その日は、年明け早々に行った体外受精の判定日だった。
過去に妊娠したときは、乳首が痛い、気持ち悪い、激しい眠気に襲われるなどの兆候が見られたが、今回はそれがない。スカを覚悟して病院に向かった。
妊娠の判定は、尿検査ではなく血液検査で行う。この病院は、血中ホルモン値で体の状態を判断することが多いので、万年貧血気味の身にはつらい。でも、血液からの情報量の多さには驚くことが多い。
血液検査の結果が出るまで小一時間待ち、ようやく診察室に呼ばれた。ドアを開けると、採卵や移植をしたときと同じ先生がいて、目が合う。表情から、何を言われるかがわかってしまった。
「笹木さん、……残念ながら、今回は妊娠していませんでした」
ああ、やっぱり。
予測していても、心にズシリとめり込んでくる。
医師は私の様子を気遣いながら、さらに言葉を進めた。
「これが血液検査の結果です。このβ-HCGという数値を見てください。0.1となっていますが、これだと受精卵が胚盤胞まで成長しなかったと考えられます」
移植した受精卵は4分割だったが、さらに細胞分裂を繰り返し、着床可能な胚盤胞という状態に成長する。でも、私の卵は、そこまで至らなかったというのだ。血液から、どこに問題があったかがわかるとは思わなかった。
「グレード2の、まずまずの卵だったんですが、この年齢ですと、胚盤胞まで成長するのは2割程度なんです」
それは知らなかった。35歳までは8割が胚盤胞まで達するというのに、その後は加齢とともに割合が低下し、40歳では50%程度、44歳では30%以下、45歳では10%以下となる。
「次回は胚盤胞まで培養し、いったん凍結させてから、次の周期に戻すことにしましょう」
医師は、もっともな提案をした。採卵する周期より、採卵しない周期のほうが、着床率がよい。そこで、凍結という技術が活躍するわけだが、問題は受精卵が凍結できる状態まで成長するかである。体内でも培養でも、2割であることに変わりはないので、成功率はかなり低い。
昨年1月の体外受精では、着床までたどり着いたというのに、1年後の今は加速度的に悪化している。高齢出産の限界を感じ、なにやら絶望的な気持ちになってきた。
家に帰ると、郵便受けに手紙が入っていた。先日、娘のミキが受けた模試の結果だ。
前回までは、志望校の合格判定がCで、合格率40%以上という厳しい状況だった。もし、今回もCならば、志望校のランクを下げるつもりらしい。
ミキはすばやくハサミを取り出し、結果を開封し始めた。
「あっ、Bだ!!」
Bは合格圏で、60%以上の合格率となる。
「しかも、あと一歩でAになるBだよ! やったぁ!!」
Aは安全圏で、合格率80%以上だから、一気にランクアップしたわけだ。家庭教師に大枚はたいた成果は、十分にあった。絶望的な気分が吹き飛び、私も笑顔になる。
「よかったね、ミキ」
「うん! やっぱり、志望校は変えないよ」
赤ちゃんができることと、娘が希望校に合格することの、どちらが大事かと問われれば、私は迷わず娘のほうだと答える。ツキは全部あげてもいいから、行きたい高校に合格してほしい。
いずれにせよ、4月からは忙しくなるから、体外受精も3月いっぱいで区切りをつけるつもりでいる。
さて、もうちょっと、私も頑張らなくちゃ。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
過去に妊娠したときは、乳首が痛い、気持ち悪い、激しい眠気に襲われるなどの兆候が見られたが、今回はそれがない。スカを覚悟して病院に向かった。
妊娠の判定は、尿検査ではなく血液検査で行う。この病院は、血中ホルモン値で体の状態を判断することが多いので、万年貧血気味の身にはつらい。でも、血液からの情報量の多さには驚くことが多い。
血液検査の結果が出るまで小一時間待ち、ようやく診察室に呼ばれた。ドアを開けると、採卵や移植をしたときと同じ先生がいて、目が合う。表情から、何を言われるかがわかってしまった。
「笹木さん、……残念ながら、今回は妊娠していませんでした」
ああ、やっぱり。
予測していても、心にズシリとめり込んでくる。
医師は私の様子を気遣いながら、さらに言葉を進めた。
「これが血液検査の結果です。このβ-HCGという数値を見てください。0.1となっていますが、これだと受精卵が胚盤胞まで成長しなかったと考えられます」
移植した受精卵は4分割だったが、さらに細胞分裂を繰り返し、着床可能な胚盤胞という状態に成長する。でも、私の卵は、そこまで至らなかったというのだ。血液から、どこに問題があったかがわかるとは思わなかった。
「グレード2の、まずまずの卵だったんですが、この年齢ですと、胚盤胞まで成長するのは2割程度なんです」
