これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

私が選ぶこの一冊

2015年12月03日 22時05分52秒 | エッセイ
 来週は、エッセイ教室の忘年会がある。
 先日、リーダーからメールが送られてきた。
「今回はプレゼント交換をしましょう。プロが書いたエッセイ集を一冊、用意してください」
 各自のお気に入りを持ち寄り、読み比べるのもまた一興というわけだ。これという本を探さなくては。
「うーん、何にしよう……」
 私の好みはユーモアのあるエッセイだ。原田宗典にあたりをつけて、ジュンク堂に行く。ネットで買うほうが楽なのだが、中身はすっかり忘れている。実物を見て、「ああ、こういう話だったな」と思い出さなくてはいけない。
 ところが、原田宗典の本は品ぞろえが悪かった。代わりに、妹の原田マハがたくさん並んでいる。
 いつのまに!
 時代の移り変わりを感じるばかりだった。
 次の候補を考える。土屋賢二はどうだろう。売れているのか、本棚にはズラリと著書が並んでいる。一冊手に取って中を見ると、作者の経歴が書いてあった。どうやら、哲学者が本業のようだ。となると、今回の趣旨からズレているかもしれない。
「これもダメかぁ……」
 米原万里も、涙が滲むくらい笑わせてくれる本を書いているが、本業はロシア語通訳。同様の理由でやめておいた。
 当てもなく売り場をうろついていたら、江國香織が目に入った。『とるにたらないものもの』はタイトルだけ聞いたことがある。すぐさま棚に駆け寄り、「これはどうだ?」とページをめくってみた。
 この人の文章は、夕焼けの空のように美しい。独特のリズムを刻みながら、優雅な情景を描き出し、いつしか、まったく異質な世界に入り込んでいく。これを読んだら、自分のエッセイが変化するような気がした。
 しかし、読み進んでいくと、だんだん飽きてくる。事件がないからだろうか。目の肥えた熟女たちには単調かもしれないと、泣く泣く本棚に戻した。
「仕方がないな……」
 実は、どうしても見つからなかったら、これにしようと決めていた本がある。
 辻 仁成著 『そこに僕はいた』



『冷静と情熱のあいだ』を読んだことがきっかけで、辻仁成の作品に興味を持った。この本は図書館で借りたのだが、単なる昔話をユーモラスに描写するだけでなく、今にどうつながっているかが描かれていて、妙に心に響く。「教訓になるな」と思う部分もあり、プロの技量を感じた作品である。
 探してみたら、「やっと来たか」と言わんばかりに、本棚で待っていた。ピックアップして、レジに持って行く。
 おそらく、10年ぶりの再会である。忘年会までに、もう一度目を通しておこう。お姉さま方も、気に入ってくれるとよいのだが。
 さて、みなさんだったら、どの本を選びますか?


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (4)
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