先週、姉と会ってスペイン料理を食べた。
「忘れないうちに渡しておくわね。はい、これ」
「ありがとう」
姉から受け取ったのは、来月、上野の森美術館で開催される「日本の自然を描く展」の招待券だ。絵画を習っている姉がこの展示作品に応募したところ、見事入選し、展示されるという。ぜひ見に行きたいと伝えたら、出品者分の招待券を分けてもらえることになった。
「あとね、これがポストカード」
「えっ」
びっくりした。姉の絵が美術展で売られているようなポストカードになっていたのだ。もっとも、売店には並んでいないようだが。
今回の絵は、一面のネモフィラを描いたものだが、細かい作業の連続だったように見える。ネモフィラは、花の中心が白く外側が青い。白を置いた周りを、グルっと青で囲む工程を何百回繰り返したのだろうか。
近くの花は大きく、遠くの花は小さく、遠近感や濃淡をつけて描き分けるとは恐れ入る。姉は子どものときから、手先が器用で丁寧さのある人だった。塗り絵をすると、私と違って隅から隅まで均等な濃さになるよう、せっせと色鉛筆を動かしていたことを思い出す。とりあえず、色分けする意識しかなかった私とは雲泥の差であった。こういう地道な努力は、その道のプロにきちんと伝わるものなのだろう。
「図書カードもあるよ」
「へー」
すごいなぁ。図書カードも作ってくれるのだ。自分が入選したわけでもないのに、誰かに見せて回りたい気分になる。「ほら、これを見てください。私の姉の作品なんですよ」ってね。
「ダンナさんのと、ミキのもあるから、2人にもあげてくれる?」
「悪いわね、ありがとう」
3人分のポストカードと図書カードを、なくさないようバッグにしまう。責任を持って渡さなくては。
そんなやりとりをしていたら、料理が運ばれてきた。
ワインやスペインビールを飲みながら、絵やエッセイの話題で盛り上がる。姉とは趣味が合うから、お盆前には山にも行くことになった。大月駅から歩いて行かれる岩殿山だ。時間やアクセス、持ち物などの打ち合わせも必要だ。
「パエリアでございます」
「わ~い」
私は「いかにも!」というパエリアにしたが、姉はイカスミのパエリアを選んだ。
「ほらほら、こっちも撮っていいわよ」
姉が写して欲しそうだったので、こちらもパシャリ。
半分こして食べたら、イカスミの方が美味しかった。ような気がする。
デザートを食べ、ワインを飲み干し、店をあとにする。
楽しかった~!
帰り道で、バッグの中身について考えた。芸術を解さない夫が、果たしてポストカードなどをありがたがるだろうか……。
娘は絵が好きだから、素直に喜ぶだろう。だが、夫の反応が少々心配だ。
翌日、夫が起きて、新聞を読んでいるところに、姉から預かったものを持っていった。まずは図書カードからだ。
「図書カード? いらない。本は読まないから」
実のところ、本が読めないのか、字が読めないのか、判断が難しい気がする。ひとまず、ここまでは想定内の反応だ。でも、ポストカードへの反応は違った。
「え? これ、お義姉さんの絵? 自分で描いたの?」
「そうよ。入選したから、今度、上野の森美術館に展示されるの」
「へー、上手だね。写真みたい」
そうだろ、そうだろ。夫はポストカードをじっくり見たあと、「これはもらっておこう」と言って、ファイルにしまい始めた。よしよし。
横から娘が飛び出してきて、夫が放置した図書カードに手を伸ばし、「そりゃあ、いただきぃ!」と奪い取っていった。2枚もゲットして、彼女はウハウハである。これにて一件落着、と言っていいのかどうか。
展示期間は、8月24日から28日である。
気が向いたら、ぜひ、お立ち寄りください。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「忘れないうちに渡しておくわね。はい、これ」
「ありがとう」
姉から受け取ったのは、来月、上野の森美術館で開催される「日本の自然を描く展」の招待券だ。絵画を習っている姉がこの展示作品に応募したところ、見事入選し、展示されるという。ぜひ見に行きたいと伝えたら、出品者分の招待券を分けてもらえることになった。
「あとね、これがポストカード」
「えっ」
びっくりした。姉の絵が美術展で売られているようなポストカードになっていたのだ。もっとも、売店には並んでいないようだが。
今回の絵は、一面のネモフィラを描いたものだが、細かい作業の連続だったように見える。ネモフィラは、花の中心が白く外側が青い。白を置いた周りを、グルっと青で囲む工程を何百回繰り返したのだろうか。
近くの花は大きく、遠くの花は小さく、遠近感や濃淡をつけて描き分けるとは恐れ入る。姉は子どものときから、手先が器用で丁寧さのある人だった。塗り絵をすると、私と違って隅から隅まで均等な濃さになるよう、せっせと色鉛筆を動かしていたことを思い出す。とりあえず、色分けする意識しかなかった私とは雲泥の差であった。こういう地道な努力は、その道のプロにきちんと伝わるものなのだろう。
