母が急きょ、入院した。
「下血したから病院に行ったら、腸に穴が空いているって言われて、今度手術だよ」
たしか、今年で79歳。体にガタがきてもおかしくない。痛みがないのが、せめてもの救いだ。あっという間に手術の日が来て、なんとか無事に終わったようで、ひとまずホッとした。
「面会はダメって聞いたから、来なくていいからね」
おっ強気。心配をかけまいとする母の気づかいだろうが、鵜呑みにしていいものかどうか。たしかに感染対策は必要だろうけど、今は遠くから回復を祈っておこう。
心配なのは母だけではない。82歳の父を一人にして大丈夫かと気になった。
「平気だよ。ご飯ぐらい、自分で作れるでしょ」
母はそう言うが、父が料理をする場面を見たのは何十年前だったか。母が元気になって退院しても、父が家で衰弱していたら元も子もない。あとから「見に行けばよかった」と後悔するのはイヤだ。とたんに不安が倍増して、実家に電話をかけてみた。
「あ、お父さん? 砂希だけど、元気なの」
「なんだ、砂希か。久しぶりだな。元気だよ」
意外なことに、父は張りのある声で、ハキハキと受け答えをしていた。最後に会ったのは2年前の1月だったけれど、そのときよりも、遙かにしっかりしている印象だった。
「ご飯は食べた?」
「食べたよ」
「何を作ったの?」
「ご飯を炊いて、家でとれた野菜と一緒に食べた」
「へー、やるじゃん」
じゃあね、と挨拶して電話を切った。なんで、急に自立したのかと首を傾げつつも、歓迎すべき変化だ。これなら、食事を作りに行かなくても平気かもしれない。なにしろ、私だって4倍になった通勤時間と、慣れない職場での気疲れで休みたいのだから。
昨日も父に電話をした。
「今日は何を作ったの」
「毎日似たようなもんだな。ご飯は今日でなくなるから、明日、また炊かなくちゃ」
「じゃあ、炊き立てを食べられるじゃない」
「そうだな」
よかった、やっぱり大丈夫そうだ。親はなくとも子は育つというけれど、世話しなくても親は元気、なんて言葉もあったりして。
そんなこんなで、この土日は家にいたのだが、持ち帰り仕事が一向にはかどらない。ダラダラと過ごし、すぐに眠くなったりして、半分も終わらなかった。
「あー、ダメだ。体が働きたくないって言ってる」
思えば、3月末から異動の準備で忙しく、短い睡眠時間と長時間労働を繰り返してきた。疲れたら無理せず、ペースダウンしないと身が持たない。
「やめやめ。あとは明日にしよう」
そう決めて、さっさとパソコンや資料をしまった。
もう若くないのだから、全力で仕事をしてはいけないと悟った。
親の面倒をみられる余力を残し、休み休み働かなくては。
今度、実家に行くときは、カレーでも用意して、こんな感じに作ってあげようかな。


↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「下血したから病院に行ったら、腸に穴が空いているって言われて、今度手術だよ」
たしか、今年で79歳。体にガタがきてもおかしくない。痛みがないのが、せめてもの救いだ。あっという間に手術の日が来て、なんとか無事に終わったようで、ひとまずホッとした。
「面会はダメって聞いたから、来なくていいからね」
おっ強気。心配をかけまいとする母の気づかいだろうが、鵜呑みにしていいものかどうか。たしかに感染対策は必要だろうけど、今は遠くから回復を祈っておこう。
心配なのは母だけではない。82歳の父を一人にして大丈夫かと気になった。
「平気だよ。ご飯ぐらい、自分で作れるでしょ」
母はそう言うが、父が料理をする場面を見たのは何十年前だったか。母が元気になって退院しても、父が家で衰弱していたら元も子もない。あとから「見に行けばよかった」と後悔するのはイヤだ。とたんに不安が倍増して、実家に電話をかけてみた。
「あ、お父さん? 砂希だけど、元気なの」
「なんだ、砂希か。久しぶりだな。元気だよ」
意外なことに、父は張りのある声で、ハキハキと受け答えをしていた。最後に会ったのは2年前の1月だったけれど、そのときよりも、遙かにしっかりしている印象だった。
「ご飯は食べた?」
「食べたよ」
「何を作ったの?」
「ご飯を炊いて、家でとれた野菜と一緒に食べた」
「へー、やるじゃん」
じゃあね、と挨拶して電話を切った。なんで、急に自立したのかと首を傾げつつも、歓迎すべき変化だ。これなら、食事を作りに行かなくても平気かもしれない。なにしろ、私だって4倍になった通勤時間と、慣れない職場での気疲れで休みたいのだから。
昨日も父に電話をした。
「今日は何を作ったの」
「毎日似たようなもんだな。ご飯は今日でなくなるから、明日、また炊かなくちゃ」
「じゃあ、炊き立てを食べられるじゃない」
「そうだな」
よかった、やっぱり大丈夫そうだ。親はなくとも子は育つというけれど、世話しなくても親は元気、なんて言葉もあったりして。
そんなこんなで、この土日は家にいたのだが、持ち帰り仕事が一向にはかどらない。ダラダラと過ごし、すぐに眠くなったりして、半分も終わらなかった。
「あー、ダメだ。体が働きたくないって言ってる」
思えば、3月末から異動の準備で忙しく、短い睡眠時間と長時間労働を繰り返してきた。疲れたら無理せず、ペースダウンしないと身が持たない。
「やめやめ。あとは明日にしよう」
そう決めて、さっさとパソコンや資料をしまった。
もう若くないのだから、全力で仕事をしてはいけないと悟った。
親の面倒をみられる余力を残し、休み休み働かなくては。
今度、実家に行くときは、カレーでも用意して、こんな感じに作ってあげようかな。


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