これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

年度の変わり目

2022年04月03日 21時03分34秒 | エッセイ
 3月31日を最後に、3年間勤めた学校から異動した。
 ラストとはいえ、時間との戦いの結果、去り行く余韻に浸る余裕なんぞなかった。
「ひええ、片付けが終わらない! もう8時だよ」
 もはや去りがたさを感じる時間ではなく、一刻も早く帰って、温かいご飯にありつきたい。超特急で書類をリサイクルに出し、PCをシャットダウン。これでおしまいだ。
 時計を見ると8時半ではないか。これから荷物を準備すれば、どうにか9時までには帰れるだろう。
 もう、職員としてこの学校に来ることはないのに、気が急いて、うしろを振り返る気持ちになれなかった。
「早く早く。あっ、雨が降ってる」
 天気予報は見ていたが、レインウェアはとうの昔に持ち帰ってしまった。まさか、こんなザーザー降りになるとは。
「いいよ、もう。このまま行っちゃえ」
 大きめの雨粒が額にも肩にもぶつかってきた。なんと非情な。前がよく見えないけれど、時間が時間だから、車もほとんど通らない。そのまま自転車にまたがり、15分間突っ走る。最終日に濡れネズミになるなんて、タイミング悪う~。
 家に着き、食後にひと息ついてから、職員からいただいたお菓子などを開けてみた。
「あら、これは食べ物じゃないね」



 アナスイのオシャレな柄が見える。箱の裏には「エコバッグ」と書いてあった。



「へえ~、可愛い! いいのもらっちゃった」
 ひと目で気に入った。センスのいい贈り物がうれしい。
 もっとも、言葉の贈り物が一番ありがたい。最後だからと、何人かの職員が別れの挨拶をしてくれたことを思い出す。泣き虫ではないけれど、目の周りがジンジンと熱っぽくなった。この先、違う職場になっても、いつかどこかで会いたいものだ。
 翌日、すぐに令和4年度がやってくる。ずぶ濡れになっても風邪をひかなくてよかった。
 さっそく、エコバッグに上履きや文房具などを入れて、地元の駅に向かう。行き先は渋谷方面。副都心線乗り入れの電車は本数が少ないので、乗り遅れるわけにはいかない。
「ギャッ、もうこんな時間!」
 頭でわかっていても、荷物が重くて、早く歩けなかった。結局、最後は小走りになり、目当ての電車に飛び乗った感じだ。
 ずぶ濡れに、駆け込み乗車。
 新しい職場には、旧知の友人が何人かいて、笑顔で迎えてもらった。
 でも、気持ちを引き締めないと、いろいろと失敗しそうな予感がする。
 ファイト~!


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (8)
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