ちょっとした用事で、某大企業に行った。
「お昼は社員食堂で召し上がりませんか? 皇居が見えてキレイなんですよ」
この会社からはペニンシュラが近い。たまには、落ち着く場所で贅沢なランチをと思ったが、すぐに考え直す。ペニンシュラにはいつでも行かれるが、この機を逃したら、社員食堂にはもう行かれないだろう。希少価値では勝負にならない。
「どのメニューも、だいたい500円くらいです」
「じゃあ、ぜひお願いします」
そんなわけで、女性社員に連れられて昼時の食堂に入り込んだ。
「学食と同じスタイルです。麺類はあちら、一品料理はこちら、定食は左手にあります」
「わあ、どれにしようかしら」
私は基本的に定食が好きだ。鶏の照り焼きがメインになっているセットを選んだ。ご飯は大盛り、普通、少なめがある。少なめは70円と書かれているのが目についた。
それにしても、人の多いこと、多いこと。席数も多いが、ときには満席になることもあるらしい。どの社員も慣れた手つきでお料理を取り、トレイを持ってスイスイ歩いていく。
「あれ? 箸……」
初めての場所は勝手がわからない。周りを見ると、みんな箸や水を載せているのだが、一体どこにあったのだろう。
「大丈夫ですか?」
さきほどの社員が戻ってきてくれた。彼女は蕎麦にしたので、場所が離れていたのだ。
「お箸はここです。お茶もありますよ。取りましょうか」
「ありがとうございます」
彼女に手伝ってもらい、窓際の席に移動する。
「おお~」
言われた通り、窓の外にはいい景色が広がっている。
私が選んだ定食はこんな感じであった。
「いただきま~す」
見た目は質素だが味はいい。欲をいえば、鶏肉はもうちょい小さく切ったほうが食べやすい。みそ汁も無難な仕上がりだ。好みで小鉢などを追加して、もっと豪華にすることもできる。
「ん? そういえば……」
ワタシ、お金を払ったかしら? 払ってないよ。
血の気が引くようだった。まさか、レジに気づかなかったのだろうか。いくら初めての場所だからといってレジをスルー? それって無銭飲食でしょ。犯罪だよ、マズい!
「そちらの学級数はいくつあるんですか?」
私の焦りに気づくこともなく、女性社員はにこやかに話しかけてくる。すっかり、うわの空で返事をした。情けないけれど、こうなったら彼女に相談して、レジまでお金を払いに行こう。
「〇〇ちゃん、ここいい?」
「いいよ、空いてるから」
間の悪いことに、女性の同僚が隣に座ってしまった。とても相談できる雰囲気ではない。困った。
無銭飲食が、こんなに居心地の悪いものとは知らなかった。今では、定食の味もわからないくらい動揺している。世の犯罪者たちは、相当頑丈な心臓を持っているのだろう。私には無理だ。
一気に口数が少なくなってしまった。女性も隣の同僚も食べ終わり、席を立つ。
「出口で清算しますので、現金のご用意をお願いします」
彼女の視線の先を見ると、レジが3つ並んでいた。
「なるほど、食後に支払いをするシステムなんですね」
「はいそうです」
こういう情報はもっと早く教えてほしかった。犯罪者にならなかったことは嬉しいが、そんなこんなでお昼を食べた気がしない。
「460円です」
清算後は、やたらとすがすがしかった。使用済みの容器とトレイは、ベルトコンベアーに載せる。洗い場につながっているのだろう。なんと合理的な。前払い制度しかないと思いこんでた自分が恥ずかしい。
まあ、これも社会勉強だ。
懲りずに、他の社員食堂にも行ってみたい。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「お昼は社員食堂で召し上がりませんか? 皇居が見えてキレイなんですよ」
この会社からはペニンシュラが近い。たまには、落ち着く場所で贅沢なランチをと思ったが、すぐに考え直す。ペニンシュラにはいつでも行かれるが、この機を逃したら、社員食堂にはもう行かれないだろう。希少価値では勝負にならない。
「どのメニューも、だいたい500円くらいです」
「じゃあ、ぜひお願いします」
そんなわけで、女性社員に連れられて昼時の食堂に入り込んだ。
「学食と同じスタイルです。麺類はあちら、一品料理はこちら、定食は左手にあります」
「わあ、どれにしようかしら」
私は基本的に定食が好きだ。鶏の照り焼きがメインになっているセットを選んだ。ご飯は大盛り、普通、少なめがある。少なめは70円と書かれているのが目についた。
それにしても、人の多いこと、多いこと。席数も多いが、ときには満席になることもあるらしい。どの社員も慣れた手つきでお料理を取り、トレイを持ってスイスイ歩いていく。
「あれ? 箸……」
初めての場所は勝手がわからない。周りを見ると、みんな箸や水を載せているのだが、一体どこにあったのだろう。
「大丈夫ですか?」
さきほどの社員が戻ってきてくれた。彼女は蕎麦にしたので、場所が離れていたのだ。
「お箸はここです。お茶もありますよ。取りましょうか」
「ありがとうございます」
彼女に手伝ってもらい、窓際の席に移動する。
「おお~」
言われた通り、窓の外にはいい景色が広がっている。
私が選んだ定食はこんな感じであった。
「いただきま~す」
見た目は質素だが味はいい。欲をいえば、鶏肉はもうちょい小さく切ったほうが食べやすい。みそ汁も無難な仕上がりだ。好みで小鉢などを追加して、もっと豪華にすることもできる。
「ん? そういえば……」
ワタシ、お金を払ったかしら? 払ってないよ。
血の気が引くようだった。まさか、レジに気づかなかったのだろうか。いくら初めての場所だからといってレジをスルー? それって無銭飲食でしょ。犯罪だよ、マズい!
