お料理はアイデアが命だと思う。

「なにこれ、可愛いじゃん!」
カブトの春巻きとはユニークだ。表紙を見て、迷わずこの本を注文した。娘の誕生日は5月3日だから、誕生会に出すお料理にちょうどいい。
でも、本が届いたときにはガッカリした。とてもレシピとはいえない、アバウトな説明文しか書いていなかったからだ。

『春巻きの皮を折り紙の要領でかぶとに折り、中にえびのすり身などを好みに味つけした具を詰めて、下の皮でふたをする。水で溶いた小麦粉で留めて、色よく揚げる』
「これだけじゃわかんないよ~」
まずはクックパッドを駆使して、春巻きの作り方を学習する。これで中身はOK。
次に折り紙を出して、カブトを作ってみる。それから、実際に春巻きの皮を買ってきてリハーサル。

どうにかこうにか作れることがわかり、誕生日がやってきた。
「ごめんくださ~い」
先週、ホビークッキングフェアで注文したワインが到着した。アルコールも準備万端だ。

「そういえば……」
念のため、ノンアルコールビールも冷やしておく。妹のダンナはドライバーだから、お酒が飲めない。でも、妻である妹は、しばしばノンアルコールビールを忘れてくる。しかも、自分はダンナを気遣うどころか、次から次へと酒に手を出し、お構いなしにグビグビ。鬼嫁の名を欲しいままにしている。
掃除や片づけが終わったところで、春巻きの準備に取りかかる。皮は全部で16枚あるが、カブトを作るのに1個あたり5分かかるから、時間が足りない。カブトは、男性プラス子ども用の6個にして、あとは手のかからない普通の春巻きにした。
「こんばんは~」
集合時間は6時。まずは、せっかちな老人となった両親がやってきた。次に妹一家。最後に姉夫婦が揃ったところで春巻きを揚げはじめる。
ジュワ~ッ
16個を揚げるとなると、かなり忙しい。春巻きが大きいので、一度に2個しか入らない。油に入れて、こんがり色づいたところでひっくり返し、引き上げると同時に次の春巻きを入れる。引き上げた春巻きは、その間に皿に並べるのだが、2列にするとはみ出しそうだ。一番大きな皿を用意したのに、見込みが甘かった。
しかし、迷っている時間はない。そろそろ、ひっくり返すときがきた。
「ひいいい~」
四苦八苦しながら、どうにか春巻きが完成した。

「わあ、面白いね」
親族から、カブト春巻きは好評だった。
「じゃあ、乾杯しましょ。奈津、ノンアルコールビールは持ってきた?」
「あ、忘れた」
妹に尋ねると、案の定の結果である。さっき、冷やしておいてよかった。
乾杯の音頭を父に頼むと、やけにかしこまってグラスを高く上げた。
「では、ミキさんの19歳のお誕生日を祝って、かんぱーい!」
「かんぱーい」
ようやく、誕生会が始まった。
「ミキさんだって、クスクス」
「カブトもらうよ」
「グラタンはカニとよく混ぜてね」
「醤油とって」
「それがシャリ小さめのにぎり? 次はアタシも小さめがいいわ」
食べ物の話題が広がる一方で、大学生となった娘にも質問が振られる。
「外国語は何とったの?」
「ドイツ語。発音をおぼえるのが大変だよ」
「砂希は中国語だったね」
「ドイツのほうが好きだから、ドイツ語にすればよかった」
「サークルは何に入ったの?」
「写真部にした」
「写真かぁ~」
姉のダンナからは、カブト春巻きの感想も寄せられた。
「カブトは具が少なかった。これは女性陣に有利だね」
「アハハ」
バイオリンのボトルに入った、甘口のドイツワインを開ける。予想通り、甘いものを好む母が喜んでグラスを出した。これは、冷蔵庫に入れておけば一週間ほど持つそうだ。
スペイン産の赤ワインも「まろやか」と評判がいい。ドライバーの義弟は「飲めない」と哀しげだったが……。
「そろそろ、ケーキタイムかな」
「ろうそくを19本もらってきたんだよ」
手先の器用な義弟が、等間隔にろうそくを並べると、ロマンティックな構図が浮かび上がった。

「誕生日おめでとう!」
お開きになったあとは、疲れ切ってブログの更新もせず、布団に直行した。
翌朝、冷蔵庫を開けてビックリする。
「しまった、プチトマトを出し忘れた」

急いでいたせいか、春巻きに添えるはずのプチトマトを、すっかり忘れてしまった。野菜庫に押し込められたままのパックが3個、うらめしそうにこちらを見上げている。
野菜不足の宴会だったみたい……。