「図書カードもあるよ」
「へー」
すごいなぁ。図書カードも作ってくれるのだ。自分が入選したわけでもないのに、誰かに見せて回りたい気分になる。「ほら、これを見てください。私の姉の作品なんですよ」ってね。
「ダンナさんのと、ミキのもあるから、2人にもあげてくれる?」
「悪いわね、ありがとう」
3人分のポストカードと図書カードを、なくさないようバッグにしまう。責任を持って渡さなくては。
そんなやりとりをしていたら、料理が運ばれてきた。
ワインやスペインビールを飲みながら、絵やエッセイの話題で盛り上がる。姉とは趣味が合うから、お盆前には山にも行くことになった。大月駅から歩いて行かれる岩殿山だ。時間やアクセス、持ち物などの打ち合わせも必要だ。
「パエリアでございます」
「わ~い」
私は「いかにも!」というパエリアにしたが、姉はイカスミのパエリアを選んだ。
「ほらほら、こっちも撮っていいわよ」
姉が写して欲しそうだったので、こちらもパシャリ。
半分こして食べたら、イカスミの方が美味しかった。ような気がする。
デザートを食べ、ワインを飲み干し、店をあとにする。
楽しかった~!
帰り道で、バッグの中身について考えた。芸術を解さない夫が、果たしてポストカードなどをありがたがるだろうか……。
娘は絵が好きだから、素直に喜ぶだろう。だが、夫の反応が少々心配だ。
翌日、夫が起きて、新聞を読んでいるところに、姉から預かったものを持っていった。まずは図書カードからだ。
「図書カード? いらない。本は読まないから」
実のところ、本が読めないのか、字が読めないのか、判断が難しい気がする。ひとまず、ここまでは想定内の反応だ。でも、ポストカードへの反応は違った。
「え? これ、お義姉さんの絵? 自分で描いたの?」
「そうよ。入選したから、今度、上野の森美術館に展示されるの」
「へー、上手だね。写真みたい」
そうだろ、そうだろ。夫はポストカードをじっくり見たあと、「これはもらっておこう」と言って、ファイルにしまい始めた。よしよし。
横から娘が飛び出してきて、夫が放置した図書カードに手を伸ばし、「そりゃあ、いただきぃ!」と奪い取っていった。2枚もゲットして、彼女はウハウハである。これにて一件落着、と言っていいのかどうか。
展示期間は、8月24日から28日である。
気が向いたら、ぜひ、お立ち寄りください。
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
ネモフィラは一度でも見に行きたいと思っているし、
力作は、絶対 カードにする値打ちがありますね。
そして、スパニッシュ&ワインのランチも、
夏バテを吹き飛ばしてくれる勢い♪
何か違うと思ったら、ネモフィラだったんですね。
私も見に行きたくなりました。
花を描くのも大変なのに、人まで入れているので余計に手間がかかったようです。
両親にもポストカードを渡すのだとか。
絶対に喜ぶはずです。
たしか、姉の作品は3枚目だったような気がします。
年々レベルアップしていますから、この調子で伸びていけば楽しみが増えますね。
産みの苦しみも見ています。
何を描くかのネタ探しも重要ですからね。
あとは創作に不可欠な、自由時間とリラックスした環境が揃うとよいのですが。
趣味が仕事にシフトするのには長い時間が必要でしょうね。
自分の描いた絵がポストカードになるなんて嬉しいですよね。使うのがもったいない気がします。
普通に考えて、自分の絵が別のものに加工されることはないですよね。
別料金はかかりますが、入選の特典なので、形に残すべきだと思います。
好きなことが評価されるとモチベーションも上がります。
次の作品のエネルギー源になるよう応援したいです。
たしかに丘の部分は写真みたい。
上手ですね。
僕はこの丘があそこだとしたら一度行きました。
ある場所に来るとパッと景色が開けて、あのブルーの丘がいきなり見えるのは衝撃でした。
ポストカードと図書カード。いい記念ですね。
コメント失礼しま~す。
テレカ・・・。
平成初期の頃だったら、コレはテレホンカードだったでしょうね。
いろんな思い出のテレカをどうしたものか?
迷ってますわ。
おそらく「あそこ」で合っていると思います。
私は一度も行ったことがないんです。
絵を見たら行きたくなりました。
自分の作品が評価されたとき、それはそれは嬉しいものです。
カードに変えて残しておくのもいい方法でしょう。
でも、もったいなくて使えない(笑)
結局使わなかったテレホンカードが何枚もあったような気が……。