以前から、私は寝相が悪いのだが、最近さらに悪化している。
目覚めると、ヘソから上には布団がかかっていない。夜中に蹴っているのか、布団が下へ下へとズレてしまうのだ。あるいは、足が悪さをしていなくても、両手が布団の上にしゃしゃり出て、勝手に凍えていることもある。
昼間の疲れもあるのだろう、私は多少の寒さでは起きない。おそらく、何時間も布団なしで寝ていると思われる。アラームで目を覚ましたとき、ようやく、痛いくらいに冷え切った上半身に気づくという有様だ。もっとデリケートならよかったのに。
そんな朝は、すこぶる体調が悪い。何とか行儀よく布団の中で眠る方法はないかと、頭を働かせてみた。
まず、思いついたのが寝袋だ。たしか、義母が持っていると聞いたおぼえがある。夫なら知っているかもしれない。
「ねえ、パパ。おばあちゃんちに寝袋あったっけ?」
借りてみて効果があれば、自分用に買ってみたい。
「ああ、あったかもしれないな。オヤジがボケたとき、テレビを投げ飛ばして暴れたことがあったんだよ。そのとき、弟たちが、寝袋に押し込んで、紐でグルグル巻きにして寝かせたって言ってたからな」
…………。
元体育教師の義父は、認知症になって以来、人が変わったように乱暴になり、しばしば物を壊すことがあった。なまじ体力があるだけに、義母だけでは手に負えず、これまた体育教師の息子2人が駆けつけて取り押さえたという。たしかに、寝袋に入れられては、手も足も出まい。
でも、そんな寝袋はイヤだなぁ。
いっそのこと、スキーウェアを着て寝ようかと思ったが、ひとまず押入れを物色し、何か役に立ちそうなものはないかと探してみる。
ゴソゴソゴソ……。
すると、毛布やタオルケットに挟まれていた「おやすみポンチョ」を見つけた。これは、娘が幼い頃、布団から飛び出しても風邪をひかぬよう、着させたものだ。
「これは使える!!」と直感した。
早速、袖を通してみる。子供用といえども、小柄な私には、足首が隠れる長さとなる。十分着られるではないか。
だが、家族の視線は冷たい。
「お父さん、家の中に、おかしな人がいるよ」
「本当だ。オバさんのくせに、子供のポンチョなんか着ちゃって」
「へーんなの」
「へーんなの」
夫と娘からは不審者扱いをされたが、そんなことでメゲる私ではない。雑音を無視し、その夜からパジャマの上にポンチョを羽織って寝ることにした。
ポイントは、穴から腕を出さないことだ。両手は胴体とともに、ポンチョの中に入れておく。こうすれば、布団から手がはみ出して、冷える心配がない。また、足も動きを妨げられ、おとなしくなる。
私は、久しぶりに暖かい布団の中で、ぬくぬくと熟睡した。
朝が来た。
ピピッ、ピピッという、耳障りな電子音で目が覚める。やかましいアラームを止めるため、手を伸ばそうとしたが、なぜか思い通りにならない。モタモタしていたら、電子音は調子に乗ったように、「ピピピピッ、ピピピピッ」とまくし立ててくる。私はようやく思い出した。
ああっ、ポンチョを着ていたんだっけ~!!
身動き取れませんがな……。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
目覚めると、ヘソから上には布団がかかっていない。夜中に蹴っているのか、布団が下へ下へとズレてしまうのだ。あるいは、足が悪さをしていなくても、両手が布団の上にしゃしゃり出て、勝手に凍えていることもある。
昼間の疲れもあるのだろう、私は多少の寒さでは起きない。おそらく、何時間も布団なしで寝ていると思われる。アラームで目を覚ましたとき、ようやく、痛いくらいに冷え切った上半身に気づくという有様だ。もっとデリケートならよかったのに。
そんな朝は、すこぶる体調が悪い。何とか行儀よく布団の中で眠る方法はないかと、頭を働かせてみた。
まず、思いついたのが寝袋だ。たしか、義母が持っていると聞いたおぼえがある。夫なら知っているかもしれない。
「ねえ、パパ。おばあちゃんちに寝袋あったっけ?」
借りてみて効果があれば、自分用に買ってみたい。
「ああ、あったかもしれないな。オヤジがボケたとき、テレビを投げ飛ばして暴れたことがあったんだよ。そのとき、弟たちが、寝袋に押し込んで、紐でグルグル巻きにして寝かせたって言ってたからな」
…………。
元体育教師の義父は、認知症になって以来、人が変わったように乱暴になり、しばしば物を壊すことがあった。なまじ体力があるだけに、義母だけでは手に負えず、これまた体育教師の息子2人が駆けつけて取り押さえたという。たしかに、寝袋に入れられては、手も足も出まい。
でも、そんな寝袋はイヤだなぁ。
いっそのこと、スキーウェアを着て寝ようかと思ったが、ひとまず押入れを物色し、何か役に立ちそうなものはないかと探してみる。
ゴソゴソゴソ……。
すると、毛布やタオルケットに挟まれていた「おやすみポンチョ」を見つけた。これは、娘が幼い頃、布団から飛び出しても風邪をひかぬよう、着させたものだ。
「これは使える!!」と直感した。
早速、袖を通してみる。子供用といえども、小柄な私には、足首が隠れる長さとなる。十分着られるではないか。
だが、家族の視線は冷たい。
「お父さん、家の中に、おかしな人がいるよ」
「本当だ。オバさんのくせに、子供のポンチョなんか着ちゃって」
「へーんなの」
「へーんなの」
夫と娘からは不審者扱いをされたが、そんなことでメゲる私ではない。雑音を無視し、その夜からパジャマの上にポンチョを羽織って寝ることにした。
ポイントは、穴から腕を出さないことだ。両手は胴体とともに、ポンチョの中に入れておく。こうすれば、布団から手がはみ出して、冷える心配がない。また、足も動きを妨げられ、おとなしくなる。
私は、久しぶりに暖かい布団の中で、ぬくぬくと熟睡した。
朝が来た。
ピピッ、ピピッという、耳障りな電子音で目が覚める。やかましいアラームを止めるため、手を伸ばそうとしたが、なぜか思い通りにならない。モタモタしていたら、電子音は調子に乗ったように、「ピピピピッ、ピピピピッ」とまくし立ててくる。私はようやく思い出した。
ああっ、ポンチョを着ていたんだっけ~!!
身動き取れませんがな……。
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