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)

「なにこれ、可愛いじゃん!」
カブトの春巻きとはユニークだ。表紙を見て、迷わずこの本を注文した。娘の誕生日は5月3日だから、誕生会に出すお料理にちょうどいい。
でも、本が届いたときにはガッカリした。とてもレシピとはいえない、アバウトな説明文しか書いていなかったからだ。

『春巻きの皮を折り紙の要領でかぶとに折り、中にえびのすり身などを好みに味つけした具を詰めて、下の皮でふたをする。水で溶いた小麦粉で留めて、色よく揚げる』
「これだけじゃわかんないよ~」
まずはクックパッドを駆使して、春巻きの作り方を学習する。これで中身はOK。
次に折り紙を出して、カブトを作ってみる。それから、実際に春巻きの皮を買ってきてリハーサル。

どうにかこうにか作れることがわかり、誕生日がやってきた。
「ごめんくださ~い」
先週、ホビークッキングフェアで注文したワインが到着した。アルコールも準備万端だ。

「そういえば……」
念のため、ノンアルコールビールも冷やしておく。妹のダンナはドライバーだから、お酒が飲めない。でも、妻である妹は、しばしばノンアルコールビールを忘れてくる。しかも、自分はダンナを気遣うどころか、次から次へと酒に手を出し、お構いなしにグビグビ。鬼嫁の名を欲しいままにしている。
掃除や片づけが終わったところで、春巻きの準備に取りかかる。皮は全部で16枚あるが、カブトを作るのに1個あたり5分かかるから、時間が足りない。カブトは、男性プラス子ども用の6個にして、あとは手のかからない普通の春巻きにした。
「こんばんは~」
集合時間は6時。まずは、せっかちな老人となった両親がやってきた。次に妹一家。最後に姉夫婦が揃ったところで春巻きを揚げはじめる。
ジュワ~ッ
16個を揚げるとなると、かなり忙しい。春巻きが大きいので、一度に2個しか入らない。油に入れて、こんがり色づいたところでひっくり返し、引き上げると同時に次の春巻きを入れる。引き上げた春巻きは、その間に皿に並べるのだが、2列にするとはみ出しそうだ。一番大きな皿を用意したのに、見込みが甘かった。
しかし、迷っている時間はない。そろそろ、ひっくり返すときがきた。
「ひいいい~」
四苦八苦しながら、どうにか春巻きが完成した。

「わあ、面白いね」
親族から、カブト春巻きは好評だった。
「じゃあ、乾杯しましょ。奈津、ノンアルコールビールは持ってきた?」
「あ、忘れた」
妹に尋ねると、案の定の結果である。さっき、冷やしておいてよかった。
乾杯の音頭を父に頼むと、やけにかしこまってグラスを高く上げた。
「では、ミキさんの19歳のお誕生日を祝って、かんぱーい!」
「かんぱーい」
ようやく、誕生会が始まった。
「ミキさんだって、クスクス」
「カブトもらうよ」
「グラタンはカニとよく混ぜてね」
「醤油とって」
「それがシャリ小さめのにぎり? 次はアタシも小さめがいいわ」
食べ物の話題が広がる一方で、大学生となった娘にも質問が振られる。
「外国語は何とったの?」
「ドイツ語。発音をおぼえるのが大変だよ」
「砂希は中国語だったね」
「ドイツのほうが好きだから、ドイツ語にすればよかった」
「サークルは何に入ったの?」
「写真部にした」
「写真かぁ~」
姉のダンナからは、カブト春巻きの感想も寄せられた。
「カブトは具が少なかった。これは女性陣に有利だね」
「アハハ」
バイオリンのボトルに入った、甘口のドイツワインを開ける。予想通り、甘いものを好む母が喜んでグラスを出した。これは、冷蔵庫に入れておけば一週間ほど持つそうだ。
スペイン産の赤ワインも「まろやか」と評判がいい。ドライバーの義弟は「飲めない」と哀しげだったが……。
「そろそろ、ケーキタイムかな」
「ろうそくを19本もらってきたんだよ」
手先の器用な義弟が、等間隔にろうそくを並べると、ロマンティックな構図が浮かび上がった。

「誕生日おめでとう!」
お開きになったあとは、疲れ切ってブログの更新もせず、布団に直行した。
翌朝、冷蔵庫を開けてビックリする。
「しまった、プチトマトを出し忘れた」

急いでいたせいか、春巻きに添えるはずのプチトマトを、すっかり忘れてしまった。野菜庫に押し込められたままのパックが3個、うらめしそうにこちらを見上げている。
野菜不足の宴会だったみたい……。

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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)