今月末で、隣の席の職員が退職する。彼は定年まであと3年あるが、両親の健康状態が思わしくないため、仕事をやめて面倒をみるのだという。戦力ダウンは必至だが、家庭の事情だからいたしかたない。
先日、彼の送別会をした。
「どのお店にしましょうか」
「寒いから、温かいものがいいですね」
「そうだ、ロシア料理は?」
同僚の素子さんと相談してお店を決める。以前にブロ友さんがアップした、上野のマトリョーシカだ。
「じゃあ、私はお花を買って行きますから、先に出ます」
時間差で早く出たのだが、おりしも送別会ブームと見えて、花屋は客でいっぱいだった。
ひええ~!
「あのう、年配の男性の送別会なんですが、落ち着いた感じの花束をお願いできますか」
順番が来たところで申し出ると、15分待ちだという。3月4月は、前もって予約をしておかないと時間が読めないと学習した。
しかも、15分後に受け取った花は、落ち着きというより、ひたすら地味なだけ……。
まあ、いっか……。
「すみません、遅くなりました」
案の定、10分遅刻した。ちょうど、飲み放題がスタートしたというので、ワインを頼む。
「ボルシチです」
初心者には、定番料理が一番だ。アツアツで給仕するのがロシア流なのか、かなりの熱さだった。
「ハフハフ、おいしーい」
料理が出てくるスピードは、結構早い。せっかちな東京人に、向いているかもしれない。
「ピロシキです。ナプキンに包んでお召し上がりください」
これまた定番。
熱そうだと様子を見ていたら、隣の素子さんがためらいもなく、かぶりついている。
「熱くないですか?」
「ちょっとだけ」
その一言でみんな安心し、彼女のあとに続いた。
「そろそろ、ウォッカを頼もうかな」
一人の男性が店員を呼んだ。飲み放題のウォッカは2種類あったが、名前は忘れてしまった。水のように見えても、だまされてはいけない。
「アルコール度数40度ですよ」
「へー、どんな味? 飲ませて」
「アタシもアタシも」
結局、みんなひと口ずつ味見をした。日本酒が濃縮されたような、キツい味だった。私は飲まなくていいと敬遠する。
「つぼ焼きです」
「来た~! これが美味しいみたいですね」
「そうそう」
これは、ボルシチよりも熱い。上のフタはパン生地のようで、サクサクしていた。
「シチューとはまた違うわね」
「うん、いける」
食べながら、主賓を囲んでの思い出話が始まった。1つめの職場でも、2つ目の職場でも一緒だったという腐れ縁の男性が、「あのときはこうだった」と懐かしい表情を浮かべる。4月からは、この彼は誰よりも淋しい思いをすることだろう。
「鶏胸肉のコラーゲン煮です」
これはあっさりしていて、美容によさそうだった。
実は、次の日もその次の日も、肌の調子がよかった。ひょっとして、この料理のおかげ?
「チョコレートフォンデュです」
マシュマロやフルーツが運ばれてきた。これを、溶かしたチョコレートにつけていただくのだ。
「いやあ、チョコレートはいらないかな……」
男性陣は弱気だ。フルーツだけをつつき、スルーされたチョコレートが余っている。
さんざん飲んでしゃべったあとは、イチゴジャムの入ったロシア紅茶も、結構お腹にどっしりきた。
「ああ、もう食べられない」
ということは、そろそろセレモニータイムだ。主賓に記念品と地味~な花束を渡し、お開きとなった。
「ロシア料理、珍しくてよかったね」
「話も弾んで、楽しかったです」
同僚からの評判も上々だ。きっと、退職される方も、最後の思い出としておぼえていてくれると思う。
今まで、ありがとうございました。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
先日、彼の送別会をした。
「どのお店にしましょうか」
「寒いから、温かいものがいいですね」
「そうだ、ロシア料理は?」
同僚の素子さんと相談してお店を決める。以前にブロ友さんがアップした、上野のマトリョーシカだ。
「じゃあ、私はお花を買って行きますから、先に出ます」
時間差で早く出たのだが、おりしも送別会ブームと見えて、花屋は客でいっぱいだった。
ひええ~!
「あのう、年配の男性の送別会なんですが、落ち着いた感じの花束をお願いできますか」
順番が来たところで申し出ると、15分待ちだという。3月4月は、前もって予約をしておかないと時間が読めないと学習した。
しかも、15分後に受け取った花は、落ち着きというより、ひたすら地味なだけ……。
まあ、いっか……。
「すみません、遅くなりました」
案の定、10分遅刻した。ちょうど、飲み放題がスタートしたというので、ワインを頼む。
「ボルシチです」
初心者には、定番料理が一番だ。アツアツで給仕するのがロシア流なのか、かなりの熱さだった。
「ハフハフ、おいしーい」
料理が出てくるスピードは、結構早い。せっかちな東京人に、向いているかもしれない。
「ピロシキです。ナプキンに包んでお召し上がりください」
これまた定番。
熱そうだと様子を見ていたら、隣の素子さんがためらいもなく、かぶりついている。
「熱くないですか?」
「ちょっとだけ」
その一言でみんな安心し、彼女のあとに続いた。
「そろそろ、ウォッカを頼もうかな」
一人の男性が店員を呼んだ。飲み放題のウォッカは2種類あったが、名前は忘れてしまった。水のように見えても、だまされてはいけない。
「アルコール度数40度ですよ」
「へー、どんな味? 飲ませて」
「アタシもアタシも」
結局、みんなひと口ずつ味見をした。日本酒が濃縮されたような、キツい味だった。私は飲まなくていいと敬遠する。
「つぼ焼きです」
「来た~! これが美味しいみたいですね」
「そうそう」
これは、ボルシチよりも熱い。上のフタはパン生地のようで、サクサクしていた。
「シチューとはまた違うわね」
「うん、いける」
食べながら、主賓を囲んでの思い出話が始まった。1つめの職場でも、2つ目の職場でも一緒だったという腐れ縁の男性が、「あのときはこうだった」と懐かしい表情を浮かべる。4月からは、この彼は誰よりも淋しい思いをすることだろう。
「鶏胸肉のコラーゲン煮です」
これはあっさりしていて、美容によさそうだった。
実は、次の日もその次の日も、肌の調子がよかった。ひょっとして、この料理のおかげ?
「チョコレートフォンデュです」
マシュマロやフルーツが運ばれてきた。これを、溶かしたチョコレートにつけていただくのだ。
「いやあ、チョコレートはいらないかな……」
男性陣は弱気だ。フルーツだけをつつき、スルーされたチョコレートが余っている。
さんざん飲んでしゃべったあとは、イチゴジャムの入ったロシア紅茶も、結構お腹にどっしりきた。
「ああ、もう食べられない」
ということは、そろそろセレモニータイムだ。主賓に記念品と地味~な花束を渡し、お開きとなった。
「ロシア料理、珍しくてよかったね」
「話も弾んで、楽しかったです」
同僚からの評判も上々だ。きっと、退職される方も、最後の思い出としておぼえていてくれると思う。
今まで、ありがとうございました。
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