それは知らなかった。35歳までは8割が胚盤胞まで達するというのに、その後は加齢とともに割合が低下し、40歳では50%程度、44歳では30%以下、45歳では10%以下となる。
「次回は胚盤胞まで培養し、いったん凍結させてから、次の周期に戻すことにしましょう」
医師は、もっともな提案をした。採卵する周期より、採卵しない周期のほうが、着床率がよい。そこで、凍結という技術が活躍するわけだが、問題は受精卵が凍結できる状態まで成長するかである。体内でも培養でも、2割であることに変わりはないので、成功率はかなり低い。
昨年1月の体外受精では、着床までたどり着いたというのに、1年後の今は加速度的に悪化している。高齢出産の限界を感じ、なにやら絶望的な気持ちになってきた。
家に帰ると、郵便受けに手紙が入っていた。先日、娘のミキが受けた模試の結果だ。
前回までは、志望校の合格判定がCで、合格率40%以上という厳しい状況だった。もし、今回もCならば、志望校のランクを下げるつもりらしい。
ミキはすばやくハサミを取り出し、結果を開封し始めた。
「あっ、Bだ!!」
Bは合格圏で、60%以上の合格率となる。
「しかも、あと一歩でAになるBだよ! やったぁ!!」
Aは安全圏で、合格率80%以上だから、一気にランクアップしたわけだ。家庭教師に大枚はたいた成果は、十分にあった。絶望的な気分が吹き飛び、私も笑顔になる。
「よかったね、ミキ」
「うん! やっぱり、志望校は変えないよ」
赤ちゃんができることと、娘が希望校に合格することの、どちらが大事かと問われれば、私は迷わず娘のほうだと答える。ツキは全部あげてもいいから、行きたい高校に合格してほしい。
いずれにせよ、4月からは忙しくなるから、体外受精も3月いっぱいで区切りをつけるつもりでいる。
さて、もうちょっと、私も頑張らなくちゃ。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
先生も家庭教師雇って……(笑)
開き直って…諦めてたのにって事があるしね!リラックスして夫婦生活を楽しんでください(^_^)/
ミキはかなりやる気になったみたい。
昨日はガンガン勉強していたけど、今日は気持ち悪くなって昼寝してた…。
でもまあ、進歩があれば努力する気になるよね。
妊娠していないとわかり、スポーツを再開しようかと思ってます。
ジョギングとピラティスに精を出し、筋肉をつけるぞう!
確率の低さを考えると、宝くじを買うくらいの気楽さでいいのかしら。
ストレスは毒だから、あっさりいかなきゃ。
まあ気持ちを切り替えて「次行ってみよう」(いかりやちょうすけ風)
ミキチャンの方はいい感じじゃないですか。やるきになってるみたいだし、金かけた甲斐があるってもんだ!(うそうそミキチャンの実力)
いいこともあればやなこともある。前向きに生きるってことが、命につながってくれればいうことなしですけどね。
がんばってセンセ!!
ご無沙汰してます。
次回は採卵前にしっかり睡眠をとって、卵子の質を上げたいです。
全力をあげても力まない。
そんな姿勢でいきたいですね。
人工的な手段は残り2カ月で終わりにして、あとは自然に任せます。
それで気が済みます。
努力せずに諦めていたら、あとから後悔すると思いますが、これだけやって、何が原因かもわかっていますから、自分の状況を受け入れられる気持ちになってきました。
おかげさまで、ミキのほうは順調みたいです。
子供のおかげで、気分の落ち込みもなくてよかったですよ!
思うようにいかなくても、幸せだったら問題ないですからね。
ダメならダメで諦めます。
晩年に自分の人生を振り返ったとき、大したことじゃなかったな~と思うでしょうし。
気持ちを切り替えるのは大事なことですね。
子供がいないことが不幸なのではなくて、満足できない自分が不幸なのだと思います。
心の持ち方で人生の充実度が変わってくるし。
今日は家庭教師が来た日でした。
成績表を見て、彼も大喜びだったようです。
そりゃそうですよね(笑)
あとは本当に合格してくれれば言うことなし!
人生は修行の連続ですから、つらいことも乗り越えなくちゃ。
オレも高校の受験では、受かる確率が60~70%だった覚えがあるよ。
いずれにせよ、時間制限のあることだからね。
45歳以上の体外受精は、妊娠率がほぼゼロ。
やっても無駄でしょ。
今できなかったら、この先はもっと無理。
私にできることは、この経験を広めることじゃないかと思います。
模試の確率がどこまで当てになるかはわからないけど、本人も家庭教師もいい結果が出たからテンション高いよ(笑)
上昇気流に乗れるといいな。