目指す考えも示したという。これまで辺野古移設に反対してきたはずの下地氏は(正体はとっくにバレバレだが)、180度の政策転換。「普天間固定化を許してはならない。本土にも負担を担ってもらう仕組みをつくらないといけない」と、しゃあしゃあと語る。じゃあ本土に負担させろよ、最後まで。橋下氏は「基地を受け入れる勢力の拡大のため選挙を通じて戦う」だと、恥を知れ。協定は憲法改正も政策の柱に置いている。「普天間固定化」と引き替えにしようと謳う、「辺野古推進」の愚か者たち。下地は維新票をあてに比例復活を考えているのだろう。3カ月を切った那覇市議選に出馬予定の同党新人だった上原あやのは、下地宛ての離党届と公認取り下げ申請を提出したそうな。無所属で出馬を模索するそうだが、初めから下地などに近づかねばよかったのだ。
アニミズムを最上と考える私だが、富士山が「山岳信仰の宗教的価値」とか言われると……。「芸術的な価値」もなあ。風呂屋のタイル絵だからいいんじゃないか。「文化遺産」というのは、こじつけだなあ。落ちた鎌倉ががっかりしているとか、まあ、知己の鎌倉文人鎌倉マダム連は怒るだろうが、本当のところ、観光地として鎌倉は熱海と同類だと思われているところもあるしなあ。認められなくて残念な気持ちもお察しするが、世界中が「遺産」だらけになるよりはいいだろう。そいつは粋じゃないよ。遺産ばかり押しつけられた未来の人たちも困るよ。……ふだん私はツイッターをやらないし一種の仁義としてツイッターからの引用もしないことにしているのだが、これは例外でいいだろう。長島昭久衆議院議員が「空の上から初ツイート。只今シベリア上空です。出発前の控え室では、前原、塩崎、小泉代議士と今後の我が国の社会保障制度の在り方で盛り上がりました。今後の課題は、子育て支援と在宅での看取り、そして在日外国人2世3世に対する「日本人化」教育の仕組みづくりが鍵を握っているという点で合意。」だそうだ。「日本人化」。本気で言っているのか。オーストラリアも、かつて掲げていた「混血を繰り返し八代経てば元の血の影響はなくなる」とする「白人同化政策」を、反省して撤回した。二十世紀のことだ。南アフリカを見よ。我が国だけが逆行している。世界の恥だ。……少なくとも今の方向なら日本という国は大幅に移民を受け入れていかないかぎり、やっていけない。そこもわかって言っているのか。……もう一つツイッターは、失言反省の猪瀬都知事。「今回の件で誰が味方か敵か、よくわかったのは収穫でした」。開き直りか。そもそも勘違いしている。あなたは「公人」なのだ。あなた「個人」に対して「味方」も「敵」もない。そんな意識で接していると思っていることじたいが、おかしい。以前から、誘致キャンペーン広告を気持ち悪いと思い、この国はオリンピック誘致よりも先にやるべきことがあると思い、そんなことよりこの首都を豊かにするためのことを自分なりに考えているかもしれない、多くの人たちを、「敵か味方か」で判断することは、あなたは明瞭に自分から「敵」の位置になったわけだ……、ということでもないんだな。そこまでにも値しない。あまりにもピンぼけ。
本日、朝からどう過ごしたかといえば、明け方まで起きてあれこれ、少し眠り、いろいろと連絡。来年以降のことやら各種の公私雑務がこの時期に山積している。ともあれ問題を解決してゆくしかない。時に長いつきあいの方の人情にも触れて感謝する。……印鑑証明書取りに区役所分室にも久しぶりに行く。昔ながらのようで、どんな辺鄙な分室でもハイテク化は進んでいる。……午後、稽古。「これはこういう芝居だよ」とは言わない稽古を心がける。初心。……夜は小雨を気にせず自転車移動、シアタートラムで韓国サダリ・ムーブメント・ラボラトリー+エイジアナウ・プロダクション『ヴォイツェック』を観る。数年前、アルコ劇場〈坂手洋二フェスティバル〉で韓国版『屋根裏』演出のためのソウル滞在時に、話題になっていて勧められたが、その時はタイミング悪く観られなかった。出演者たちは、よく鍛えられているというべきか、ある特化されたことに向かっている印象が勝るか、見る人によって違うだろう。いろいろとアイデアも面白いが、もう一歩、もう一つの、劇としての「文脈」が形成されているようにもってゆけないかな、と思った。