これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

映画「人間失格」と哀れなカニ

2019年09月29日 22時13分12秒 | エッセイ
 公開中の映画「人間失格」を観てきた。



 今週は休みがない。土曜日は半日出勤、日曜日も半日出勤となり、一日ぐうたらできないところがツラい。
 でも、一日出勤ではないのだから、合間を縫って映画館に行くことにした。
 作品からして、太宰治という人は病んでいる。心だけでなく、体も病んでいる。でも、小説は素晴らしい。平成の流行作家よりも、太宰の作品に読みごたえを感じる。4月からの勤務校は、図書館に太宰の本がズラリと並んでいてうれしい。時間を作ってもっと読みたいと思う。
 そういう人間にはいいかもしれないが、単に「小栗旬が好き」「沢尻エリカを見たい」だけでは楽しめない映画という気がした。大金持ちの家に生まれながら、その重みを嫌った太宰治。そもそも、メンタルの弱い人間だったのに、流行作家として、期待通りの作品を生み出さねばならぬプレッシャーもあったようだ。病気になっても、酒と煙草を欠かさずに、どんどん悪化していく過程では、「軟弱者、それでも男ですか」と平手打ちをくらわせたくなるくらいイライラした。
 ところで、私にはどうでもいい場面に固執する性質がある。二階堂ふみの演じる山崎富栄が買い物をする場面がそれだ。富栄は、太宰が一緒に入水自殺をした相手で、中盤からは心中をほのめかす会話が続いていた。
 太宰はカニが好きだったらしい。富栄は、太宰のためにカニを買う。たしか、値札は「千四百圓」ではなかったか。相当な値段だから、屋台のオヤジが「来月、生活できなくなるよ」と声をかけた。
 だが、富栄は意味ありげに微笑んで、「いいんです」と答えて代金を払う。「もう来月は生きていないから、いいんです」を略して答えたとも知らずに、オヤジはカニを包んで渡した。
 ところが、このあと、太宰に事件が起きたため、富栄の元から走り去っていく。あとは、太宰しか映さない。私の頭の中がモヤモヤとし始めた。
「ねえ、カニは? カニはどうなったの?」
 だって、千四百圓じゃないの? そんなに払ったのに、食べさせたい相手がいなくなるって、どういうこと? 割に合わないじゃないの、おかしいでしょ!
 ここで一気に、富栄の心境になってしまった。ああ、カニがカニがカニが~!
 映画が終わったら夕食だ。この映画館は、新宿伊勢丹の至近距離にある。7階の西櫻亭に向かった。
 ヴィシソワーズ。



 こんなにクリーミーでコクのあるものは珍しい。十分堪能した。
 メイン。



 黒毛和牛のカットステーキは少々脂っぽかった。その隣に並ぶ、2つの楕円のものが何だかおわかりになるだろうか。そう、「カニクリームコロッケ」なのだ。
「やっぱ、カニよカニ。うーん、うまっ!」
 タルタルソースがよく合い、口の中でとろけて実に美味であった。
 デザートはプリン。



 トラディショナルな味がして、王道を行く正統派という評価だ。大変満足した。
「ああ、これで、カニの敵をとった気分だわぁ」
 次回は、もっとわかりやすくて明るい映画を選ぼう。
 私はそう決めた。


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コメント (8)
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