これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

見えない脅威

2019年08月11日 21時02分48秒 | エッセイ
 福島まで、一泊二日の宿泊研修に行ってきた。
「校務遂行上の課題」などというお堅い内容もあったが、カウンセリングやリラクゼーションといったソフトなものもあった。
「時間の無駄」とウンザリしていた参加者もいたけれど、食事は豪華だったし、



 温泉もついていたし、ダンスショーも見られたし





 知り合いが増えた点ではよかったと思う。
 しかし、私は大事なものを忘れてしまい、不自由な思いをした。
「ああっ、アイボンがなーい!」
 何というドジを踏んだのか。ものもらいや結膜炎などのトラブルが多いため、朝晩欠かさず目の洗浄をしようとトラベル用を買ったのに、まさかキャリーに入れ忘れるとは。



「まあいいや、一日くらい大丈夫だろう」
 本当にそう?
 うーん、たぶん……。

 福島が会場に選ばれた理由は、震災学習ができるからであろう。チェックアウト後、三春町にある福島県環境創造センター交流棟に案内された。ここは、コミュタン福島と呼ばれており、「福島のいまを知り、放射線について学び、未来を描く」施設である。
 思わず、じっと見入ってしまったのが、福島第一原子力発電所の模型だ。



 2011年3月11日、福島第一原発は津波によってすべての電源を失い、原子炉を冷却できなくなったため、メルトダウンを起こし大量の水素が発生した。翌12日には一番右の1号機で水素爆発が発生し、建屋が大破した。隣の2号機では、建屋のパネルが落下し穴ができた。ここから水素が流出したため、爆発を逃れている。14日には3号機が爆発しただけでなく、配管を伝ってひそかに水素が4号機に移動しつつあった。よって、稼働していなかった4号機でも、15日に水素爆発が起きた。
 こうして、放射性物質が広範囲に広がり、住民の方々に避難勧告が出されることになったわけだ。しかし、見えない脅威である「放射線」と戦い、地道に除染を続けた結果、県内各地に設置された線量計は他の都市と同程度の数値を示すようになった。農作物などの食品から検出される放射線は、ほぼゼロとなり、給食の材料として採用する自治体も増えたというから、「福島を必ず復興させる」との強い意気込みに心をうたれた。
 来てよかった。
 ひとまず、復興支援の一助になればと、あれこれお土産を買い求める。パイナップルダクワース、あかべえサブレー、ままどおる、バナナクーヘンを、すき間だらけのキャリーに詰め込んだ。
「ただいまぁ」
「おかえり」
 夫に土産を渡すと、喜んでガツガツと食べ始めた。留守中、ろくなものを食べていなかったのかもしれない。
 しかし、バナナクーヘンの外箱が、まったくエレガントでない有様になっていたのはいただけない。



 もっと文明的な開け方をしたらどうなのか。
 よほど切羽詰まっていたのだろうと、呆れるしかないけれど。

 ところで、一日アイボンを使わなかったせいで、帰宅後から私は目やにに悩まされている。結膜も充血しているから、間違いなく結膜炎であろう。泊まった部屋が畳で、4人分の布団が敷かれたことを考えると、ハウスダストが原因と考えられる。私はハウスダストアレルギーなのだ。
「うーん、ネバネバしていて気持ち悪いなぁ」
 抗菌目薬を差したら、少しずつよくなってきた。右目の充血は引いたが、左目にはまだ残っている。もうちょっと頑張らなくては。
 レベルは全然違うけど、ハウスダストもまた、見えない脅威ってことか……。


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コメント (8)
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