ポストドラマ派には興味深いだろう。ルコックシステムの影響というよりは、動きじたいマスゲーム的印象(動きそのものが目的化されている)だし、コミュニケーションの強さを感じにくくなっているとすれば、回数を重ねすぎて「型」が強く残ってしまったからだろう。「続演」というものの持つ課題だろう。私も、続演十年を越える次回『屋根裏』再々再々再々上演に、心してかからないと。……帰宅すると、テレビニュースを見てしまう。息子が野球部で年明けからピッチャーに転向して以降、野球ニュースを見る目が変わったような、そうでもないような。ダルビッシュも黒田も「努力なくして結果なし」を見せつけてくれるし(ダルは本日は強運だったかもだが)、四勝目の田中将大ヒーローインタビュー「初回に慎重になりすぎて、その後はテンポを上げたので余分なことを考えなかったのがいいんじゃないかと思います」、然り。そういうことはよくある。うむ。最近、余分なことばかり考えているな、確かに。
人間は、不安と、思い上がりの、両方を行ったり来たりする生きものだ。その両方が必要なのだ。その両方が人を育てる。バランスが大切だ。バランスを取ることを支えるのが、仲間だ。相互に意識する、しないに関わらずだ。演劇にそれがなければなぜ演劇をやっているかわからない。初心に還って、あらためて見つけていきたい。周りを見回し、あなた方が私には必要なのだ、と思う。もっとうまくつきあえた方がいいに決まっているけれど。……写真は、最近届いた常福寺ライブ講演の私。境内の竹の存在感の前には、霞むしかない。
本日、朝からどう過ごしたかといえば、明け方まで起きてあれこれ、少し眠り、いろいろと連絡。来年以降のことやら各種の公私雑務がこの時期に山積している。ともあれ問題を解決してゆくしかない。時に長いつきあいの方の人情にも触れて感謝する。……印鑑証明書取りに区役所分室にも久しぶりに行く。昔ながらのようで、どんな辺鄙な分室でもハイテク化は進んでいる。……午後、稽古。「これはこういう芝居だよ」とは言わない稽古を心がける。初心。……夜は小雨を気にせず自転車移動、シアタートラムで韓国サダリ・ムーブメント・ラボラトリー+エイジアナウ・プロダクション『ヴォイツェック』を観る。数年前、アルコ劇場〈坂手洋二フェスティバル〉で韓国版『屋根裏』演出のためのソウル滞在時に、話題になっていて勧められたが、その時はタイミング悪く観られなかった。出演者たちは、よく鍛えられているというべきか、ある特化されたことに向かっている印象が勝るか、見る人によって違うだろう。いろいろとアイデアも面白いが、もう一歩、もう一つの、劇としての「文脈」が形成されているようにもってゆけないかな、と思った。ポストドラマ派には興味深いだろう。ルコックシステムの影響というよりは、動きじたいマスゲーム的印象(動きそのものが目的化されている)だし、コミュニケーションの強さを感じにくくなっているとすれば、回数を重ねすぎて「型」が強く残ってしまったからだろう。「続演」というものの持つ課題だろう。私も、続演十年を越える次回『屋根裏』再々再々再々上演に、心してかからないと。……帰宅すると、テレビニュースを見てしまう。息子が野球部で年明けからピッチャーに転向して以降、野球ニュースを見る目が変わったような、そうでもないような。ダルビッシュも黒田も「努力なくして結果なし」を見せつけてくれるし(ダルは本日は強運だったかもだが)、四勝目の田中将大ヒーローインタビュー「初回に慎重になりすぎて、その後はテンポを上げたので余分なことを考えなかったのがいいんじゃないかと思います」、然り。そういうことはよくある。うむ。最近、余分なことばかり考えているな、確かに。
人間は、不安と、思い上がりの、両方を行ったり来たりする生きものだ。その両方が必要なのだ。その両方が人を育てる。バランスが大切だ。バランスを取ることを支えるのが、仲間だ。相互に意識する、しないに関わらずだ。演劇にそれがなければなぜ演劇をやっているかわからない。初心に還って、あらためて見つけていきたい。周りを見回し、あなた方が私には必要なのだ、と思う。もっとうまくつきあえた方がいいに決まっているけれど。……写真は、最近届いた常福寺ライブ講演の私。境内の竹の存在感の前には、霞むしかない。