新年早々、ブログの更新をサボってばかりいる。
実は、長崎まで家族で旅行していた。留守中の部屋はほこりだらけだし、膨大な洗濯物と写真の整理に追われ、ちょっとダラダラしていたところである。
長崎には修学旅行の引率で一度行ったが、いかんせん仕事だから、自分のペースで観光地を回ることができない。今回はプライベート。雲仙や佐世保は遠いからパスして、市内を好き勝手に巡ることにした。
「グラバー園でレトロなドレスをレンタルできるって。行こうよ」
「ええ~、ドレス? 別に着なくたっていいんだけど」
コスプレ大好きの私は思い切り食いついたが、大学2年の娘はさほど乗り気ではない。しかし、気づかなかったことにして、路面電車にギュギュっと押し込んだ。
グラバー園の前に大浦天主堂を見る。
ステンドグラスが美しい。荘厳な雰囲気に気持ちが洗われ、献金をして祈る。決して、「年末ジャンボは残念でしたが、サマージャンボはぜひ」などという内容ではない。
「あ、ここからグラバー園に行かれるよ。近道だ」
祈りが終わり、ぞろぞろと移動を始めた。動く歩道に乗ると、レトロ写真館はすぐそこだ。
「いらっしゃいませ。こちらにお名前、住所、ご利用人数を書いてください」
写真館は3名ほどで切り盛りしているようだ。利用客は圧倒的に女性が多く、時間帯によっては待ち時間が長い。私が受付簿に記名している間にも、カップルが1組、母親と女児が1組、着替えて外出するところだった。
問題は夫だ。おとなしく待っていられるかどうか……。
「あのう、男性用の衣装はあるんですか?」
「はい。龍馬の着流しのみですが、あります」
女性用のドレスは50着あると聞いた。差がありすぎるとはいえ、需要がないのだから妥当なところか。
「俺はいいよ。着ない」
夫は漢方薬を飲んだような顔をして、首をブンブンと横に振った。何というノリの悪いヤツ。
料金は30分600円。新作ドレスは1000円だったり、1500円だったりするけれど、かなり安い。
しかし、予想外の問題があった。サイズである。50着のうち7割くらいがMなのだが、私はSである。しかも背が低いので、ワンピースではなくツーピースタイプでないと引きずってしまうらしい。赤系を着たいと思っていたが、やむを得ず緑のドレスにした。クソッ。
「えー、どれにしよう」
幸い娘はMサイズなので、種類が豊富なはずだが、たくさんあるから決められないでいる。
「これがいいんじゃない。さっき、お母さんが着ようと思ったけど、大きくてやめた」
「ふーん。じゃあ、これでいいや」
ドレスが決まれば話が早い。更衣室に案内され、大きく広がるペチコート、スカート、上衣の順に着つけてもらうだけだ。スカートの下にはズボンをはいている。見えないからといって、こんなに手抜きをしていいものだろうか。
「じゃあ、12時5分までです。ごゆっくりどうぞ」
「はーい」
貴重品とカメラは、専用の袋を借りて持ち歩く。居眠りしながら待ちくたびれていた夫を呼び、カメラマンを頼む。まずは、グラバー邸前で撮った。
すでに先客がいたのに、ドレスを着ていたら場所を空けてくれた。もしや、「変なヤツが来た」とか「関わり合いになりたくない」などと思われたのかもしれないが、非常にありがたい。
「お母さん、この服、寒い~」
「えっ、そう?」
「あっ、そのドレス、襟が詰まっているじゃないか。だから寒くないんだな」
「そうかも」
「謀られた」
そんな基準で選んだわけではないけれど、内心「あっちじゃなくてよかった」と安堵する気持ちもあり、オニババぶりを自覚した。
ドレスを着て、いくつかわかったことがある。まず、グラマーでないと似合わない。私はSでも胸元がブカブカで貧相だった。逆に、ふくよかな人はよく似合っていて羨ましかった。
それから、つばのある帽子は撮影場所を考えなければならない。日差しの下だと、顔が影になってしまうからだ。夫は、イヤイヤ撮っていたので何も言わなかったが、でき上がった写真は目元が暗くてガッカリした。自分で、帽子の位置をずらしてもいいだろう。
最後に、ドレスを着たままレストハウスに行くといい。ここには、プリクラ機があるからだ。500円と強気の価格設定であるが、記念になるに違いない。残念なことに、私はドレスを返却してからそのことに気づいた。
「ねえ、お母さん。ミキは結構似合ってない?」
ぽっちゃり型の娘は、ドレス姿の自分に満足したようだ。スマホを取り出し、何枚も何枚も自撮りしている。
たしかに似合っている。
「振袖より似合うかもよ。成人式の写真、こっちにしたら?」
「おかしいだろっ」
「あはは」
わずか15分ほどでドレスを返却したが、2時間くらい歩き続けたような疲労感が待っていた。コスプレは体力のいるイベントなのである。
「カステラ食べたい」
待ちくたびれた夫にせがまれ、カフェに行く。
温かいカフェオレが、疲れた体を駆けめぐる。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
