これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

あらまあ、検査結果

2018年03月11日 21時21分18秒 | エッセイ
 ようやく、医師に人間ドックの検査結果を聞くことができた。
 水色の診察着を着た、かなり年配の内科医が私の名前を呼ぶ。「はい」と答えて診察室に入るが、話を聞くだけなので気が楽だ。
「えーと、まずは心電図から。不完全右脚ブロックと書いてあるけど、高血圧じゃなければ心配いりませんからね」
 決して上からものを言う態度ではない。メモをとりながら、知りたいことを聞きやすい雰囲気でいいなと思った。
「胸部X線では異常陰影の疑いがありましたが、CTの結果は問題なしでした。でも、別の箇所に違う影が映っていましたから、4カ月後にまたCT撮りましょう」




 CTは5000円以上かかるので、2回も撮るのは痛いが、健康には代えられない。すでに7月に予約が入れている。あとは様子見だろう。
「次は胃ですね」



 実は、この「萎縮性胃炎」という記述が一番気になっている。この5文字がなければ、わざわざ結果を聞くための予約は入れていない。痛みなどの自覚症状はゼロだし、どこがいけないのか知りたかった。
「つまり、これは胃の粘膜の老朽化ですよ」
「老朽化?」
「今まで一度も言われていない? 写真を見ましょう」
 患部のレントゲン写真がPC画面に登場したが、一般的な胃の形に見えなかったので、自分のものと認めるのがイヤだった。
「……長いね」
 医師も笑いをこらえているように見える。そこに映っているものは、胃というよりテナーサックスだ。何でこんなに直線部分が長いのだろう。
「この丸いところです。おそらくピロリ菌がいると思われますので、来年は胃カメラと内視鏡の検査をおススメします」
「ピロリ菌がいるとどうなるんですか」
「胃がんのリスクが高まります。胃がんの患者からは、ほぼ100%ピロリ菌が検出されているんですよ」
「ひいいい」
 ちなみに、私は完全なる胃下垂らしい。もっとも、胃下垂という言葉を使うのは60代以上の医師ぐらいで、今は胃が垂れ下がっていようが伸びていようが、病気ではないから構わないでおくそうだ。だが、自分の胃がこんなにカッコ悪いとは……。満腹になると、重みでますます長くなりそうだから、腹七分目でやめておこうと誓った。
「白血球3.5とありますが、3あれば問題ないので気にしなくていいです」



「LDHも低いけれど、これも問題ありません」



「……ただねぇ。HbA1c、これは高いです。理想は5.5以下ですから」



 やはり言われたか! 私が最も気にしている血糖値を。
「あ、先生。ワタシ、ビールをやめたんです。だから、きっと下がると思います」
「ビール? でも、甘いものが好物と書いてありますよ」
「はい。甘いものは好きですが、ビールはなくてもいられます」
 しかし、医師は「うん」と言うどころか、体全体をこちらに向けて説得し始めた。
「いえ、ビールはやめなくていいです。甘いものをやめてください」
 もしや、ビール党? やけにビールの肩を持つ。
「でも、ビールの方が簡単にやめられるんです」
「いやいや、ビールを飲めば血行もよくなるし、やめなくていいですよ」
「わあわあ」
「ぎゃあぎゃあ」
 結局、平行線のまま診察室を出てきた。もちろん、甘いものは極力減らす気でいるけれど、ビールは飲まなくてもいいだろう。
 焼酎派、ワイン派の医師だったら、また違ったアドバイスが飛び出したのかしら。


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コメント (6)
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