同僚の小嶋センセイは、昼休みになるとタバコを吸いに門を出る。高校の敷地内では吸えないからだ。
年はとうに40を越えたが、いまだに独身。外に出たついでに、コンビニで弁当を買うことも日課のひとつになっている。
しかし、その日はちょっと様子が違っていた。コンビニを目指して右に曲がったところで、頭に「ドスン」と重いものがぶつかってきた。
「グワァ~~ッ!」
ぶつかってきたのは、気の立ったカラスであった。黒い羽を大きく広げ、けたたましい鳴き声を上げて、頭を狙って攻撃してくる。
「わわっ」
予期せぬカラスの襲撃に、小嶋センセイは両腕で頭部をかばって走った。しつこくカラスは追ってきたが、30メートルほど逃げたらいなくなった。
「笹木さん、今、外に出たらカラスに襲われました」
「ええっ!」
弁当の入ったレジ袋を下げ、小嶋センセイは苦笑いをして戻ってきた。生徒からは「怖い先生」で通っているけれど、カラスには勝てなかったようだ。このことを生徒が知ったら、きっと喜ぶに違いない。
「小嶋さんもですか。僕もちょっと前にやられました。他にも被害にあった先生がいますよ」
同じく愛煙家の若手男性も、門の外で襲撃されたらしい。教員数人に加えて、校医さん、出入りの業者、たまたま通りかかった男性などがカラスの攻撃を受けたと聞く。どうやら学校の近くにカラスが巣を作ったようで、ヒナを守るために敵を追い払っているのだろう。
「どうしよう、ワタシ、そろそろ帰らなくっちゃ」
ちょうど、その日は午後に用事があり、私は1時半から休暇を取るつもりだった。しかし、カラスが怖い。何とか無事に帰る方法を考えていたら、ピンとひらめいた。
「そうだ、傘を差せばいいんじゃない?」
すでに雨は上がっていたが、私は雨傘を持っている。これが防具になるのではないか。
「背中はどうするんですか」
「…………」
完全に防げるかは疑問だったが、ひとまず傘を差し、身を縮めて門を出た。電線にはカラスが見える。羽の音は聞こえてこない。大丈夫かな、大丈夫かなとドキドキしながら歩いて行った。まだ来ない、まだ来ない……。
傘に隠れていたせいか、弱そうで襲う価値もないと判断したのか、結局、カラスの襲撃はなかった。学校から100メートルも離れれば、もう心配ないだろう。私は傘をたたみ、ひと息ついた。
ホッ。
ヒナが巣立ったのか、その後カラスはいなくなったけれど、襲撃を受けたのが男性ばかりだったことに驚く。カラスなりに、敵とみなす判断基準があったのかもしれない。
今月初めに、皇居東御苑内に行ったことを思い出す。

御苑内の三の丸尚蔵館では、「鳥の楽園」というテーマで展示を行っていた。

鷹、鳩、クジャク、鶏、鶴などが描かれた焼き物や彫刻が展示されていたが、たしかカラスもあったはず。
鳥が好きな人は、襲撃されなかったりして。

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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
年はとうに40を越えたが、いまだに独身。外に出たついでに、コンビニで弁当を買うことも日課のひとつになっている。
しかし、その日はちょっと様子が違っていた。コンビニを目指して右に曲がったところで、頭に「ドスン」と重いものがぶつかってきた。
「グワァ~~ッ!」
ぶつかってきたのは、気の立ったカラスであった。黒い羽を大きく広げ、けたたましい鳴き声を上げて、頭を狙って攻撃してくる。
「わわっ」
予期せぬカラスの襲撃に、小嶋センセイは両腕で頭部をかばって走った。しつこくカラスは追ってきたが、30メートルほど逃げたらいなくなった。
「笹木さん、今、外に出たらカラスに襲われました」
「ええっ!」
弁当の入ったレジ袋を下げ、小嶋センセイは苦笑いをして戻ってきた。生徒からは「怖い先生」で通っているけれど、カラスには勝てなかったようだ。このことを生徒が知ったら、きっと喜ぶに違いない。
「小嶋さんもですか。僕もちょっと前にやられました。他にも被害にあった先生がいますよ」
同じく愛煙家の若手男性も、門の外で襲撃されたらしい。教員数人に加えて、校医さん、出入りの業者、たまたま通りかかった男性などがカラスの攻撃を受けたと聞く。どうやら学校の近くにカラスが巣を作ったようで、ヒナを守るために敵を追い払っているのだろう。
「どうしよう、ワタシ、そろそろ帰らなくっちゃ」
ちょうど、その日は午後に用事があり、私は1時半から休暇を取るつもりだった。しかし、カラスが怖い。何とか無事に帰る方法を考えていたら、ピンとひらめいた。
「そうだ、傘を差せばいいんじゃない?」
すでに雨は上がっていたが、私は雨傘を持っている。これが防具になるのではないか。
「背中はどうするんですか」
「…………」
完全に防げるかは疑問だったが、ひとまず傘を差し、身を縮めて門を出た。電線にはカラスが見える。羽の音は聞こえてこない。大丈夫かな、大丈夫かなとドキドキしながら歩いて行った。まだ来ない、まだ来ない……。
傘に隠れていたせいか、弱そうで襲う価値もないと判断したのか、結局、カラスの襲撃はなかった。学校から100メートルも離れれば、もう心配ないだろう。私は傘をたたみ、ひと息ついた。
ホッ。
ヒナが巣立ったのか、その後カラスはいなくなったけれど、襲撃を受けたのが男性ばかりだったことに驚く。カラスなりに、敵とみなす判断基準があったのかもしれない。
今月初めに、皇居東御苑内に行ったことを思い出す。

御苑内の三の丸尚蔵館では、「鳥の楽園」というテーマで展示を行っていた。

鷹、鳩、クジャク、鶏、鶴などが描かれた焼き物や彫刻が展示されていたが、たしかカラスもあったはず。
鳥が好きな人は、襲撃されなかったりして。

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