実は、長崎まで家族で旅行していた。留守中の部屋はほこりだらけだし、膨大な洗濯物と写真の整理に追われ、ちょっとダラダラしていたところである。
長崎には修学旅行の引率で一度行ったが、いかんせん仕事だから、自分のペースで観光地を回ることができない。今回はプライベート。雲仙や佐世保は遠いからパスして、市内を好き勝手に巡ることにした。
「グラバー園でレトロなドレスをレンタルできるって。行こうよ」
「ええ~、ドレス? 別に着なくたっていいんだけど」
コスプレ大好きの私は思い切り食いついたが、大学2年の娘はさほど乗り気ではない。しかし、気づかなかったことにして、路面電車にギュギュっと押し込んだ。
グラバー園の前に大浦天主堂を見る。
ステンドグラスが美しい。荘厳な雰囲気に気持ちが洗われ、献金をして祈る。決して、「年末ジャンボは残念でしたが、サマージャンボはぜひ」などという内容ではない。
「あ、ここからグラバー園に行かれるよ。近道だ」
祈りが終わり、ぞろぞろと移動を始めた。動く歩道に乗ると、レトロ写真館はすぐそこだ。
「いらっしゃいませ。こちらにお名前、住所、ご利用人数を書いてください」
写真館は3名ほどで切り盛りしているようだ。利用客は圧倒的に女性が多く、時間帯によっては待ち時間が長い。私が受付簿に記名している間にも、カップルが1組、母親と女児が1組、着替えて外出するところだった。
問題は夫だ。おとなしく待っていられるかどうか……。
「あのう、男性用の衣装はあるんですか?」
「はい。龍馬の着流しのみですが、あります」
女性用のドレスは50着あると聞いた。差がありすぎるとはいえ、需要がないのだから妥当なところか。
「俺はいいよ。着ない」
夫は漢方薬を飲んだような顔をして、首をブンブンと横に振った。何というノリの悪いヤツ。
料金は30分600円。新作ドレスは1000円だったり、1500円だったりするけれど、かなり安い。
しかし、予想外の問題があった。サイズである。50着のうち7割くらいがMなのだが、私はSである。しかも背が低いので、ワンピースではなくツーピースタイプでないと引きずってしまうらしい。赤系を着たいと思っていたが、やむを得ず緑のドレスにした。クソッ。
「えー、どれにしよう」
幸い娘はMサイズなので、種類が豊富なはずだが、たくさんあるから決められないでいる。
「これがいいんじゃない。さっき、お母さんが着ようと思ったけど、大きくてやめた」
「ふーん。じゃあ、これでいいや」
ドレスが決まれば話が早い。更衣室に案内され、大きく広がるペチコート、スカート、上衣の順に着つけてもらうだけだ。スカートの下にはズボンをはいている。見えないからといって、こんなに手抜きをしていいものだろうか。
「じゃあ、12時5分までです。ごゆっくりどうぞ」
「はーい」
貴重品とカメラは、専用の袋を借りて持ち歩く。居眠りしながら待ちくたびれていた夫を呼び、カメラマンを頼む。まずは、グラバー邸前で撮った。
すでに先客がいたのに、ドレスを着ていたら場所を空けてくれた。もしや、「変なヤツが来た」とか「関わり合いになりたくない」などと思われたのかもしれないが、非常にありがたい。
「お母さん、この服、寒い~」
「えっ、そう?」
「あっ、そのドレス、襟が詰まっているじゃないか。だから寒くないんだな」
「そうかも」
「謀られた」
そんな基準で選んだわけではないけれど、内心「あっちじゃなくてよかった」と安堵する気持ちもあり、オニババぶりを自覚した。
ドレスを着て、いくつかわかったことがある。まず、グラマーでないと似合わない。私はSでも胸元がブカブカで貧相だった。逆に、ふくよかな人はよく似合っていて羨ましかった。
それから、つばのある帽子は撮影場所を考えなければならない。日差しの下だと、顔が影になってしまうからだ。夫は、イヤイヤ撮っていたので何も言わなかったが、でき上がった写真は目元が暗くてガッカリした。自分で、帽子の位置をずらしてもいいだろう。
最後に、ドレスを着たままレストハウスに行くといい。ここには、プリクラ機があるからだ。500円と強気の価格設定であるが、記念になるに違いない。残念なことに、私はドレスを返却してからそのことに気づいた。
「ねえ、お母さん。ミキは結構似合ってない?」
ぽっちゃり型の娘は、ドレス姿の自分に満足したようだ。スマホを取り出し、何枚も何枚も自撮りしている。
たしかに似合っている。
「振袖より似合うかもよ。成人式の写真、こっちにしたら?」
「おかしいだろっ」
「あはは」
わずか15分ほどでドレスを返却したが、2時間くらい歩き続けたような疲労感が待っていた。コスプレは体力のいるイベントなのである。
「カステラ食べたい」
待ちくたびれた夫にせがまれ、カフェに行く。
温かいカフェオレが、疲れた体を駆けめぐる。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)