もしや、私には予知能力があるのかもしれない。
ちょうど一週間前に、いやな夢を見た。歯が抜けて、痛い思いをする夢だ。夢占いによると、歯が抜ける夢は、身内に起きる不幸やトラブルを暗示しているのだとか。心配になって、那須の両親にメールを送ってみたが、「元気よ」という返事なので忘れていた。
ところが、それから4日後に、今度はスウェットパンツの紐が切れた。何の前触れもなく、ブチッと。

これは不吉だ。
母方の祖母が亡くなったとき、父の弟の靴ひもが切れたと聞いている。横浜市でバスの運転手をしていた叔父は、操作中にブレーキを踏みこんだとき、革靴の紐が切れたことを不思議に感じた。父に「変わりはないか」と電話をしたら、「実は、さきほど妻の母が息を引き取った」との答えが返ってきて、仰天したそうだ。
まだ子どもだった私は、「そんなことがあるのか」と驚いたが、なぜ祖母に近い娘や息子ではなく、結婚式で一度しか会っていない叔父が気づいたのか謎だった。
きっと叔父には、虫の知らせをキャッチするアンテナがついていたのだろう。
そんなことを思い出し、まだ起きていた娘の部屋に行った。
「ねえ、今さあ、スウェットの紐が切れちゃって、気味悪いんだけど」
叔父の話をしてみたが、娘は一向に取り合わない。
「へ? たまたまでしょ。そういうのを迷信ていうんだよ。早く寝たら」
早々に部屋を追い出され、布団に入る。目を閉じたら、日頃の疲れからか、すぐ眠りに落ちた。
翌朝は、またもやすっかり忘れて、仕事に出かけて行った。
「ただいま」
その夜帰宅すると、娘が青い顔をして出迎えに来た。
「おかえり。おばあちゃんのこと聞いた?」
「おばあちゃん? 何も」
娘が言っているのは、私の母ではなく、二世帯住宅の一階に住んでいる夫の母である。たしか、先月で91歳になったはずだ。
「駐車場で転んで、目の上を切ったんだって。出血がすごかったから病院に行って、ちょっと前に帰ってきたんだよ。目がかなり腫れてて、違う顔になったみたい。お母さんの言ったことが当たっちゃったね」
「ええっ」
命に別状はないとはいえ、転んだ拍子に右手を地面につき、骨にもヒビが入ったという。結構な重症だ。
夫や夫の弟2人が面倒をみているので、当面の生活には支障ないが、義母はときおり認知症のような行動をとるようになった。
「お父さん、おばあちゃんがお風呂に入ろうとしてるけどいいの?」
義母の部屋を見に行った娘が、走って戻ってきた。
「骨にヒビが入ってるんだ、いいわけないだろう」
「包帯やガーゼを全部取っちゃったよ」
「大変だ」
兄弟が全員駆けつけ、元に戻すまでに相当な手間がかかったらしい。
義母は「ケガしてからもう1カ月経ったからいいでしょ」と言い張り、夫たちは「まだ2日しか経ってないんだ」と言い聞かせるのに苦労したという。お嬢様育ちで、物腰の柔らかい人なのに、別人のようになってしまった。しばらく、この状態が続きそうで、気が重い。

ぼんやり庭に目をやると、桜の木に絡んだツタが、秋らしく色づいていた。
冬が来て、雪が降る頃には、義母は治っているだろうか。
病人が回復する夢を見ると、正夢になるそうだ。
絶対、絶対、ぜえったーい見てやる。

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
ちょうど一週間前に、いやな夢を見た。歯が抜けて、痛い思いをする夢だ。夢占いによると、歯が抜ける夢は、身内に起きる不幸やトラブルを暗示しているのだとか。心配になって、那須の両親にメールを送ってみたが、「元気よ」という返事なので忘れていた。
ところが、それから4日後に、今度はスウェットパンツの紐が切れた。何の前触れもなく、ブチッと。

これは不吉だ。
母方の祖母が亡くなったとき、父の弟の靴ひもが切れたと聞いている。横浜市でバスの運転手をしていた叔父は、操作中にブレーキを踏みこんだとき、革靴の紐が切れたことを不思議に感じた。父に「変わりはないか」と電話をしたら、「実は、さきほど妻の母が息を引き取った」との答えが返ってきて、仰天したそうだ。
まだ子どもだった私は、「そんなことがあるのか」と驚いたが、なぜ祖母に近い娘や息子ではなく、結婚式で一度しか会っていない叔父が気づいたのか謎だった。
きっと叔父には、虫の知らせをキャッチするアンテナがついていたのだろう。
そんなことを思い出し、まだ起きていた娘の部屋に行った。
「ねえ、今さあ、スウェットの紐が切れちゃって、気味悪いんだけど」
叔父の話をしてみたが、娘は一向に取り合わない。
「へ? たまたまでしょ。そういうのを迷信ていうんだよ。早く寝たら」
早々に部屋を追い出され、布団に入る。目を閉じたら、日頃の疲れからか、すぐ眠りに落ちた。
翌朝は、またもやすっかり忘れて、仕事に出かけて行った。
「ただいま」
その夜帰宅すると、娘が青い顔をして出迎えに来た。
「おかえり。おばあちゃんのこと聞いた?」
「おばあちゃん? 何も」
娘が言っているのは、私の母ではなく、二世帯住宅の一階に住んでいる夫の母である。たしか、先月で91歳になったはずだ。
「駐車場で転んで、目の上を切ったんだって。出血がすごかったから病院に行って、ちょっと前に帰ってきたんだよ。目がかなり腫れてて、違う顔になったみたい。お母さんの言ったことが当たっちゃったね」
「ええっ」
命に別状はないとはいえ、転んだ拍子に右手を地面につき、骨にもヒビが入ったという。結構な重症だ。
夫や夫の弟2人が面倒をみているので、当面の生活には支障ないが、義母はときおり認知症のような行動をとるようになった。
「お父さん、おばあちゃんがお風呂に入ろうとしてるけどいいの?」
義母の部屋を見に行った娘が、走って戻ってきた。
「骨にヒビが入ってるんだ、いいわけないだろう」
「包帯やガーゼを全部取っちゃったよ」
「大変だ」
兄弟が全員駆けつけ、元に戻すまでに相当な手間がかかったらしい。
義母は「ケガしてからもう1カ月経ったからいいでしょ」と言い張り、夫たちは「まだ2日しか経ってないんだ」と言い聞かせるのに苦労したという。お嬢様育ちで、物腰の柔らかい人なのに、別人のようになってしまった。しばらく、この状態が続きそうで、気が重い。

ぼんやり庭に目をやると、桜の木に絡んだツタが、秋らしく色づいていた。
冬が来て、雪が降る頃には、義母は治っているだろうか。
病人が回復する夢を見ると、正夢になるそうだ。
絶対、絶対、ぜえったーい見てやる。

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