これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

『走れメロス』に思う

2016年11月20日 22時21分30秒 | エッセイ
『走れメロス』を読んだ。
 あらすじはご存じの方が多いのではないか。まあ一応、おさらいをしておきたい。
 正義感の強いメロスが、旧友に会うためシラクスという市に行くが、どうも人々の様子がおかしい。聞けば、人を信じられぬ王が、毎日のように人を殺しているのだいう。激怒したメロスは、王を殺すために短剣を携えて王城へ乗り込む。しかし、警吏に捕えられ、あっけなく囚われの身になってしまう。このままでは当然、処刑される。
 死を恐れぬメロスではあるが、婚礼を控えた妹が気がかりだった。両親はとうに亡く、妹の婚礼を無事にすませるまでは生きていたい。王に「3日待って欲しい。もし、3日後の日没までに戻ってこなければ、旧友を絞め殺すがいい」と持ち掛けると、受け入れられた。
 しかし、3日間はあまりにも短かった。メロスは夜通し道を急いで妹の元へ戻り、婚礼の準備を整え、花婿を説得して強引に式を挙げてお祝いするが、必死で走っても、旧友の処刑までに間に合うかどうか……。

 明らかに、期限の設定ミスである。王が「3日で戻ってこい」と言ったわけでもないのに、なぜ3日にしたのだろう。4日にしておけば、もっとゆとりがあったのに。もっとも、「死にたくない」という気持ちが、たとえわずかでもあれば、戻ってくるのがギリギリになることに変わりはないだろうが。
 そもそも、なんの勝算もなく王城に乗り込むこと自体が間違っている。妹の婚礼がすむまで死ねないのに、計画性も作戦も仲間もゼロで突撃するとは狂人か。だったら、婚礼を終えてからにしろよと言いたくなった。
 細かいところは気になるが、ラストは期待通りのハッピーエンド。私はこの話が好きになった。太宰という作家の暗いイメージばかりが先行し、ろくに読みもしなかったことを悔やむ。遅ればせながら、他の話も読んでみようと文庫を注文した。ついでに、ずっと欲しかったPCメガネも追加する。
 今日は墓参りに行くため、9時半に家を出た。途中でコンビニに寄り、PCメガネと文庫の代金を払う。これで、商品の出荷手続きが行われるはずだ。
「いい天気だね。俺も行くよ」
 23日は義父の命日だ。娘と2人で墓参りに行こうとしていたら、息子である夫も珍しくついてきた。外出が嫌いなので、父親の墓には一度しか行ったことのない親不孝息子である。血のつながっていない妻が行くのに、実の息子の自分が行かなくてどうする、と奮起したのかもしれない。
 戻ってきたらジムが待っている。荷物を置いて支度をしていたら、夫が「何時になるの?」と尋ねてきたので「6時」と答えておいた。
 今日に限って、スカッシュのコートが予約で埋まっていた。私が取れたのは40分後のコマで予定が狂う。結局、帰宅が6時半になってしまった。でもいいのだ。私はメロスではないから、帰りが遅くなったからといって、何かの罰が待っているわけではない。存分に体を動かし、すっきりして帰ってきた。
「おかえり。荷物が来ているよ」
 おお、朝、代金を振り込んだから、日没には商品が届くのか! さすがはヨドバシ。いつも早い。3日後どころか即日到着である。
 段ボールを開けると、PCメガネと



 太宰の文庫本が2冊入っていた。



 しかし、本は後回し。まずはPCメガネを試してみる。
「うわあ~、目が疲れない! すごいねぇ、これ」
 PC操作の多い私には、ありがたい一品と感動した。太宰なんぞいつでも読める。私は目を労わりたいのだ。文庫本は出窓の積読に移動する。
『走れメロス』は、「人を信じることの大切さ」と説いた小説なのであろう。
 同時に「人のために全力を尽くすことは幸せ」と、「全力を尽くせる相手がいることは幸せ」という作家からのメッセージが込められている気がした。
 ベストセラーばかりを追わず、たまには明治にタイムスリップすると新鮮でよい。


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コメント (8)
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