これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

日本の自然を描く展

2018年07月29日 21時09分00秒 | エッセイ
 先週、姉と会ってスペイン料理を食べた。
「忘れないうちに渡しておくわね。はい、これ」
「ありがとう」
 姉から受け取ったのは、来月、上野の森美術館で開催される「日本の自然を描く展」の招待券だ。絵画を習っている姉がこの展示作品に応募したところ、見事入選し、展示されるという。ぜひ見に行きたいと伝えたら、出品者分の招待券を分けてもらえることになった。
「あとね、これがポストカード」
「えっ」
 びっくりした。姉の絵が美術展で売られているようなポストカードになっていたのだ。もっとも、売店には並んでいないようだが。



 今回の絵は、一面のネモフィラを描いたものだが、細かい作業の連続だったように見える。ネモフィラは、花の中心が白く外側が青い。白を置いた周りを、グルっと青で囲む工程を何百回繰り返したのだろうか。



 近くの花は大きく、遠くの花は小さく、遠近感や濃淡をつけて描き分けるとは恐れ入る。姉は子どものときから、手先が器用で丁寧さのある人だった。塗り絵をすると、私と違って隅から隅まで均等な濃さになるよう、せっせと色鉛筆を動かしていたことを思い出す。とりあえず、色分けする意識しかなかった私とは雲泥の差であった。こういう地道な努力は、その道のプロにきちんと伝わるものなのだろう。
「図書カードもあるよ」
「へー」



 すごいなぁ。図書カードも作ってくれるのだ。自分が入選したわけでもないのに、誰かに見せて回りたい気分になる。「ほら、これを見てください。私の姉の作品なんですよ」ってね。
「ダンナさんのと、ミキのもあるから、2人にもあげてくれる?」
「悪いわね、ありがとう」
 3人分のポストカードと図書カードを、なくさないようバッグにしまう。責任を持って渡さなくては。
 そんなやりとりをしていたら、料理が運ばれてきた。



 ワインやスペインビールを飲みながら、絵やエッセイの話題で盛り上がる。姉とは趣味が合うから、お盆前には山にも行くことになった。大月駅から歩いて行かれる岩殿山だ。時間やアクセス、持ち物などの打ち合わせも必要だ。
「パエリアでございます」
「わ~い」



 私は「いかにも!」というパエリアにしたが、姉はイカスミのパエリアを選んだ。
「ほらほら、こっちも撮っていいわよ」
 姉が写して欲しそうだったので、こちらもパシャリ。



 半分こして食べたら、イカスミの方が美味しかった。ような気がする。
 デザートを食べ、ワインを飲み干し、店をあとにする。
 楽しかった~!
 帰り道で、バッグの中身について考えた。芸術を解さない夫が、果たしてポストカードなどをありがたがるだろうか……。
 娘は絵が好きだから、素直に喜ぶだろう。だが、夫の反応が少々心配だ。
 翌日、夫が起きて、新聞を読んでいるところに、姉から預かったものを持っていった。まずは図書カードからだ。
「図書カード? いらない。本は読まないから」
 実のところ、本が読めないのか、字が読めないのか、判断が難しい気がする。ひとまず、ここまでは想定内の反応だ。でも、ポストカードへの反応は違った。
「え? これ、お義姉さんの絵? 自分で描いたの?」
「そうよ。入選したから、今度、上野の森美術館に展示されるの」
「へー、上手だね。写真みたい」
 そうだろ、そうだろ。夫はポストカードをじっくり見たあと、「これはもらっておこう」と言って、ファイルにしまい始めた。よしよし。
 横から娘が飛び出してきて、夫が放置した図書カードに手を伸ばし、「そりゃあ、いただきぃ!」と奪い取っていった。2枚もゲットして、彼女はウハウハである。これにて一件落着、と言っていいのかどうか。
 展示期間は、8月24日から28日である。
 気が向いたら、ぜひ、お立ち寄りください。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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10 コメント

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これからも、ぜひ (白玉)
2018-07-29 22:20:11
お姉様の絵がポストカードや図書カードに!
ネモフィラは一度でも見に行きたいと思っているし、
力作は、絶対 カードにする値打ちがありますね。
そして、スパニッシュ&ワインのランチも、
夏バテを吹き飛ばしてくれる勢い♪
返信する
絵心がない私でも凄い!って思ってしまいました (鹿島田の純)
2018-07-30 02:51:33
プロの画家さんの作品みたいですね~!自分の作品がテレカやポストカードになるなんて凄すぎですね。普段は砂希さんの絵の部分は飛ばして食べ物部分にコメ入れてましたが、今回はあまりに凄いので食べ物部分は書けません(笑)これを職業にすればよいのに。個展も開けますね。
返信する
ネモフィラ (砂希)
2018-07-31 21:49:46
最初はラベンダーと間違えました。
何か違うと思ったら、ネモフィラだったんですね。
私も見に行きたくなりました。
花を描くのも大変なのに、人まで入れているので余計に手間がかかったようです。
両親にもポストカードを渡すのだとか。
絶対に喜ぶはずです。
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返信 (砂希)
2018-07-31 21:51:36
すみません、上のコメントは白玉さんへの返信です!
返信する
この一枚 (砂希)
2018-07-31 21:58:44
>鹿島田の純さん

たしか、姉の作品は3枚目だったような気がします。
年々レベルアップしていますから、この調子で伸びていけば楽しみが増えますね。
産みの苦しみも見ています。
何を描くかのネタ探しも重要ですからね。
あとは創作に不可欠な、自由時間とリラックスした環境が揃うとよいのですが。
趣味が仕事にシフトするのには長い時間が必要でしょうね。
返信する
ポストカード (ヤッギー)
2018-08-01 07:31:36
お姉さまの絵の入選おめでとうございます。

自分の描いた絵がポストカードになるなんて嬉しいですよね。使うのがもったいない気がします。
返信する
ポストカード (砂希)
2018-08-01 21:02:20
>ヤッギーさん

普通に考えて、自分の絵が別のものに加工されることはないですよね。
別料金はかかりますが、入選の特典なので、形に残すべきだと思います。
好きなことが評価されるとモチベーションも上がります。
次の作品のエネルギー源になるよう応援したいです。
返信する
【ブルー】 (心機朗)
2018-08-02 09:41:20
ネモフィラの丘ってことは茨城のあそこでしょうね。
たしかに丘の部分は写真みたい。
上手ですね。
僕はこの丘があそこだとしたら一度行きました。
ある場所に来るとパッと景色が開けて、あのブルーの丘がいきなり見えるのは衝撃でした。
ポストカードと図書カード。いい記念ですね。
返信する
Unknown (心機朗)
2018-08-02 09:46:41
鹿島田の純さんへ

コメント失礼しま~す。
テレカ・・・。
平成初期の頃だったら、コレはテレホンカードだったでしょうね。
いろんな思い出のテレカをどうしたものか?
迷ってますわ。
返信する
あそこ (砂希)
2018-08-02 22:07:14
>心機朗さん

おそらく「あそこ」で合っていると思います。
私は一度も行ったことがないんです。
絵を見たら行きたくなりました。
自分の作品が評価されたとき、それはそれは嬉しいものです。
カードに変えて残しておくのもいい方法でしょう。
でも、もったいなくて使えない(笑)
結局使わなかったテレホンカードが何枚もあったような気が……。
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