高校生ともなれば、オートバイの免許を取る生徒もいる。
勤務先の学校では、プライベートで乗るのは自由だが、制服を着て運転したり、学校に乗ってきたりするのは禁止である。中には、こっそりバイクで登校し、近隣の団地などに停める生徒もいるが、たいていは住民からの苦情で発覚し、謹慎となる。
先日は、もっとお粗末な生徒がいた。
あたりが暗くなった頃、帰ろうとした教員が、校門を出てすぐのところに停まっているバイクを見つけた。彼の嗅覚が「怪しい」と告げ、引き返してみると、昇降口には乱雑に脱ぎ捨てられた靴がある。他の生徒は、とっくに下校している時間だ。靴の持ち主を追及すると、渋々、自分のバイクであることを認めたのだった。
ヤツの言い分はこうだ。
「今まで休んでばかりいたから、担任に呼ばれたんですよ。時間が遅いから、今日は大丈夫だと思って隠さなかったんです……」
教員たちのこめかみが、ピクピクと小刻みに震えたことは間違いない。
私が高校生のときに比べると、考えなしの生徒が増えた気がする。
ある男子は、冬場、禁止されているジャンパーを堂々と着て登場し、校舎入口で取り上げられた。通常であれば、反省文を書き説教を受けて返却となるのだが、彼の場合はそうならなかった。
「○○のジャンパー、内ポケットにタバコが入っていたんですけど……」
「バカじゃないのか!? 何やってんだよ!」
生活指導部も、予期せぬおまけに顔をしかめる。
特にタバコに関しては、無頓着な者が多い。私も出勤途中、前を歩いていた生徒が自販機に駆け寄り、セブンスターを買ったところをつかまえたことがある。「通学路で買うヤツがあるかよ!」と誰もが呆れた。
同僚は、授業中、机の上に何も出していない生徒に「筆記用具を出しなさい」と声をかけた。その子は、素直にカバンから筆箱を出したが、弾みでタバコも飛び出し御用となった。
カンニングの手口も、信じられないくらい稚拙だったりする。
昔、担任をしたことのある男子が、「このテストが赤点だったら、評定は1だぞ」と教員に警告された。いよいよテストとなったのに、答案に何を書けばいいか見当もつかない。そこで、試験監督の先生が目をはなした隙に、後ろの生徒の答案をひったくった。そのまま、自分の答案を並べて、せっせと書き写しているところを見つかった。こうなると、もはや笑い話である。
しかし、今までの教員生活で一番ウケたのは、2校目にいた男子生徒だ。
3年生の1学期、彼は卒業が危ぶまれるほどひどい成績を取った。担任は保護者を交えて、三者面談をすることにした。
面談の当日、約束の時間の少し前に、正門から一台の車が入ってきた。たまたま、駐車場付近を巡回している教員がいて、ゆっくりと車に目をやった。フロントガラスから運転席が見える。だが、どう見ても、制服に身を包んだ生徒がハンドルを握っているではないか……!
仰天して車に突進すると、運転席から「しまった!」という顔の生徒が降りてきた。彼は、仮免許を取ったのをいいことに、母親を助手席に乗せ、練習がてら自分で運転してきたのだ。教員は「話は中で聞きましょう」と、生徒の腕をむんずとつかんだ。
シュンとする生徒と対照的に、母親は大声で喚きだした。
「だから言ったじゃないの! あの信号で、アタシが運転代わるって!!」
もちろん、面談どころではない……。
浅はかな生徒はたくさんいるが、ここまでやる子はそうそういない。
「考えなし大賞」は、仮免君にあげたいと思う。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
勤務先の学校では、プライベートで乗るのは自由だが、制服を着て運転したり、学校に乗ってきたりするのは禁止である。中には、こっそりバイクで登校し、近隣の団地などに停める生徒もいるが、たいていは住民からの苦情で発覚し、謹慎となる。
先日は、もっとお粗末な生徒がいた。
あたりが暗くなった頃、帰ろうとした教員が、校門を出てすぐのところに停まっているバイクを見つけた。彼の嗅覚が「怪しい」と告げ、引き返してみると、昇降口には乱雑に脱ぎ捨てられた靴がある。他の生徒は、とっくに下校している時間だ。靴の持ち主を追及すると、渋々、自分のバイクであることを認めたのだった。
ヤツの言い分はこうだ。
「今まで休んでばかりいたから、担任に呼ばれたんですよ。時間が遅いから、今日は大丈夫だと思って隠さなかったんです……」
教員たちのこめかみが、ピクピクと小刻みに震えたことは間違いない。
私が高校生のときに比べると、考えなしの生徒が増えた気がする。
ある男子は、冬場、禁止されているジャンパーを堂々と着て登場し、校舎入口で取り上げられた。通常であれば、反省文を書き説教を受けて返却となるのだが、彼の場合はそうならなかった。
「○○のジャンパー、内ポケットにタバコが入っていたんですけど……」
「バカじゃないのか!? 何やってんだよ!」
生活指導部も、予期せぬおまけに顔をしかめる。
特にタバコに関しては、無頓着な者が多い。私も出勤途中、前を歩いていた生徒が自販機に駆け寄り、セブンスターを買ったところをつかまえたことがある。「通学路で買うヤツがあるかよ!」と誰もが呆れた。
同僚は、授業中、机の上に何も出していない生徒に「筆記用具を出しなさい」と声をかけた。その子は、素直にカバンから筆箱を出したが、弾みでタバコも飛び出し御用となった。
カンニングの手口も、信じられないくらい稚拙だったりする。
昔、担任をしたことのある男子が、「このテストが赤点だったら、評定は1だぞ」と教員に警告された。いよいよテストとなったのに、答案に何を書けばいいか見当もつかない。そこで、試験監督の先生が目をはなした隙に、後ろの生徒の答案をひったくった。そのまま、自分の答案を並べて、せっせと書き写しているところを見つかった。こうなると、もはや笑い話である。
しかし、今までの教員生活で一番ウケたのは、2校目にいた男子生徒だ。
3年生の1学期、彼は卒業が危ぶまれるほどひどい成績を取った。担任は保護者を交えて、三者面談をすることにした。
面談の当日、約束の時間の少し前に、正門から一台の車が入ってきた。たまたま、駐車場付近を巡回している教員がいて、ゆっくりと車に目をやった。フロントガラスから運転席が見える。だが、どう見ても、制服に身を包んだ生徒がハンドルを握っているではないか……!
仰天して車に突進すると、運転席から「しまった!」という顔の生徒が降りてきた。彼は、仮免許を取ったのをいいことに、母親を助手席に乗せ、練習がてら自分で運転してきたのだ。教員は「話は中で聞きましょう」と、生徒の腕をむんずとつかんだ。
シュンとする生徒と対照的に、母親は大声で喚きだした。
「だから言ったじゃないの! あの信号で、アタシが運転代わるって!!」
もちろん、面談どころではない……。
浅はかな生徒はたくさんいるが、ここまでやる子はそうそういない。
「考えなし大賞」は、仮免君にあげたいと思う。
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