ひな祭りは明日だが、この週末にお祝いした家庭も多いようだ。
わが家も1日に宴会をした。しかし、今年はとてつもない体力を使った。
ぜいぜい。
まず、ひな人形を出すときからケチがつく。
「あれ、お母さん。ミキのベッド、火曜日に来るんでしょ。お雛様があると通れないよ」
「ああっ、そうだった……」
階段を上がったところの廊下が、ひな人形の定位置なのだが、ここに七段飾りを広げると、かなり狭くなる。ちょうど、娘の新しいベッドが来る予定になっていたが、これでは入らない。
「しょうがないね、片づけないと……」
雛壇を組み立て小道具を並べ、あとは人形だけの段階だったけれども、泣く泣く箱に収納する。
「徒労」という語の説明に使えそうなくらい、無駄な作業であった。
3月1日は、両親や妹一家、姉夫婦もやってきて、ひな祭りパーティーである。
いつもは寿司をとって、肉料理やオードブルをいくつか並べて誤魔化すのだが、頼みの寿司屋が閉店してしまった。ならば、たまには自分で作ろうと決めたのだが、無計画もいいところだった。
「カニクリームコロッケとパエリアに、チキンの網焼きを作って、あとはデパ地下で買えばいいや」
「わーい、パエリア!」
パーティーは全部で11人である。買い物だけで相当な量に上り、先週痛めた腰がグズグズ言い始めた。これから立ち仕事をするのだからと、コルセットをして残りの買い出しに出かける。
帰ったら、まずはひな人形を飾る仕事から始めた。

無事終了。
次にカニクリームコロッケに取り掛かるが、ここでも早速トラブルに見舞われる。
「あれっ、牛乳が足りない……」
11人分だから1.5倍の量にしたら、牛乳があと150ccほど足りない。大急ぎでスーパーに戻り、牛乳をゲット。残りが1リットルを切っていたので、買い物リストに加えておけばよかったと後悔した。
追加の牛乳をタネを作り、冷蔵庫で固める間にチキンの下ごしらえだ。チキンが終わったら、パエリアに入れるエビとイカを切り、アサリの砂出しを始める。
それが終わったら、またコロッケに戻って衣をつけるのだが、今度はパン粉が足りなくなった。もうスーパーに走るのはイヤだ。
「ひ~、ミキ、おばあちゃんちでパン粉を借りてきてくれる?」
「わかった」
娘が1階の義母を訪ね、食パンをもらってきた。
「パン粉はないけど、これをすり下ろして使えばいいってさ」
「ありがと~!」
何とか、コロッケが完成した。
「こんばんは」
「こんばんは」
続々と親族が集合する。乾杯が終わりひと段落してからパエリアを作り始め、オードブルがひと通りなくなった頃に出せればよい。

「あら、今日は洋食? 和食に合うワインを持ってきちゃったわ」
姉が眉毛を下げる。寿司ではないことを言っておけばよかった。
「かんぱーい」
「ひな祭りおめでとう!」
「わーい!」
グラスのぶつかる音が響き、宴会が始まった。
妹が、義弟のノンアルコールビールを忘れるというハプニングはあったが、コーラやウーロン茶で我慢したようだ。オードブルもコロッケも好評で、会話も弾んでいた。
私は台所に戻り、パエリアを作り始める。まずはオリーブ油でにんにく、玉ねぎを炒め、水とコンソメを入れてスープを沸かす。そこに、トマトを6つ切りにして入れようとしたが、それらしいものがない。
また、買っていなかったのだ……。
しかし、缶詰のカットトマトはある。強引に、カットトマトをフライパンに入れると、そのまま米を加えて炊いてみた。味の保証はないが、食べられないほど不味いということはないだろう。
4時間ほどずっと立ちっぱなしで、前屈ができないくらいに腰が張っている。
かつて、3K職場といわれたのは、「きつい」「汚い」「危険」な仕事である。今は新3Kといって、コンピュータ業界などが「きつい」「帰れない」「給料が安い」といわれているそうだ。
この日の私も、「きつい」「買い忘れ」「腰が痛い」の3拍子が揃っていると気がついた。まったく、どうしようもない。
「できたよ」
「うわあ、美味しそう♪」

味に自信はなかったが、こちらもかなり好評だった。
「イカが新鮮」
「アサリも美味しい」
「これ、バナメイエビなの? 偽装事件から値段が上がったんだってよ」
あちこちから手が伸びてきて、あっという間にフライパンが空になる。どうやら、満足してもらえたようだ。
ようやく私も、「今日は楽しいひな祭り~♪」と歌う気分になれた。

