夕食を終えたあたりから、雷が鳴り始めた。
和太鼓を打ち鳴らすような、重量感のある響きが聞こえる。いや、金属製の雨戸を開け閉めする音のほうが、近いかもしれない。ガラガラ、ゴロゴロと鳴り響くたびに、威嚇されている気分になる。
さて、コンセントを抜くべきか……。
浦和に住んでいたとき、激しい雷雨のあとに、電話が壊れたことがある。
「雷が鳴ったら、すぐにコンセントを抜いてください。そうすれば、ただの置物になりますから、被害を受けませんよ」
サービスマンにそんなアドバイスをされた。最初のうちは、せっせとコンセントを抜いて回ったが、なにしろ数が多い。テレビ、DVDレコーダー、冷蔵庫、エアコン、電話、パソコンetc……。しかも、時計機能がリセットされ、プラグを差し込んだとたんに「0:00」と点滅するではないか。ああ、忌々しい。
次第に面倒くさいと感じはじめ、コンセントを差したままで雷をやり過ごすようになった。
しかし、この日の雷は騒々しかったので、再び警戒心が呼び起こされる。
ひとまず、命の次に大事なパソコンのコンセントだけは抜いておいた。
「えー、コンセント抜いたほうがいいの? どうしよう、充電中だよ」
娘は、ごていねいにも、携帯電話の充電をしているところだった……。
なんだって、わざわざ、こんなときにするかな!?
思わず、歯をむき出したくなった。
わが家やそんな状況だったが、雷はお構いなしに近づいてくる。和太鼓調の「ドドーン」も勢いを増し、雲の上で「ぶちあわせ太鼓」を始めているようだ。
やがて、太鼓どころか、空からビルが降ってきたかと思うほど大きな「ガラガラ、ドドドーン!!」という音が耳に突き刺さった。大音量が頭の中でこだまし、すさまじい衝撃である。
低音だけでなく、グラスをいくつも落としたような「カシャーン」という高音も混ざっている。まさか、尾崎豊が天国で窓ガラスを叩き割っているのではと疑った。
初めて聞く轟音に、度肝を抜かれた次の瞬間、家中がフッと暗闇に変わった。
停電だ。
「お母さん、お母さん! 真っ暗だよ!!」
娘も驚いている。私は懐中電灯を探し、夫に手渡した。
「ブレーカー上げてきて」
間もなく明かりはついたが、家電製品は大丈夫だろうか。
「見て! 雷が落ちる前に、充電器抜いたんだよ。ミキの携帯は無事♪」
そんなものはどうでもいい。まずは、台所から順にチェックしていく。冷蔵庫、テレビ、エアコン、電話……。おおむね無傷だったが、寝室のエアコンだけが動かない。一番落雷の方向に近かったせいだろうか。
面倒がらずに、コンセントを抜いておけばよかったと、私はどっぷり後悔した。
昨日はボーナスの支給日だったから、買い替えできないこともない。
いや、むしろ雷は、ボーナスを狙って暴れた感がある。家電業界と癒着しているのではないか。
さては、回し者だな……。

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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
和太鼓を打ち鳴らすような、重量感のある響きが聞こえる。いや、金属製の雨戸を開け閉めする音のほうが、近いかもしれない。ガラガラ、ゴロゴロと鳴り響くたびに、威嚇されている気分になる。
さて、コンセントを抜くべきか……。
浦和に住んでいたとき、激しい雷雨のあとに、電話が壊れたことがある。
「雷が鳴ったら、すぐにコンセントを抜いてください。そうすれば、ただの置物になりますから、被害を受けませんよ」
サービスマンにそんなアドバイスをされた。最初のうちは、せっせとコンセントを抜いて回ったが、なにしろ数が多い。テレビ、DVDレコーダー、冷蔵庫、エアコン、電話、パソコンetc……。しかも、時計機能がリセットされ、プラグを差し込んだとたんに「0:00」と点滅するではないか。ああ、忌々しい。
次第に面倒くさいと感じはじめ、コンセントを差したままで雷をやり過ごすようになった。
しかし、この日の雷は騒々しかったので、再び警戒心が呼び起こされる。
ひとまず、命の次に大事なパソコンのコンセントだけは抜いておいた。
「えー、コンセント抜いたほうがいいの? どうしよう、充電中だよ」
娘は、ごていねいにも、携帯電話の充電をしているところだった……。
なんだって、わざわざ、こんなときにするかな!?
思わず、歯をむき出したくなった。
わが家やそんな状況だったが、雷はお構いなしに近づいてくる。和太鼓調の「ドドーン」も勢いを増し、雲の上で「ぶちあわせ太鼓」を始めているようだ。
やがて、太鼓どころか、空からビルが降ってきたかと思うほど大きな「ガラガラ、ドドドーン!!」という音が耳に突き刺さった。大音量が頭の中でこだまし、すさまじい衝撃である。
低音だけでなく、グラスをいくつも落としたような「カシャーン」という高音も混ざっている。まさか、尾崎豊が天国で窓ガラスを叩き割っているのではと疑った。
初めて聞く轟音に、度肝を抜かれた次の瞬間、家中がフッと暗闇に変わった。
停電だ。
「お母さん、お母さん! 真っ暗だよ!!」
娘も驚いている。私は懐中電灯を探し、夫に手渡した。
「ブレーカー上げてきて」
間もなく明かりはついたが、家電製品は大丈夫だろうか。
「見て! 雷が落ちる前に、充電器抜いたんだよ。ミキの携帯は無事♪」
そんなものはどうでもいい。まずは、台所から順にチェックしていく。冷蔵庫、テレビ、エアコン、電話……。おおむね無傷だったが、寝室のエアコンだけが動かない。一番落雷の方向に近かったせいだろうか。
面倒がらずに、コンセントを抜いておけばよかったと、私はどっぷり後悔した。
昨日はボーナスの支給日だったから、買い替えできないこともない。
いや、むしろ雷は、ボーナスを狙って暴れた感がある。家電業界と癒着しているのではないか。
さては、回し者だな……。

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