「そちらの学級数はいくつあるんですか?」
私の焦りに気づくこともなく、女性社員はにこやかに話しかけてくる。すっかり、うわの空で返事をした。情けないけれど、こうなったら彼女に相談して、レジまでお金を払いに行こう。
「〇〇ちゃん、ここいい?」
「いいよ、空いてるから」
間の悪いことに、女性の同僚が隣に座ってしまった。とても相談できる雰囲気ではない。困った。
無銭飲食が、こんなに居心地の悪いものとは知らなかった。今では、定食の味もわからないくらい動揺している。世の犯罪者たちは、相当頑丈な心臓を持っているのだろう。私には無理だ。
一気に口数が少なくなってしまった。女性も隣の同僚も食べ終わり、席を立つ。
「出口で清算しますので、現金のご用意をお願いします」
彼女の視線の先を見ると、レジが3つ並んでいた。
「なるほど、食後に支払いをするシステムなんですね」
「はいそうです」
こういう情報はもっと早く教えてほしかった。犯罪者にならなかったことは嬉しいが、そんなこんなでお昼を食べた気がしない。
「460円です」
清算後は、やたらとすがすがしかった。使用済みの容器とトレイは、ベルトコンベアーに載せる。洗い場につながっているのだろう。なんと合理的な。前払い制度しかないと思いこんでた自分が恥ずかしい。
まあ、これも社会勉強だ。
懲りずに、他の社員食堂にも行ってみたい。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
私は以前都庁の職員食堂を利用しましたが、今は文京区役所の食堂を狙っています
家の近所にはテレビでも有名な女子栄養大学の食堂がありましたが、いつのまにか一般開放は無くなってしまいました~
実を言うと私は以前、某銀行の職員食堂で働いていました
お昼も美味しくいただけそうです。
勝手がわからない「食堂」は難しいです。
どちらも精算は後払いになっているようですが。
基本的に社員以外は使えないようです。
お客様は例外で入れてくれるようですが。
しかし、460円の割にお腹にたまらない食事が出るとは……。
すぐにお腹がすいてしまいました。
おやつはケーキ(笑)
ランチは都庁のほうがいいかもしれませんね。
同じ都の職員でも、こちらは食堂なし、施設貧弱、環境劣悪の職場です。
都庁勤めに憧れます♪
食堂目当て(笑)
学食スタイルは常に前払いだと思っていました。
後払いだと不正は起きないのかしら。
食器を置いて逃げちゃうとか(笑)
晴れているから景色も素晴らしかったです。
紅葉の季節はもっといいかもしれませんね。
コスパが悪いと思うのは私だけでしょうか(笑)
後払いだと支払い忘れて本当の無銭飲食になりそうで怖いですね~!社食の割に高いような気がしますね~!某損保会社にいた時に新宿の本社の社食はかなりボリュームがあって350円くらいだったかな?どちらも人数がメッチャ多いから安くできるのかも?
女子社員に普通に訊けばよかったのに思考が犯罪者側に入ってしまったようですね(笑)
こちらは雪が降り続いていて明日の朝までどれくらい積もるか気が気でないです、
大雪からどうやって逃れられるか、これもまた犯罪者心理のようなものです(_ _;)…パタリ
姉の知人が施設内レストランの経営に関わっているそうです。
採算が取れないこともあり、値段は高めになっているとか。
社員食堂だったら安いという常識は幻想となるのかも。
カレーが100円ってすごい(笑)
4月から異動の予定ですが、食堂のある職場にご縁は……。
あちこちに防犯カメラがあるでしょうから、その場から逃れても意味ないかと(笑)
初対面の相手だったので、こんなことを聞くのは恥ずかしいと思ってしまいました。
カッコつけたわけです。
雪国に住んでいて、大雪から逃れる方法があるのでしょうか。
沖縄に住んで、台風から逃れるのも難しそう(笑)
東京は乾燥していて、静電気がバチバチしています。
まさか後払いの食堂があるなんて!
食べている途中で気づいたら、私もきっと「やってしまった!」と思うだろうな。
だって、食べ物を食べてから払うという発想がないもの。
渋滞防止なのでしょうか。
ニュースで、勝手に物を持って店を出たら、ドアのセンサーがおサイフスマホから自動的に料金を引き落とすシステムを開発中だと聞きました。
世の中思いもよらないことだらけです。
やはり、そう思われますよね。
喫茶店やレストランならともかく、食堂は前払いが当然だと思っていました。
たしかに、渋滞緩和に効果はありそうです。
慣れない私はウロウロ歩き回り、プチ渋滞を引き起こしていたかもしれません(笑)
おサイフスマホから料金を引き落とす時代なんですね。
やはり、ここはガラケーで乗り切ろう(笑)
きっと、誤作動問題が起きますよ。