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
わが家も1日に宴会をした。しかし、今年はとてつもない体力を使った。
ぜいぜい。
まず、ひな人形を出すときからケチがつく。
「あれ、お母さん。ミキのベッド、火曜日に来るんでしょ。お雛様があると通れないよ」
「ああっ、そうだった……」
階段を上がったところの廊下が、ひな人形の定位置なのだが、ここに七段飾りを広げると、かなり狭くなる。ちょうど、娘の新しいベッドが来る予定になっていたが、これでは入らない。
「しょうがないね、片づけないと……」
雛壇を組み立て小道具を並べ、あとは人形だけの段階だったけれども、泣く泣く箱に収納する。
「徒労」という語の説明に使えそうなくらい、無駄な作業であった。
3月1日は、両親や妹一家、姉夫婦もやってきて、ひな祭りパーティーである。
いつもは寿司をとって、肉料理やオードブルをいくつか並べて誤魔化すのだが、頼みの寿司屋が閉店してしまった。ならば、たまには自分で作ろうと決めたのだが、無計画もいいところだった。
「カニクリームコロッケとパエリアに、チキンの網焼きを作って、あとはデパ地下で買えばいいや」
「わーい、パエリア!」
パーティーは全部で11人である。買い物だけで相当な量に上り、先週痛めた腰がグズグズ言い始めた。これから立ち仕事をするのだからと、コルセットをして残りの買い出しに出かける。
帰ったら、まずはひな人形を飾る仕事から始めた。

無事終了。
次にカニクリームコロッケに取り掛かるが、ここでも早速トラブルに見舞われる。
「あれっ、牛乳が足りない……」
11人分だから1.5倍の量にしたら、牛乳があと150ccほど足りない。大急ぎでスーパーに戻り、牛乳をゲット。残りが1リットルを切っていたので、買い物リストに加えておけばよかったと後悔した。
追加の牛乳をタネを作り、冷蔵庫で固める間にチキンの下ごしらえだ。チキンが終わったら、パエリアに入れるエビとイカを切り、アサリの砂出しを始める。
それが終わったら、またコロッケに戻って衣をつけるのだが、今度はパン粉が足りなくなった。もうスーパーに走るのはイヤだ。
「ひ~、ミキ、おばあちゃんちでパン粉を借りてきてくれる?」
「わかった」
娘が1階の義母を訪ね、食パンをもらってきた。
「パン粉はないけど、これをすり下ろして使えばいいってさ」
「ありがと~!」
何とか、コロッケが完成した。
「こんばんは」
「こんばんは」
続々と親族が集合する。乾杯が終わりひと段落してからパエリアを作り始め、オードブルがひと通りなくなった頃に出せればよい。

「あら、今日は洋食? 和食に合うワインを持ってきちゃったわ」
姉が眉毛を下げる。寿司ではないことを言っておけばよかった。
「かんぱーい」
「ひな祭りおめでとう!」
「わーい!」
グラスのぶつかる音が響き、宴会が始まった。
妹が、義弟のノンアルコールビールを忘れるというハプニングはあったが、コーラやウーロン茶で我慢したようだ。オードブルもコロッケも好評で、会話も弾んでいた。
私は台所に戻り、パエリアを作り始める。まずはオリーブ油でにんにく、玉ねぎを炒め、水とコンソメを入れてスープを沸かす。そこに、トマトを6つ切りにして入れようとしたが、それらしいものがない。
また、買っていなかったのだ……。
しかし、缶詰のカットトマトはある。強引に、カットトマトをフライパンに入れると、そのまま米を加えて炊いてみた。味の保証はないが、食べられないほど不味いということはないだろう。
4時間ほどずっと立ちっぱなしで、前屈ができないくらいに腰が張っている。
かつて、3K職場といわれたのは、「きつい」「汚い」「危険」な仕事である。今は新3Kといって、コンピュータ業界などが「きつい」「帰れない」「給料が安い」といわれているそうだ。
この日の私も、「きつい」「買い忘れ」「腰が痛い」の3拍子が揃っていると気がついた。まったく、どうしようもない。
「できたよ」
「うわあ、美味しそう♪」

味に自信はなかったが、こちらもかなり好評だった。
「イカが新鮮」
「アサリも美味しい」
「これ、バナメイエビなの? 偽装事件から値段が上がったんだってよ」
あちこちから手が伸びてきて、あっという間にフライパンが空になる。どうやら、満足してもらえたようだ。
ようやく私も、「今日は楽しいひな祭り~♪」と歌う気分になれた。

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