ちょっと遅めの電車に乗ったら、見おぼえのある制服を着た男子3人組がいた。チェックのネクタイと校章から、娘と同じ高校とわかる。
「今日、ライティングあったっけ」
「あるある、3時間目」
「テストやる日?」
「今日は違う。テストは明後日」
ブレザーの新しさから、1年生ではないかと思っていたら、やはりそうだった。まさか、娘と同じクラスだったりして。そう気づくと、読みかけの本は頭に入らず、会話ばかりが気になった。
「ライティングの先生、ダルいよね」
「うん、ダルい。宿題出しすぎ」
「なんて名前だって」
「ヤマモト」
それは、娘の担任である、英語のヤマモト先生に間違いない。まだ20代の女性だが、毅然とした物言いで、結構厳しいところがある。いつも遅くまで残り、授業はわかりやすいというから頼りになる。名前を知らないところを見ると、担任ではないのだろう。残念ながら、同級生ではないようだ。
まもなく、彼らの話題は、リーディングの先生に移っていった。続きを聞きたかったが、私は次の駅で急行に乗換えねばならず、泣く泣く電車を降りた。
電車やバスという狭い空間では、人の話がいやでも耳に入ってくる。私は、教員になって一年目の年を思い出した。当時の勤務先は、有楽町線沿線の高校で、明るいブルーの制服が特徴だった。
「おはよー!」
「おはよう!」
振り返ると、同じ車両に女子のブルー集団が乗ってきた。週に2時間教えている生徒たちである。だが、彼女たちはおしゃべりに夢中で、私がいることに気づかない。
「日本史のプリントやってきた?」
「まだ」
「アタシ、やってきたから、写していいよ」
「ありがと~!」
だいたい朝は、その日の授業のことが話題に上る。それから、先生の話に移っていくパターンが多い。懐かしいシチュエーションだ。私も高校4年生の気分で、話を聞いていた。
「あの人の授業って眠くなるよね」
「うん、あと数学の○○とか」
「でも、理科の××は、声が大きすぎて寝られない」
ドッと笑いが起きた。耳をダンボにしていた私も、ちょっと肩が震えてしまった。不覚……。
「そういえば、教員になったばかりの女の先生、名前何だっけ」
その瞬間、震えが止まった。それはもしや、私のことではないか。
「ああ、あの、おとなしそうな人?」
「名前知らない」
「おぼえてない」
「何か、影が薄いよね」
ガーン!!
がっかりしていたら、あっという間に話題が変わった。
「あ、体育着忘れちゃった。誰かに借りなきゃ」
「また外でソフトボールかな」
悪口が飛び出すどころか、話のネタにもならなかったらしい。
くすん。
彼女たちの話は尽きない。私は、決して後ろを振り返ってはいけないと思った。何も悪いことをしていないのに、コソコソしてしまう自分が不思議である。
高校生のみなさん、電車の中で、噂話をするのは危険です!
きっと、保護者か教員がいますよ。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「今日、ライティングあったっけ」
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「ライティングの先生、ダルいよね」
「うん、ダルい。宿題出しすぎ」
「なんて名前だって」
「ヤマモト」
それは、娘の担任である、英語のヤマモト先生に間違いない。まだ20代の女性だが、毅然とした物言いで、結構厳しいところがある。いつも遅くまで残り、授業はわかりやすいというから頼りになる。名前を知らないところを見ると、担任ではないのだろう。残念ながら、同級生ではないようだ。
まもなく、彼らの話題は、リーディングの先生に移っていった。続きを聞きたかったが、私は次の駅で急行に乗換えねばならず、泣く泣く電車を降りた。
電車やバスという狭い空間では、人の話がいやでも耳に入ってくる。私は、教員になって一年目の年を思い出した。当時の勤務先は、有楽町線沿線の高校で、明るいブルーの制服が特徴だった。
「おはよー!」
「おはよう!」
振り返ると、同じ車両に女子のブルー集団が乗ってきた。週に2時間教えている生徒たちである。だが、彼女たちはおしゃべりに夢中で、私がいることに気づかない。
「日本史のプリントやってきた?」
「まだ」
「アタシ、やってきたから、写していいよ」
「ありがと~!」
だいたい朝は、その日の授業のことが話題に上る。それから、先生の話に移っていくパターンが多い。懐かしいシチュエーションだ。私も高校4年生の気分で、話を聞いていた。
「あの人の授業って眠くなるよね」
「うん、あと数学の○○とか」
「でも、理科の××は、声が大きすぎて寝られない」
ドッと笑いが起きた。耳をダンボにしていた私も、ちょっと肩が震えてしまった。不覚……。
「そういえば、教員になったばかりの女の先生、名前何だっけ」
その瞬間、震えが止まった。それはもしや、私のことではないか。
「ああ、あの、おとなしそうな人?」
「名前知らない」
「おぼえてない」
「何か、影が薄いよね」
ガーン!!
がっかりしていたら、あっという間に話題が変わった。
「あ、体育着忘れちゃった。誰かに借りなきゃ」
「また外でソフトボールかな」
悪口が飛び出すどころか、話のネタにもならなかったらしい。
くすん。
彼女たちの話は尽きない。私は、決して後ろを振り返ってはいけないと思った。何も悪いことをしていないのに、コソコソしてしまう自分が不思議である。
高校生のみなさん、電車の中で、噂話をするのは危険です!
きっと、保護者か教員がいますよ。
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「うつろひ~笹木砂希~」(日記)